勇者パーティーを追放された転生テイマーの私が、なぜかこの国の王子様をテイムしてるんですけど!

柚子猫

文字の大きさ
20 / 95

20.追放テイマーとフォルト村の発展

しおりを挟む
「すごいよ、ショコラ。いきなり『王室ご用達』なんて、大出世じゃない!」
「うふふ。いやだぁ、リサったら。それ断ったからね。あとココの支払いよろしくね?」

 正面に座っているリサに、両肘をついた状態で笑顔を作る。

「えー? ショコラってば、まだ怒ってるの?」
「うふふ、あのねリサ。ギルドの説明って受付の人がちゃんとするらしいよ?」
「いやぁ。ほらさ、親友だし、省いてもいいかなぁって」

「うふふ、そんなの理由にならない……でしょ、もう!!」
「だから謝ったじゃん。せっかく可愛い顔なんだから怒ったら台無しだよ?」

 ここは、運送ギルドの近くにあるレストラン。
 私たちは、パーティー結成祝いでお店を訪れている。
 もちろん……リサのおごりでね!!

「あはは、本当にキミたちは仲が良いんだね」
「そうなんですよぉ、子供の頃から大親友なんですぅ」

 リサは自分のグラスを、ベリル王子の持っていたグラスにそっと近づける。
 あーこれ。
 勇者新聞にのってた、『気になる異性を落とす方法』。
 さすが、大親友……あざとい。

「ところでぇ。ベールさんは、どのあたりに住んでるんですかぁ?」
「うーん。ちょっとこの村からは遠いかな?」
「そうなんですかぁ~。パーティー結成しましたし、この村に住んじゃうなんてどうですか?」

 そっか。
 リサは私たちをギルドマスターの部屋に案内したあとすぐに出たから、王子の正体知らないんだ。
 無理だから。
 もうすっごい豪華なお城に住んでるからね、この人!

「そうだね、考えとくよ」
「もしよければ、ギルドで物件お探ししますからね。なんでしたら、私のうちでも……キャー!」
「ちょっと、リサ! そのくらいに」
「あはは、気持ちだけ受け取っておくよ」

 王子はグラスをそっと私の方にずらすと、にっこりと笑った。
 ちょっと、なんでそこで私を見るかなぁ。

 しかも、まるで砂糖菓子みたいに甘い表情で……。

 思わず、顔が赤くなる。
 もう。
 そんな顔されたら……意識しちゃうじゃない。  

「ショコラちゃん、顔が赤いですよ? ひょっとして酔っちゃいました?」
「あはは、うん、そうかな?」
「うふふ、真っ赤な顔で可愛いですわ」

 ミルフィナちゃんが、潤んだ瞳で私に顔を近づけてきた。
 ……うわぁ、彼女の方が酔ってるよね?
 やわらかそうな頬がほんのり染まっていて、ものすごく可愛い。

「ねぇ、ショコラ。この人お姫さまよね? そんなに普通に話して大丈夫なの?」
「わたくしとショコラちゃんとの間に身分なんて関係ないですわ!」
「うわぁ」
「ショコラちゃん大好きですー!」

 ミルフィナちゃんは、イスから立ち上がると、私に抱きついてきた。
 彼女の長い髪がゆれるたびに、バラのような良い匂いが漂ってくる。
 どれだけ美少女要素満載なの、この子。


「そういえばさ、村の外れにものすごく大きな建物が建つの知ってる?」
「へー、そうなの?」

 私はミルフィナちゃんに抱きつかれたまま、リサに顔を向けた。

「まだ建築中なんだけどさ、ウチのギルドハウスより大きかったよ」
「運送ギルドより? ちょっとそれすごいねー」

「もしかして、冒険者ギルドが出来るのでしょうか?」

 私たちの話を聞いていた賢者アレス様が、真剣な表情でつぶやいた。

 ……。

 …………。

「えー? それはないですよ。この辺り魔物でないですし」
「まぁ、だよね。田舎だしこの村~」

 私とリサは顔を見合わせると笑い出した。
 冒険者ギルドって、周囲の魔物討伐とか護衛が主な仕事だから。
 この村で依頼なんてくると思えないし。

「うふふ。ちがいますわー。もっと素敵な建物ですの」

 ミルフィナちゃんが、私に頬をよせてきた。

 ……あー。
 ……王家が何かしてるのね。

「まぁ、あれだよね。賢者様の家も出来たしさ。最近この村も賑やかになってきたよね~」
「あはは……そうだね」

 あれ? おかしいな。
 田舎でノンビリとスローライフな予定だったんだけど。
 なんで村が賑やかになってきてるのよ?!
  

