【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

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第4章 竜は泉で静かに踊る

第15話 リョウへのペナルティ

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 朝日が昇る時刻。
 街の至る所に戦いの爪痕が残り、瓦礫の山や焼け焦げた建物が目立っていた。
 しかし、民衆たちはすでに復旧作業に取り掛かり始めており、その顔には疲労の色が見えつつも、勝利の喜びと希望の光が宿っていた。

 一段落がつき、戦った者たちは休むようにとの通達が届いた頃。

「レオノール姫か。大した嬢ちゃんだなあ、俺にまで握手して感謝の言葉を伝えてきたぜ。こりゃあファインダ王国は50年は安泰だな。と、そういえば髪色は灰色だが、金色にすれば嬢ちゃんと似てるなあ」

 ザイルーガにそう言われて、私は苦笑した。

 ベルガー王国王女である私はすでに死んだ身。
 レオノールと接触して、ややこしい事態になるのは避けたい。
 
 母方の従姉妹でもあるファインダ王国第一王女レオノールと、似た容姿の私を訝しむ人も出てくるだろう。
 なのでちょっと彼女を避けて、今に至っている。

 レオノールは、ラフィーネ領主やベルガー王国代表のラシルやアデルと事後処理中で、まだ私とは接触していない。

 ちなみに、ラシルは私の父方の従兄妹である。
 
「やあ、ローゼちゃん、久しぶりだね」

「オルタナさん、お久しぶりです! まさかこんな所で再会するなんて、夢にも思ってませんでした」

 私が旅に出て最初に辿り着いた大きな街、ビオレールでお世話になったオルタナ・アーノルドさんだ。
 女子なら誰もが虜になりそうなオルタナさんの優雅な笑みに、私はペコリと頭を下げた。
 
「ベレニスちゃんは?」
 
「あっちでパタンキューとなってます」

 目線を向けると、ベレニスとフィーリアとヴィレッタが、瓦礫を背にスヤスヤしている姿が見えた。
 
「ヴィレッタとフィーリアも寝ちゃったか。まあ、無理もないかな」
 
「美少女が無造作に寝ているのは危険だな。どれ、寝床まで運ぼう。ザイルーガ殿、手伝ってくれるかな?」
 
「お、おう。別嬪さんから名前覚えられてるってのは光栄だねえ」

 リザードマンのくせに、人の女性にザイルーガはデレデレした。
 こいつに仲間を運ばせるかと魔力を振り絞り、私は眠る3人を浮かばせた。
 
「ハハハ、ローゼちゃんは相変わらずだなあ。ところで此度の戦いの殊勲者のリョウ君は、どうしてあそこで修道服の女性に正座してるんだい?」
 
「えっと、アラン傭兵団の先輩だそうです」

 テレサ・ファインダ。
 アラン傭兵団でも屈指の実力者で、姓が示す通りファインダの王族。
 私やレオノールの祖母の妹の娘という、結構血の近い親戚である。

 どことなく母に似てる面影がテレサさんにはあった。
 違うのは瞳の色が真紅なぐらい。

 テレサさんの父親が南部部族出身で、その血が濃厚に現れてる証なのだろう。
 元アランの傭兵であったラインハルト王の影響と、8年前のファインダ王国滅亡危機を体験して、彼女はアランの傭兵となり王籍を離脱した。
 
 私は他者の意思で王籍から抜けたけど、自由意志で抜ける選択をしただろうか?
 そう考えると、彼女の凄さがわかる。
 
「リョウ、お久しぶりですね。正座とは殊勝ですが、何か後ろめたいことでも?」

 ヴィレッタたちを簡易宿泊所に運び終えて戻ると、アランの傭兵2人の問答がスタートしていた。
 
 テレサさんはリョウに微笑みかけているが、目が笑ってない。
 ……なんか怖い。 

 リョウはというと、俯いて黙ったままである。

 テレサさんがあの手でポンポンさせてるモーニングスター、すごく軽そうだなあ。
 でも魔獣をあれ一振りで何体も屠ってたよなあ。
 なんて思いつつ、耳を傾けていると。
 
「何か仰らないと、私の権限で旅の許可を取り消し、団長の元へ戻ってもらいます」

 え? そ、それは困る⁉
 それって、リョウが私たちと旅できなくなるってこと⁉

 リョウ! 何でもいいからとにかく発言して謝って!
 身振り手振りで私は訴えかけるが、リョウは気づきもしない。
 
 お、おにょれは~!
 
