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第4章 竜は泉で静かに踊る
第14話 勝敗決す
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王都の燃える家屋を背に、大陸七剣神の2人の一騎討ちが続いている。
ラインハルト王とノイズの剣閃はますます磨きがかかり、一進一退の攻防を繰り広げていた。
ラインハルトの剣さばきは一振りごとに空気を切り裂く音が鳴り、その剣先が描く軌跡は、まさに芸術のようだった。
その姿は英雄王の名に恥じない圧倒的な存在感を放っていた。
剣と剣がぶつかる金属音が王都中に響き渡り、その衝撃で周囲の建物が倒壊する。
2人の足元の地面は、激しい動きで掘り返され、まるで荒れ地のようになっていた。
(王宮に火の手は上がらぬか。こりゃ失敗したか。退散するのが吉のようだな)
ただそう簡単に逃れられる相手ではない。
拮抗する実力は、一瞬の隙が命取りになる。
ならば相手を激高させて隙を作るのが無難。
そう考えたノイズはニヤリと笑いながら、口撃を開始する。
「王女に惚れられ手に入れた王の身分はどんな気分だ? 俺ならゴメンだね。そんな地位に満足しているのが笑えるぜ」
その言葉にラインハルトの眉がピクリと動く。
それを見逃さずノイズは続ける。
「王侯貴族や民のために、身を粉にして働くとか抜かしているが、怖気が走るぜ」
ラインハルトは沈黙で応えるが、それを好機と取ったノイズの口撃が勢いを増す。
「何もかも所詮は人の世の泡沫よ。テメエの統治は、あと何年この国を平和にできるよ? 長くて残り20年ってとこだろうよ? 俺には見えるぜ? 治世の末期、王は判断力も鈍り佞臣に誑かされ、国民に疎まれ恨まれながら孤独に玉座で朽ちる姿がよ!」
ラインハルトの表情に怒りの色が見えた。
それは2人の故郷パルケニアで起きた事実であったからだ。
その王の庶子であったラインハルトは母親を殺され、乞食に転落した。
5歳から11歳までをスラム街で過ごした地獄の日々が、ラインハルトの脳裏によぎる。
だが決して取り乱さず、ただ淡々と告げる。
「あり得る未来だろう。パルケニアの先王ソーマのように、遺体が数日放置されるのもな」
「俺は運命ってのが大好きでなあ。てめえと初めて会った時の俺の言葉を覚えているか?」
「『グレゴリオ公爵家が全面支援する。共に正義を示そう』……だったな」
「クックック、てめえが断り、グレンに誘われてアランの傭兵になると選択した時に、今ここで俺たちが戦う運命が見えたか? 想像できなかっただろ! 最高だぜ。ガキだった頃の俺に教えてやりてえよ。『ハルトに断られたからって怒るな! 30年後に殺し合いできるんだからよ!』ってなあ!」
「生憎だが俺は運命は嫌いだ。平和は運命ではなく、人の手で作るものだからな!」
「けっ! ならとっとと現世からおさらばしやがれ。この国だけじゃねえ、大陸全土の永遠の平和は俺が作ってやるからよ。安心して死ねや」
「永遠の平和? デリムで叛乱を指揮し、少年少女を兵にし、使い捨てにして殺し、裏で怪しげな組織の命令で大陸全土に戦火を撒き散らしてか? 笑わせるな。貴様の言う平和など、所詮は強者の理屈に過ぎぬ」
「人間全てが虫けら以下になれば大陸は平和になるさ! その虫けら以下の人間のためにテメエは命をかけて戦うのか? とんだ偽善者だな!」
ラインハルトの眉が再びピクリと動く。
(かかったな。剣筋が乱れているぜ英雄王さんよお!)
