【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

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第6章 雪原は鮮血に染まる

第34話 バアフィン復活

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「温泉は最高だね~。生きててよかったと思うよ」

 私たちはガーデリアの温泉で、迷宮での戦いの疲れをゆっくりのんびりと癒していた。

 そんな中でも最近見てきた夢が、私の心に重くのしかかっている。

(魔王誕生前の、アニスとアリスの行動と感情がダイレクトに流れてくる)

 特に、アリスの強烈な感情が私の中に流れ込んでくる。

 私は一体……?
 アニス? それともアリス?

「リョウ様には、事前にわたくしたちがここにいると伝えておりますのでご安心を。知っていれば、リョウ様は現れません」

 お湯に浸かりながら、ヴィレッタが寛いで告げる。

「リョウ様が、それで現れないのもマイナスポイントっすね」

 こらこらフィーリア、それはどうなのよ?

「傭兵はこの私に傅かないのが駄目だわ。イケメンじゃないから余計に腹が立つのよね」

「師匠は剣の教え方は上手です。でも女心には疎いです。そこが駄目な所だと思います」

「リョウってさ~、みんなの脱ぎ散らかした下着や服を見つけて無言で回収して洗濯するよね~。あの時のみんなのブチギレは凄かったな~」

 ベレニス、レオノール、クリスも話に乗っかってくる。

「あれはリョウ様が一番悪いのは当然ですが、クリスたちも悪いのですよ。あれほど、わたくしが注意してますのに下着を放置するなんて、裸を見られるより恥ずかしかったです。リョウ様はアラン傭兵団で見習いをしていた時に、毎日洗濯をしていたから無意識で洗濯をしてしまう。そう言い訳してましたが、そこがわたくしがリョウ様を駄目だと思うポイントです。無意識も許せませんし、言い訳も許せません」

 ヴィレッタがムッとして言う。

「いやいやいや、でもでもでも、リョウって戦ってる時は頼りになるし。……そ、その、カッコいいとこもあるよね?」

 そう私が口にすると、みんなは一斉にこう同じ言葉を言ってくるのだ。

「「戦ってる時だけね」」

 みんなのリョウに対する評価は散々である。

「傭兵はねえ。テクニック皆無で下手くそなのが難点よねえ」

 ベレニス? 会話のことだろうけど、変な意味に聞こえちゃうぞ?

「私はもう少し乱暴に動いても大丈夫ですのに、師匠は壊れ物を扱うようにしてくるんですよ! 正直不満です!」

 レオノール? それって剣の指導の事だよね?

「リョウってさ~。こっちの裸を見ただけで心臓の鼓動が早まってるんだよね~。でも、いざって時はヘタレで何もしてこないんだよねえ~」

 クリス! それは言っちゃ駄目なやつ!

「据え膳食わぬは男の恥って言うっすが、据え膳ではないのがツボっす。リョウ様には、もう少し笑わせてもらうっすよ」

 フィーリア? それは私を笑ってるんじゃ⁉

「リョウ様は礼儀正しいですし、粗暴でないのは良いのですが、感性が独特なところがございます。フタエゴとバラオビの命名には、今思い出しても腹が立ちます」

 ヴィレッタは馬2頭の名前に、まだ腹を立てているようだ。

 まあ、こんな話をしているのも、リョウに対するみんなの期待が大きいからだ。
 それはわかってよね? リョウ。

 温泉から出て、着替え終わり宿へ戻ろうとした矢先、吹雪が止んだなあ、と街の外を眺めた。

 そこにあの子がいた。
 夢に登場する黒髪ボブヘアの……名前は……

 無表情に遠くを指差していた。
 私は視線をそちらに向ける。

 すると雪に赤色が混じっているのが目に映った。
 同時に全身へ寒気が襲う。

「……ヴィレッタ、レオノール。リョウを呼んできて。ベレニスとクリスとフィーリアは、私と一緒に赤色の雪の地点へ」

 私は、そう言って赤色の雪の方へ走り出す。
 赤は危険を示す色だ。そしてこの色は……

 私たちは街を出てすぐの所にある小高い丘を登ると、そこには血塗れの魔獣の死骸。
 綺麗な白い貴族服を身に纏った、真っ白い髪の青年が1人、雪に溶け込むかのように佇んでいた。

「あの容姿……バアフィン!」

 私は戦慄して、なぜか確定して叫んだ。

 あの子に視線を戻す。
 もう、どこにもいなかった。

「やあ、これはこれは、初めまして」

 優雅にお辞儀をする白い青年。
 こいつがバアフィン? 魔王配下の五大将軍の1人で、七英雄の時代は白豹将軍と呼ばれ、ガーデリア地方一帯を支配していたという魔族の重鎮。

