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魔法学校高等部編

6.同級生とお嬢様

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<<ある同級生目線>>


 いつものように魔法学校の校門をくぐると。

 可愛らしい声に呼び止められた。

「おはようございます。生徒会選挙に立候補しました、クレナ・ハルセルトです」

 薄桃色のふんわりとした髪に、大きな赤紫の瞳。
 妖精みたいな女の子が、可愛らしい笑顔でビラを配っていた。
 
 ……クレナ様だ。
 
 絵本のような風景に。おもわず校舎にむかっていた足が止まる。

「よろしくお願いします」

 差し出されたビラを受け取ると。
 本当に嬉しそうに微笑んでくれた。

 うわぁ可愛い!
 同性なのに、おもわずドキッとする。

 クレナ様のことは、中等部の頃から知ってるけど。
 高等部に入って……さらに綺麗になったと思う。
 
 もし。
 彼女は絵本から飛び出してきた妖精なんだよ、なんて言ったら。
 信じる人いるんじゃないかなぁ。
 
 私も……自分で信じちゃいそうだよ。


 見惚れて少しぼーっとしていると。
 横から明るい声が聞こえてきた。

「ご主人様をよろしくね! 生徒会長になったら学食が無料になりますー!」
「ちょっとキナコ! ……ごめんなさい、この子の言ってることはウソですので」
「えー……。」

 明るい声で話しかけてきたのは、キナコ様。
 赤い髪にツインテルールの元気な女の子。

 この二人って。
 普段は雰囲気が全然ちがうんだけど。
 こうして並んでると本当にそっくり。
 
 まるで双子みたい。

 はぁぁ。
 実際にこんな見たのは初めてだけど、なんて可愛らしいのかなぁ。 
 ホントに夢みたいな景色だよ。

 朝から素敵な光景をありがとうございます。

 今日は良いことありそう!


**********

 自分の席で今朝の事をにやけながら思い出していると。

 水色の長い髪を揺らしながら、女の子がすごい勢いで教室に飛び込んできた。
 親友のフィーナだ。

「ねぇねぇ、今朝の校門のあれ見た?」
「あれって?」

「きまってるじゃない、生徒会の選挙活動!」

 フィーナはちちちっと人差し指を横に振った。
 彼女の少し吊り上がった目がいつもより大きくみえる。
 なんだかすごく興奮してるみたい。

「あー、これのこと?」
  
 私は、今朝クレナ様からもらったビラを差し出した。

「そう! これよ!」
「うん、見たけど。なんでフィーナがそんなに興奮してるの?」

 彼女は顔を真っ赤にして、こぶしを握り締めている。
 生徒会の選挙ってそんなに興奮することかなぁ?

 ……クレナ様とキナコ様のお二人に会えたのは嬉しかったけど。

「だって! クレナ様やキナコ様だけじゃなくて、ジェラ様やガトー様もいたのよ!」

 えー。そうだったんだ。
 お二人に見惚れてて全然きづかなかったや。

「なんかね、一年生の特殊クラス皆でクレナ様の応援してるみたいよ!」

 特殊クラスって。
 えーと。

 私は、あのクラスのメンバーを思い返してみる。
 
 竜姫って言われてるクレナ様に。
 竜王のキナコ様でしょ。

 第二王子のガトー様に。
 第一王女のジェラ様。

 あと公爵令嬢のリリアナ様と。
 すごく可愛らしい黒髪の女の子。確かクレナ様の妹さんだったかな?

 なんだか憧れの人の集団だよね、あそこって。
 
「ねぇ、そのビラ誰からもらった?」
「私はクレナ様からだけど」

「えー! うらやましいっ! 私大ファンなのに!」

 そうだった。
 フィーナってクレナ様大好きだもんね。

 いつも話半分で聞いてたけど。
 うん。今朝のクレナ様見て、ちょっとだけ気持ちわかったかも。
 ちょっとだけ、だけど。

「私、黒髪の妹さんからもらったよ。まぁ、あの子も可愛かったけどね」

 フィーナは、カバンにしまってあったビラを大事そうに取り出した。

「ああ、もう可愛すぎる! これ帰ったら家に飾ろっと」

 嬉しそうにビラを眺めた後。
 頬を赤らめてキスをする。

「やっぱり、クレナ様可愛いー!」

 ごめん、フィーナ。
 さすがに親友でも……それは引くけど。

「でも、同じ一年生で生徒会に立候補なんて、すごいよねー……」

 私は、中学のころのクレナ様を思い出していた。
 特に三年生の時は生徒会長だったから、いろんな学校行事で見かけたけど。
 
 彼女は いつもいつも。
 笑顔で明るくて。
 でもどこか凛としていて。

 太陽みたいな人だなって……思ってた。
  
「もしさ。クレナ様がまた生徒会長になったら、楽しそうだよね」
「うん、私もそう思う」

 フィーナの言葉にウンウンと頷く。

 三年生の時の文化祭とか体育祭とか。
 すごく盛り上がったよね。
 
 楽しかったなぁ。

「それにさ、クレナ様を応援してるのって同じ一年生の特殊クラスのメンバーじゃん?」
「うんうん」

「……もし当選したらさ、生徒会メンバー全員が一年生とかあるんじゃない?」

 生徒会のメンバーって当選した会長が決めるけど。
 伝統的に、応援したメンバーを選ぶって聞いたことある。

「……なにそれ? 楽しそう」

 私たちの学年が学校を支配する? みたいで。
 すこしドキドキする。

「なにか、楽しそうな話をしてるね」

 近くにいた男の子が私たちの会話に入ってきた。

「いいじゃん、生徒会を一年生が占領するとか。燃えるシチュだね!」

「えーなになに、何の話?」
「生徒会、一年で独占しようって話しみたいだぜ?」

「うわーそれいいな! オレもクレナ様推しだぜ!」
「いいよね、クレナ様!」

 なんだか、どんどん人が集まってくる。
  
 どうしよう。
 なんだかすごくワクワクしてきた。

 生徒会選挙。
 一年生全員で盛り上げたら楽しそう!

 それに。応援してたら。

 またクレナ様を近くでみれるかも……しれないよね。
 
 机の上のビラを見ると。
 クレナ様がまるで、恋する乙女のような表情で写っている。

 なんだか私にも向けられてるみたい?

 思わず赤くなった頬を両手で押さえた。

 なんだろう。私、ヘンなの!
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