ノイズの心が歓喜に満ち溢れ、渾身の力で放った剣がラインハルト王の首を捉えた。
だが……ラインハルトの剣が重なり邪魔をした。
「チッ! ウゼエ。いい加減死んでくれや」
「こっちのセリフだな。貴様こそ死ね」
そして決着の時が訪れる。
王宮から、ラインハルト王に加勢する軍が現れたのであった。
その指揮官を見てノイズは苦笑した。
「ダリム・クリムト……西に向かったのをこの眼で見たんだがなあ。一体どういうカラクリよ?」
宰相ダリムの老体が、馬上で矍鑠たる勇姿で剣を掲げる。
「なあに、隠し通路ぐらい用意しているわ。ラフィーネへ急行したように見せかけたのは、内通者を騙す振りよ」
「そんでもって王宮に潜んでいたってわけかい。……ったく嫌になるぜ。ジジイは大人しく山の中で仙人気取りで一生を終えてろよ」
ノイズは心底嫌そうな顔をし、ダリムもそれは同意見であると高笑いした。
「ラインハルトが死ねば、またその暮らしに戻るわい。だがそれは何十年も先の話よ」
「……化け物かよ」
舌打ちするノイズにファインダ兵が包囲する。
ノイズと実力が拮抗する人物がラインハルトとダリムの2人になった今、ノイズの脱出は困難となった。
「縄に付き、知っていることを全て吐いてもらうぞ。ノイズ・グレゴリオ」
チェスならばチェックメイトの状況だ。
だがこれは、ルールなどない、人と人との戦いである。
「王都リオーネと、東のレアードとの戦いの勝者はテメエ等ファインダと認めてやるよ! フフ、アハハハハ! だがな! 俺が死ぬのはテメエ等とこの大陸を地獄に変えてからだ!」
高笑いしながらノイズが手を上げると、魔法弾がファインダ兵を襲う。
青白い煙幕が立ち込める中、兵士たちは咳き込みながらも必死に周囲を警戒した。
『とこしえの森に、テメエ等が行かなかったのは命取りだろうよ。西は俺の勝ちだ』
しかし、ノイズの姿はすでになく、その高笑いだけが空中に残っていた。
「手駒に魔女でもいたようですな。ちらっと若い女が2人、ノイズと消えたのが見えたわ。……師父、俺はこれより西に向かう。リオーネを任せてよろしいか? ちと嫌な予感がする」
「止めはせぬわい。だができうる限りの手は打っておいた。脳筋姫とテレサちゃんという余剰戦力も投入した。それでラフィーネが陥落するならファインダだけではない、大陸全土の滅亡よ」
ラインハルト王は頷くと、馬に跨り西へと駆ける。
数百の精鋭が後に続いて行った。
***
ラフィーネ攻防戦は、次々湧き上がる魔獣と、次々屠るファインダ側の攻防を続けていた。
すでに騎士や兵士は満身創痍である。
だが王女レオノールの二対の剣、傭兵テレサのモーニングスター。
同じく傭兵リョウの漆黒の剣、魔女ローゼの白銀の杖より放たれる絶大な魔力。
エルフ族ベレニスの風の精霊魔法を駆使した神速なるレイピア、商人フィーリアの魔導具による防御結界。
聖女ヴィレッタの神聖魔法による回復、リザードマン族ザイルーガの斧捌き。
その者たちによって魔獣を圧倒していたのである。
だが魔獣は数が多く、知恵ある者が城壁を諦め城門攻撃を集中させる。
そしてついに、ラフィーネの門が破られる時が来た。
数千の魔獣の群れが、まるで津波のように押し寄せて来たのだ。
ラフィーネに住まう人々は絶望した。
魔獣との戦いで犠牲になる自分たちは、なんと不幸かと。
だが、そこに希望が舞い降りる。
「待ち侘びたぞ! 城壁に上がる必要なしだったからな!」
赤い髪が右目を隠す、長身にして、一見美青年かと錯覚する容貌。
その剣が瞬時に、城門に突入した魔獣群を肉塊に変えた。
もう1人、同じく赤い髪の、巨体の熊のような男も負けじと魔獣の群れに剣を振り回す。
「1匹も逃すでないぞ。オルタナ」
「父上こそ私の獲物を奪わないで下さいよ」
オルタナは優雅な舞のように剣を振るい、アデルは剣が風を切る音すら聞こえないほどの速さで魔獣を屠り続ける。
「ベルガー王国の兵100名! ファインダ王国との友誼により加勢する!」
