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54.追放テイマーと温泉街の休日
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「あ、起きた? ショコラ、おはよー」
「今日こそ一緒に温泉街まわろうね?」
朝、暖かい布団の中で目を覚ますと、親友二人に囲まれていた。
ふと窓の外を見ると、窓から日差しが差し込んでいる。
もうすっかり日が昇ってるみたい。
――ちょっと待って。
――今、何時?
私は慌てて、枕元にあった魔道具を確認する。
九時半……九時半って。
うそ。
これ。
完全に寝過ごしてるんだけど!?
「ゴメン、今すぐ出かけないといけないから!」
リサとコーディーは顔を見合わせると、慌てて起きようとする私に抱きついてきた。
うわぁ、なんなの。
二人の柔らかい感触と、バラの花のような、やわらかい匂いに包まれる。
これ。彼女たちと……あの温泉の香りだ。
「ふっふっふ。その予定はキャンセルしたから、安心していいわよ」
「ねー?」
「ちょっと、キャンセルってなによ?」
もごもご。
二人が私の上にかぶさってるから、起きれないし、うごけない!
「魔王城の朝ミーテイングでしょ? ちゃんと魔王くんに伝えておいたから」
コーディーが嬉しそうに布団に入ってくる。
「伝えたって?」
「だから、ショコラの今日は完全オフってことよ!」
もう。
リサまで隣に入ってくるし。
これさ、すごく密着してるんだけど。
「アンタ、私たち村の人達を休みにしてるのに、自分は働いてたでしょ?」
「な、なんのこと?」
「とぼけなくても平気よ、アイドルはなんで知ってるんだから!」
温泉に来てからも、毎日こっそり抜け出してメルクルさんの転送魔法で魔王城にもどってたんだけど。
なんで知ってるんだろう。
一人で温泉街巡ってるっていったのに。
「あのね、アンタの顔みてればわかるわよ。そんな疲れた顔しちゃって」
「疲れてるなら、このまましばらく寝ててもいいわよ。私もリサも付き合うから!」
「付き合うって、このまま寝るってこと?」
「ほら、子供の頃のお泊り会で、よくこうやって寝たよね」
コーディーが懐かしそうに頬をくっつけてくる。
「あったねー、三人で同じベッドで固まって。あの頃のショコラは、私らのお姉さんみたいだったよね」
それはそうだよ。
私転生者だったから、精神年齢的には二人よりおもいきりお姉ちゃんだったし。
ん?
あれ?
「リサ、ちょっと待って。今はお姉さんっぽくないってこと?」
「んー。まぁ、今は手のかかる妹みたいな感じ?」
「いえてるー」
「……いや、コーディー、アンタもだから」
リサは手を伸ばすと、コーディーの額をこつんと触れた。
「おかしいから! 今でも二人より私が一番お姉さんっぽいから!」
「いやいや、そこはどう考えても私でしょ?」
「リサもショコラもやめなよ。ふふふ、ほら私が一番大人じゃない?」
「「それはない!」」
……ぷ。
思わず声がそろってしまって、リサと二人で笑い出してしまった。
「ちょっと、なによ。せっかく新しい勇者新聞も持ってきてあげたのに!」
コーディーは頬を膨らますと、新聞を私に押し付けてきた。
もしかして、もう昨日の戦いの事が書いてあるとか?
私は上半身をおこすと、新聞を広げてみた。
『勇者軍、フォルト村から堂々撤退』
『魔王軍は卑怯にも、第二王妃ショコラ様、第三王妃ミルフィナ様を人質に軍を進めてきた』
『心優しい勇者様は、魔王軍をさんざん蹴散らした後、お二人の安全を優先し軍を王都周辺までひきあげることにした』
うーん。
なんだか全然事実と違う気がするんだけど。
王国軍からだと、こう見えたのかなぁ。
「ねぇねぇ。アンタさ、また第二王妃に戻ってるわよ。残念ね!」
「え? 気にするところ、そこなの?!」
「あはは。あーあとさ」
リサとコーディーは、真剣な表情で、ゆっくり私に抱きついてきた。
「ちょっと、もう。なによ!」
「ショコラ……」
「うん?」
「「村を守ってくれて、ありがと!」」
**********
私たち三人は、宿で遅い朝食を食べた後、温泉街をぶらぶらと歩いていた。
「ふふん。今日はどこの温泉入ろうかなー?」
「二人とも、結構まわったの?」
「うん、みてみてこれ!」
コーディーは、旅行雑誌『大陸ウォーカー』を嬉しそうに差し出してくる。
「丸がしてあるところが、今まで入ったところね!」
「へー。結構入ったんだね」
「まぁ、せっかくだしね!」
ふむふむ。
スリムボディを手に入れる湯、吟遊歌姫になる湯、玉の輿を目指す湯……って。
どんな成分があるのよ!
逆に気になるんだけど!
「あとね、ここはショコラと行こうって、周らずにとっておいたの」
「どこどこ」
「ふふん。これよ!」
二人は嬉しそうに振り返ると、大きな見出しのページを指さした。
『ある日突然、イケメンの高貴な貴族と出会った私が、彼の花嫁候補になって溺愛される女神の湯』
……。
…………。
うそでしょ。
なにこの、ラノベのタイトルみたいな温泉。
「この温泉にはいると、素敵な彼が出来るんだって!」
「ほら、ここに書いてあるでしょ! 逆ハーレムも夢じゃないって!」
二人が興奮して、紹介記事をパンパンと叩く。
体験談とか、すごくウソっぽいんだけど。
あ、でも。
私は改めて、記事の写真を眺めてみる。
神殿みたいな大きな建物が、まるごと温泉になってるみたい。
へー、こんなところもあるんだ。
名前はともかく、すごくキレイで楽しそう。
「二人ともありがと。じゃあ、今からここ行ってみる?」
「やったぁ。ずっと行ってみたかったのよね。楽しみ!」
「目指せ逆ハー!」
「「おー!」」
ちょっと、周りから思いきり見られてるからね?!