「報告を怠ったのはすみません。ですが、今暫くの猶予を。ノイズの行方がもう少しで掴めそうなのです。……それとオルガさんの件は俺の落ち度です。申し訳ありません」
 
「……オルガの件は、ベルガー王国から詳細の報告書が届いております。リョウの責任ではありません。責は団長にあります。無論、気づかなかった他の幹部も同様です。寧ろよくオルガを止めてくれたと感謝しています」

 テレサさんは、そこで言葉を区切ると大きく息を吸う。
 そしてリョウの眼を真っ直ぐ見据えた。

 なんか威圧が凄い。
 リョウの額に脂汗が滲み出てるよ。
 あ、目が泳ぐ泳いでる⁉ 
 頑張れリョウ! なんかいい感じだし、謝罪すれば何とかなるよ!
 
 そう心の中で応援していたけれど、次のテレサさんの一言で私までも固まってしまう。
 
「ですが、旅に女の子4人を連れ回しているとか。……ハーレムクソ野郎ですねえ。私には出逢いすらないというのに」

 空気が……変わった。

 ザイルーガさえも、テレサさんから発せられるオーラに口をパクパクさせて絶句している。
 
「ど、同行しているのは事実ですが……ハーレムというのは……ち、違います」
 
「ほう……可憐な少女4人と昼夜共にして何もしなかったと? 女神に誓えますか?」
 
「ち、誓いましゅ」

 こらリョウ! そこで噛むなああああ!
 折角戦いで目立って、ファインダ兵やベルガー兵たちが若き英雄と褒め称えてくれているのに、台無しだろうが!

 私は居ても立ってもいられず、テレサさんとリョウの間に入った。
 
「あ、あのお! リョウからは、そ、その性的な何かは裸を見られたり見たとかぐらいで、それ以上はありませんので!」

 あ、あああ、何言ってるんだ私!
 それだとまるで、リョウがお風呂とか着替え覗いたみたいじゃんかあああ‼ 
 
「クスッ……魔女ローゼ。そこまで慌てなくても大丈夫ですよ。リョウの性格は熟知しておりますので」

 笑う仕草に思わず見惚れてしまう。
 
「それじゃ、リョウは……」
 
「いくつかのペナルティは与えますが、旅の継続を許可します。魔女ローゼ。今後もこの後輩をよろしくお願いします」
 
 その言葉にホッと一安心。
 リョウは両手を地に付けて、助かった~みたいな顔してるよ。

 リョウとテレサさんの会話が終わり、オルタナさんが近づいてきた。
 
「お初にお目にかかる。私はベルガー王国近衛騎士団のオルタナ・アーノルドです。以後お見知りおきを」
 
「これはご丁寧に。アラン傭兵団のテレサ・ファインダです。オルタナ様といえば、北のビオレールに着任されていると聞き及んでましたが?」
 
「ええ、先の政変で配置が変わりましてね。宮仕えは性に合わぬもので中々慣れませんが、此度の戦に参戦できたのは僥倖です」

 オルタナさんとテレサさんの美しさと気品ある態度は、周囲の兵士たちも思わず足を止めて見入っているほど魅力に溢れていた。

 そんな美女2人の会話に私はピンときて、レオノールと神妙な顔で話をしているラシルへ目を向ける。
 
 ラシルめ、政変の功績で好きな女性を配下に配置したな。
 我が従兄妹ながら呆れるぞ。
 
「ところでテレサ殿は、あの赤竜をどう思われますか?」
 
「オルタナ様も気にしておられましたか。赤竜は、ずっとこちらを伺っている様子ですね」

 あっ、クリスを忘れてた。
 
「あの赤竜は私たちを、とこしえの森の奥地からここまで運んでくれたクリスという名前の娘です。悪い子じゃないですよ。お~いクリス! 降りてきて~! クリスのお陰で私たちも戦いに間に合ったし、感謝を伝えたいから!」

 私がそう呼びかけると、その声に呼応するかのようにクリスの巨大な翼が広がり、強風が巻き起こった。
 赤い鱗が朝日に輝き、その姿は神々しさすら感じてしまう。
 見上げる人々の口からは驚きの声が漏れ、中には跪く者さえいた。

 そしてクリスは、とこしえの森に去ったのであった。

 ……は?
 
「ちょっ! おい! せめて俺は連れて行けや! こっから俺の里まで何日かかると思ってやがる‼」
 
 カンカンに怒るザイルーガだが、私もリョウも呆気に取られてどうすることもできなかった。
 
「赤竜は女神と同じく気まぐれな存在。森の異変は収まったようですし、まずは休んで体力を回復してから探しに行かれたほうがよろしいかと。リョウ、赤竜と出会った経緯も詳しく報告するように」

 テレサさんの声で緊張の糸が切れたのか、私も睡魔が襲ってきた。

 ザイルーガのブツクサ文句と、リョウの街に着いたら報告書をいちいち書くのか……というため息を子守唄にして、私の身体も深い眠りへと落ちていったのであった。
 
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