颯爽と馬に跨り麾下の兵を投入する金髪の美青年。
ベルガー王国近衛隊長のラシル・ブリュンヒルドの号令にラフィーネに歓声が沸き上がる。
「アデル殿! オルタナ! 思う存分暴れられよ!」
「言われなくとも暴れるさ。城壁ではローゼちゃんたちがいるんだろ? なら上は安心して任せられる」
ラシルの呼びかけに、赤い髪の美青年、いや、美人が答える。
その言葉を合図に、オルタナと呼ばれた美女は魔獣の群れに突進する。
凄まじい斬撃と連撃で、瞬く間に数十の魔獣が屍となった。
その様子を見てアデルもニヤリと笑うと、その巨体からは想像できぬ俊敏さで、数十体の魔獣を屠る。
そんな2人を援護するように、ベルガー兵は弓を放ち、剣を光らせる。
城門の様子は城壁のファインダ兵たちにも伝わった。
「おお! ベルガー王国が誇る七剣神のアデル・アーノルド殿と、麒麟児オルタナ・アーノルド殿か! ラフィーネになんでいたのかは知らぬが、これぞ天運‼」
「いえ、レオノール様。どうせ宰相様の策でしょう。全く何時からこの街に潜入させていたのやら!」
「ならば最初から申してくれればいいものを! くわあ~! アデル殿とその娘の麒麟児オルタナ殿の戦いっぷり、是非この眼で見たい!」
王女レオノールの呑気な呟きに、テレサはクスッと笑った。
「兵より民を護れとの契約なのでしょう。レオノール様は駄目ですよ? ここを離れないように」
戦局は一気に有利となった。
魔獣の死骸が増え続け、確実にその数は減っている。
(気になるのは上空の赤竜。リョウたちを運んできたが戦いを傍観するかのように旋回している。あの竜は果たして敵か味方か)
テレサの疑問に答える者はいないまま、戦いは終結へと向かう。
守備側が攻勢に転じる。
息のある魔獣は我先にと逃げ帰り、とこしえの森へと消えていった。
「追うな! 戦いは終わった! 勝利は我らぞ!」
レオノールの号令に沸き上がるラフィーネの兵士たち。
「死者は丁重に弔え! 人も魔獣もだ! それがファインダの流儀と心得よ!」
そう叫び終えると、レオノールは率先して魔獣の遺体をも丁重に扱いながら埋葬していった。
ファインダ兵や、ローゼたちにベルガー兵が協力する。
その姿に感銘を受けた民衆たちも協力し始めた。
埋葬作業が進むにつれ、街には不思議な静けさと敬虔な雰囲気が漂い始める。
そして夜明けには、遺体を全て埋葬したのであった。
ラインハルト王とノイズの剣閃はますます磨きがかかり、一進一退の攻防を繰り広げていた。
ラインハルトの剣さばきは一振りごとに空気を切り裂く音が鳴り、その剣先が描く軌跡は、まさに芸術のようだった。
その姿は英雄王の名に恥じない圧倒的な存在感を放っていた。
剣と剣がぶつかる金属音が王都中に響き渡り、その衝撃で周囲の建物が倒壊する。
2人の足元の地面は、激しい動きで掘り返され、まるで荒れ地のようになっていた。
(王宮に火の手は上がらぬか。こりゃ失敗したか。退散するのが吉のようだな)
ただそう簡単に逃れられる相手ではない。
拮抗する実力は、一瞬の隙が命取りになる。
ならば相手を激高させて隙を作るのが無難。
そう考えたノイズはニヤリと笑いながら、口撃を開始する。
「王女に惚れられ手に入れた王の身分はどんな気分だ? 俺ならゴメンだね。そんな地位に満足しているのが笑えるぜ」
その言葉にラインハルトの眉がピクリと動く。
それを見逃さずノイズは続ける。
「王侯貴族や民のために、身を粉にして働くとか抜かしているが、怖気が走るぜ」
ラインハルトは沈黙で応えるが、それを好機と取ったノイズの口撃が勢いを増す。
「何もかも所詮は人の世の泡沫よ。テメエの統治は、あと何年この国を平和にできるよ? 長くて残り20年ってとこだろうよ? 俺には見えるぜ? 治世の末期、王は判断力も鈍り佞臣に誑かされ、国民に疎まれ恨まれながら孤独に玉座で朽ちる姿がよ!」
ラインハルトの表情に怒りの色が見えた。
それは2人の故郷パルケニアで起きた事実であったからだ。