「……何をしているの? 世のため人のために魔獣を狩ってくれていた、って返答なら嬉しいんだけど」

 バアフィンの魔力の圧に全員が圧倒される中、私は皮肉混じりにそう尋ねた。
 絶対に違うと確信しながら。

「僕はねえ。ここでアニスに殺されたんだ。千年以上前の話だけどね。この地で雪に埋もれ粒子となって、地中を彷徨うことすらできずに縛られ続けてね」

 突飛な内容を口にしてくるが、ここは聞きに徹する。

「ごめんよヴィクティム。君に無茶をさせちゃったね。まさか復活が叶わなかったなんて。僕の責任、僕の失態。今、復活させるね。忌々しい七英雄どもめ。奴らが張った結界で未だに健在なようで魔界への扉は開けぬが、君1人くらいなら、共に過ごした魔獣たちを贄にすればこの地へ召喚できるから。君1人なら問題無いよね?」

 バアフィンの足元に魔法陣が現れると、その魔法陣は徐々に大きくなり、やがて巨大なものとなる。
 そして漆黒の柱が立ち上り始めた。

 まずい! バアフィンだけではなく、ヴィクティムも復活させるわけにはいかない!

『炎よ! 我が魔力を糧として、我にその力を貸したまえ!』

 燃え盛る炎をバアフィンに向けて放つ。が……

「煩いなあ。ちょっと、消えてくれないかな?」

 バアフィンの放った吹雪混じりの冷たい突風に、全身が重力を失う。
 飛ばされる⁉

『ごめんローゼ。ローゼしか掴めなかった』

 赤竜になったクリスの尾に、私は絡められていた。

 ベレニスとフィーリアは? 気配すらない。どこまで飛ばされたんだ?

「ベレニス! フィーリア!」

 呼ぶが返事はない。

「探しに行ったらどうだい? 意識を失って雪に埋もれたら、助からないだろうし」

『お前を倒したらね!』

 クリスのブレスがバアフィンに向けて放たれる。
 が、バアフィンの吹雪に消されてしまう。

「クリス! 私の魔法に合わせて!」

『わかった!』

 狙うは贄となっている魔獣! そして召喚されるヴィクティム!
 炎を放つと同時にクリスもブレスを吐き出し、炎の竜巻となって魔獣に直撃した……はずだった。
 漆黒の柱も贄の魔獣も、もうなかった。
 代わりに現れたのは、迷宮で戦ったヴィクティムの姿。

「ああ! バアフィン様! 申し訳ございません! この地を任されていたのに人間どもにやられ、迷宮を再び封じられるという不始末。このヴィクティム! バアフィン様に会わせる顔がございません!」

「いいんだよヴィクティム。ヴィクティムの不始末は僕の責任さ。この地へ来れた御祝儀だ。何か欲しいのはあるかい?」

 バアフィンは涙を流しながら、ヴィクティムと抱擁した。
 まるで、私とクリスの存在なんて眼中にないように。

「欲しいのは、バアフィン様が新たな魔王軍での名誉と栄光です。何をすれば良いかご指示を」

 バアフィンの顔が優雅に微笑んだ。

「そうだな~。リョウ・アルバースの首かな? 宰相閣下から、奴が危険と聞いている」

「承知しました。今お持ちします」

 触手を利用して跳躍し、あっという間に街の方へ飛び去るヴィクティム。
 させない! 絶対に!

「おっと魔女の女。それと神々の末裔たる赤竜の女。君たちがリョウ・アルバースを助けに行ったら、僕は飛ばされたお仲間に、とどめを刺しに行くよ?」

「なら、戦って倒すのみ!」

「ハハハ、威勢が良いね。凛々しくて実にいいよ。うん、宰相閣下からの情報で君たちを知っているよ。……少し遊んでから殺してあげよう」

 パンパンと、バアフィンは手を叩いた。
 あっという間に数百の魔獣に囲まれてしまった。

 なっ⁉ この状況って……

「残念。魔女アニスと赤竜王ドラルゴの時は万を超す軍勢だったのに、今回はたったの数百だ。でも十分かな」

 不敵な笑みを浮かべるバアフィン。
 リョウ……みんなは大丈夫だろうか。
 ……ベレニスやフィーリアは大丈夫だろうか?

 そんな不安に駆られながら、私はクリスと共に迫りくる魔獣たちに立ち向かった。
 
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