**********

<<勇者目線>>


「みんな、この新聞を見てくれ!」

 オレはテーブルの上に勇者新聞を広げた。

「なんだ勇者。魔王軍の動向でも載っていたのか?」
「なになに、『気になる異性を落とす方法』……ちょっと勇者、こんなの読んでるの?」

 うぉ。何読んでるんだこの金髪ロリッ子!
 そんなジト目でオレを見つめないでくれ。

「ちがう、そのページも気になるけど。それじゃなくて次のページ!」
「……お宝オークション記事……ですか?」
「そう! さすがシェラ。で、ここを見てくれないか」

 勇者新聞には、王都で行われるオークション情報が載っている。
 欲しい商品があった場合、上限金額を書いて期日までに郵送するか、直接会場に足を運んで落札するシステムだ。

 前世のオークションサイトに比べれば不便だけど、良い品が安く手に入ったりするんだよなぁ。 
 オレの鎧も、このオークションで購入したものだし。

「ふーん。あ、水晶の杖。これ欲しい!」
「いや、そんなのいいからさ。これ見てくれよ!」
 
 オレは、オークション記事の一番最後のアイテムを指さす。

「……ミスリルの盾……ですか?」
「おお! そんな貴重な品が出品されているのか!」
「へー? 珍しいわね」
「な! これさえあれば、魔王軍のグラッフェルとかいう奴にも勝てるぞ!」

 前回勝てなかったのは、装備の差があったからに違いない。
 そうじゃなきゃ、転生チートキャラのオレが負けるわけがないからな。
 ふっ、日ごろからお宝記事をチェックしてるオレに死角はないぜ!

 なんだなんだ。
 この静寂は?
 さては、みんな。オレのナイスなアイデアに言葉もでないんだな?

「ねぇ、アンタ。こんな高そうなもの、今の私たちに買えるとおもってるの?」
「勇者様……ミスリルは……さすがにちょっと……」
「国王からもらった支度金がまだ残ってるだろ。それを使ってさぁ」

「あんたバカなの? それを料理人と荷物持ちを雇うのに給料に使ったんでしょ?!」
 
 あーそういやそうだった。
 
「いやいや。でも料理人と荷物持ちは必要だったでしょ?」
「どっちも自分たちで出来たわよ! なに勝手に募集してるのよ!」
「勇者よ、ダリアが正しいとおもうぞ」
「勇者様……あの……今からでも」

「どうしたんだい? 料理人が女性だから嫉妬してるのかな?」

 なにせ、最後は顔で選んだからね。
 今のところ、あの二人は嫁候補その四と五だ。
 ふふふ、転生勇者といえばハーレムが基本だからな。

「ああ、もう我慢できない! 私、お姉さまを探しにいってくる!」

 魔法使いのダリアは、大きな声を上げると部屋を出ていった。

「はぁ、勇者よ。魔法使いも募集するか?」

 あのロリッ子ツンめ。
 あんなに妬かなくても……可愛い奴。
 仕方ない……嫁候補のショコラと一緒に、今度迎えに行ってやるか。
しおりを挟む
感想 40

あなたにおすすめの小説

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

『捨てられシスターと傷ついた獣の修繕日誌』~「修理が遅い」と追放されたけど、DIY知識チートで壊れた家も心も直して、幸せな家庭を築きます

エリモコピコット
ファンタジー
【12/6 日間ランキング17位!】 「魔法で直せば一瞬だ。お前の手作業は時間の無駄なんだよ」 そう言われて勇者パーティを追放されたシスター、エリス。 彼女の魔法は弱く、派手な活躍はできない。 けれど彼女には、物の声を聞く『構造把握』の力と、前世から受け継いだ『DIY(日曜大工)』の知識があった。 傷心のまま辺境の村「ココン」に流れ着いた彼女は、一軒のボロ家と出会う。 隙間風だらけの壁、腐りかけた床。けれど、エリスは目を輝かせた。 「直せる。ここを、世界で一番温かい『帰る場所』にしよう!」 釘を使わない頑丈な家具、水汲み不要の自動ポンプ、冬でもポカポカの床暖房。 魔法文明が見落としていた「手間暇かけた技術」は、不便な辺境生活を快適な楽園へと変えていく。 やがてその温かい家には、 傷ついた銀髪の狼少女や、 素直になれないツンデレ黒猫、 人見知りな犬耳の鍛冶師が集まってきて――。 「エリス姉、あったか~い……」「……悔しいけど、この家から出られないわね」 これは、不器用なシスターが、壊れた家と、傷ついた心を修繕していく物語。 優しくて温かい、手作りのスローライフ・ファンタジー! (※一方その頃、メンテナンス係を失った勇者パーティの装備はボロボロになり、冷たい野営で後悔の日々を送るのですが……それはまた別のお話)

1歳児天使の異世界生活!

春爛漫
ファンタジー
 夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。 ※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。

処理中です...