その王の庶子であったラインハルトは母親を殺され、乞食に転落した。
5歳から11歳までをスラム街で過ごした地獄の日々が、ラインハルトの脳裏によぎる。
だが決して取り乱さず、ただ淡々と告げる。
「あり得る未来だろう。パルケニアの先王ソーマのように、遺体が数日放置されるのもな」
「俺は運命ってのが大好きでなあ。てめえと初めて会った時の俺の言葉を覚えているか?」
「『グレゴリオ公爵家が全面支援する。共に正義を示そう』……だったな」
「クックック、てめえが断り、グレンに誘われてアランの傭兵になると選択した時に、今ここで俺たちが戦う運命が見えたか? 想像できなかっただろ! 最高だぜ。ガキだった頃の俺に教えてやりてえよ。『ハルトに断られたからって怒るな! 30年後に殺し合いできるんだからよ!』ってなあ!」
「生憎だが俺は運命は嫌いだ。平和は運命ではなく、人の手で作るものだからな!」
「けっ! ならとっとと現世からおさらばしやがれ。この国だけじゃねえ、大陸全土の永遠の平和は俺が作ってやるからよ。安心して死ねや」
「永遠の平和? デリムで叛乱を指揮し、少年少女を兵にし、使い捨てにして殺し、裏で怪しげな組織の命令で大陸全土に戦火を撒き散らしてか? 笑わせるな。貴様の言う平和など、所詮は強者の理屈に過ぎぬ」
「人間全てが虫けら以下になれば大陸は平和になるさ! その虫けら以下の人間のためにテメエは命をかけて戦うのか? とんだ偽善者だな!」
ラインハルトの眉が再びピクリと動く。
(かかったな。剣筋が乱れているぜ英雄王さんよお!)
ノイズの心が歓喜に満ち溢れ、渾身の力で放った剣がラインハルト王の首を捉えた。
だが……ラインハルトの剣が重なり邪魔をした。
「チッ! ウゼエ。いい加減死んでくれや」
「こっちのセリフだな。貴様こそ死ね」
そして決着の時が訪れる。
王宮から、ラインハルト王に加勢する軍が現れたのであった。
その指揮官を見てノイズは苦笑した。
「ダリム・クリムト……西に向かったのをこの眼で見たんだがなあ。一体どういうカラクリよ?」
宰相ダリムの老体が、馬上で矍鑠たる勇姿で剣を掲げる。
「なあに、隠し通路ぐらい用意しているわ。ラフィーネへ急行したように見せかけたのは、内通者を騙す振りよ」
「そんでもって王宮に潜んでいたってわけかい。……ったく嫌になるぜ。ジジイは大人しく山の中で仙人気取りで一生を終えてろよ」
ノイズは心底嫌そうな顔をし、ダリムもそれは同意見であると高笑いした。
「ラインハルトが死ねば、またその暮らしに戻るわい。だがそれは何十年も先の話よ」
「……化け物かよ」
舌打ちするノイズにファインダ兵が包囲する。
ノイズと実力が拮抗する人物がラインハルトとダリムの2人になった今、ノイズの脱出は困難となった。
「縄に付き、知っていることを全て吐いてもらうぞ。ノイズ・グレゴリオ」
チェスならばチェックメイトの状況だ。
だがこれは、ルールなどない、人と人との戦いである。
「王都リオーネと、東のレアードとの戦いの勝者はテメエ等ファインダと認めてやるよ! フフ、アハハハハ! だがな! 俺が死ぬのはテメエ等とこの大陸を地獄に変えてからだ!」
高笑いしながらノイズが手を上げると、魔法弾がファインダ兵を襲う。
青白い煙幕が立ち込める中、兵士たちは咳き込みながらも必死に周囲を警戒した。
『とこしえの森に、テメエ等が行かなかったのは命取りだろうよ。西は俺の勝ちだ』
しかし、ノイズの姿はすでになく、その高笑いだけが空中に残っていた。
「手駒に魔女でもいたようですな。ちらっと若い女が2人、ノイズと消えたのが見えたわ。……師父、俺はこれより西に向かう。リオーネを任せてよろしいか? ちと嫌な予感がする」
「止めはせぬわい。だができうる限りの手は打っておいた。脳筋姫とテレサちゃんという余剰戦力も投入した。それでラフィーネが陥落するならファインダだけではない、大陸全土の滅亡よ」
ラインハルト王は頷くと、馬に跨り西へと駆ける。
数百の精鋭が後に続いて行った。
***
ラフィーネ攻防戦は、次々湧き上がる魔獣と、次々屠るファインダ側の攻防を続けていた。
すでに騎士や兵士は満身創痍である。
だが王女レオノールの二対の剣、傭兵テレサのモーニングスター。
同じく傭兵リョウの漆黒の剣、魔女ローゼの白銀の杖より放たれる絶大な魔力。
エルフ族ベレニスの風の精霊魔法を駆使した神速なるレイピア、商人フィーリアの魔導具による防御結界。
聖女ヴィレッタの神聖魔法による回復、リザードマン族ザイルーガの斧捌き。
その者たちによって魔獣を圧倒していたのである。
だが魔獣は数が多く、知恵ある者が城壁を諦め城門攻撃を集中させる。
そしてついに、ラフィーネの門が破られる時が来た。
数千の魔獣の群れが、まるで津波のように押し寄せて来たのだ。
ラフィーネに住まう人々は絶望した。
魔獣との戦いで犠牲になる自分たちは、なんと不幸かと。
だが、そこに希望が舞い降りる。
「待ち侘びたぞ! 城壁に上がる必要なしだったからな!」
赤い髪が右目を隠す、長身にして、一見美青年かと錯覚する容貌。
その剣が瞬時に、城門に突入した魔獣群を肉塊に変えた。
もう1人、同じく赤い髪の、巨体の熊のような男も負けじと魔獣の群れに剣を振り回す。
「1匹も逃すでないぞ。オルタナ」
「父上こそ私の獲物を奪わないで下さいよ」
オルタナは優雅な舞のように剣を振るい、アデルは剣が風を切る音すら聞こえないほどの速さで魔獣を屠り続ける。
「ベルガー王国の兵100名! ファインダ王国との友誼により加勢する!」
颯爽と馬に跨り麾下の兵を投入する金髪の美青年。
ベルガー王国近衛隊長のラシル・ブリュンヒルドの号令にラフィーネに歓声が沸き上がる。
「アデル殿! オルタナ! 思う存分暴れられよ!」
「言われなくとも暴れるさ。城壁ではローゼちゃんたちがいるんだろ? なら上は安心して任せられる」
ラシルの呼びかけに、赤い髪の美青年、いや、美人が答える。
その言葉を合図に、オルタナと呼ばれた美女は魔獣の群れに突進する。
凄まじい斬撃と連撃で、瞬く間に数十の魔獣が屍となった。
その様子を見てアデルもニヤリと笑うと、その巨体からは想像できぬ俊敏さで、数十体の魔獣を屠る。
そんな2人を援護するように、ベルガー兵は弓を放ち、剣を光らせる。
城門の様子は城壁のファインダ兵たちにも伝わった。
「おお! ベルガー王国が誇る七剣神のアデル・アーノルド殿と、麒麟児オルタナ・アーノルド殿か! ラフィーネになんでいたのかは知らぬが、これぞ天運‼」
「いえ、レオノール様。どうせ宰相様の策でしょう。全く何時からこの街に潜入させていたのやら!」
「ならば最初から申してくれればいいものを! くわあ~! アデル殿とその娘の麒麟児オルタナ殿の戦いっぷり、是非この眼で見たい!」
王女レオノールの呑気な呟きに、テレサはクスッと笑った。
「兵より民を護れとの契約なのでしょう。レオノール様は駄目ですよ? ここを離れないように」
戦局は一気に有利となった。
魔獣の死骸が増え続け、確実にその数は減っている。
(気になるのは上空の赤竜。リョウたちを運んできたが戦いを傍観するかのように旋回している。あの竜は果たして敵か味方か)
テレサの疑問に答える者はいないまま、戦いは終結へと向かう。
守備側が攻勢に転じる。
息のある魔獣は我先にと逃げ帰り、とこしえの森へと消えていった。
「追うな! 戦いは終わった! 勝利は我らぞ!」
レオノールの号令に沸き上がるラフィーネの兵士たち。
「死者は丁重に弔え! 人も魔獣もだ! それがファインダの流儀と心得よ!」
そう叫び終えると、レオノールは率先して魔獣の遺体をも丁重に扱いながら埋葬していった。
ファインダ兵や、ローゼたちにベルガー兵が協力する。
その姿に感銘を受けた民衆たちも協力し始めた。
埋葬作業が進むにつれ、街には不思議な静けさと敬虔な雰囲気が漂い始める。
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