「ほら、ショコラも一緒に! おー!」
「もう。いいから、早く行くよ!」
私たちは、雑誌の地図を確認しながら、温泉街の大通りを歩いていった。
「今日こそ一緒に温泉街まわろうね?」
朝、暖かい布団の中で目を覚ますと、親友二人に囲まれていた。
ふと窓の外を見ると、窓から日差しが差し込んでいる。
もうすっかり日が昇ってるみたい。
――ちょっと待って。
――今、何時?
私は慌てて、枕元にあった魔道具を確認する。
九時半……九時半って。
うそ。
これ。
完全に寝過ごしてるんだけど!?
「ゴメン、今すぐ出かけないといけないから!」
リサとコーディーは顔を見合わせると、慌てて起きようとする私に抱きついてきた。
うわぁ、なんなの。
二人の柔らかい感触と、バラの花のような、やわらかい匂いに包まれる。
これ。彼女たちと……あの温泉の香りだ。
「ふっふっふ。その予定はキャンセルしたから、安心していいわよ」
「ねー?」
「ちょっと、キャンセルってなによ?」
もごもご。
二人が私の上にかぶさってるから、起きれないし、うごけない!
「魔王城の朝ミーテイングでしょ? ちゃんと魔王くんに伝えておいたから」
コーディーが嬉しそうに布団に入ってくる。
「伝えたって?」
「だから、ショコラの今日は完全オフってことよ!」
もう。
リサまで隣に入ってくるし。
これさ、すごく密着してるんだけど。
「アンタ、私たち村の人達を休みにしてるのに、自分は働いてたでしょ?」
「な、なんのこと?」
「とぼけなくても平気よ、アイドルはなんで知ってるんだから!」
温泉に来てからも、毎日こっそり抜け出してメルクルさんの転送魔法で魔王城にもどってたんだけど。
なんで知ってるんだろう。
一人で温泉街巡ってるっていったのに。
「あのね、アンタの顔みてればわかるわよ。そんな疲れた顔しちゃって」
「疲れてるなら、このまましばらく寝ててもいいわよ。私もリサも付き合うから!」
「付き合うって、このまま寝るってこと?」
「ほら、子供の頃のお泊り会で、よくこうやって寝たよね」
コーディーが懐かしそうに頬をくっつけてくる。
「あったねー、三人で同じベッドで固まって。あの頃のショコラは、私らのお姉さんみたいだったよね」
それはそうだよ。
私転生者だったから、精神年齢的には二人よりおもいきりお姉ちゃんだったし。
ん?
あれ?
「リサ、ちょっと待って。今はお姉さんっぽくないってこと?」
「んー。まぁ、今は手のかかる妹みたいな感じ?」
「いえてるー」
「……いや、コーディー、アンタもだから」
リサは手を伸ばすと、コーディーの額をこつんと触れた。
「おかしいから! 今でも二人より私が一番お姉さんっぽいから!」
「いやいや、そこはどう考えても私でしょ?」
「リサもショコラもやめなよ。ふふふ、ほら私が一番大人じゃない?」
「「それはない!」」
……ぷ。
思わず声がそろってしまって、リサと二人で笑い出してしまった。
「ちょっと、なによ。せっかく新しい勇者新聞も持ってきてあげたのに!」
コーディーは頬を膨らますと、新聞を私に押し付けてきた。
もしかして、もう昨日の戦いの事が書いてあるとか?
私は上半身をおこすと、新聞を広げてみた。
『勇者軍、フォルト村から堂々撤退』
『魔王軍は卑怯にも、第二王妃ショコラ様、第三王妃ミルフィナ様を人質に軍を進めてきた』
『心優しい勇者様は、魔王軍をさんざん蹴散らした後、お二人の安全を優先し軍を王都周辺までひきあげることにした』
うーん。
なんだか全然事実と違う気がするんだけど。
王国軍からだと、こう見えたのかなぁ。
「ねぇねぇ。アンタさ、また第二王妃に戻ってるわよ。残念ね!」
「え? 気にするところ、そこなの?!」
「あはは。あーあとさ」
リサとコーディーは、真剣な表情で、ゆっくり私に抱きついてきた。
「ちょっと、もう。なによ!」
「ショコラ……」
「うん?」
「「村を守ってくれて、ありがと!」」
**********
私たち三人は、宿で遅い朝食を食べた後、温泉街をぶらぶらと歩いていた。
「ふふん。今日はどこの温泉入ろうかなー?」
「二人とも、結構まわったの?」
「うん、みてみてこれ!」
コーディーは、旅行雑誌『大陸ウォーカー』を嬉しそうに差し出してくる。
「丸がしてあるところが、今まで入ったところね!」
「へー。結構入ったんだね」
「まぁ、せっかくだしね!」
ふむふむ。
スリムボディを手に入れる湯、吟遊歌姫になる湯、玉の輿を目指す湯……って。
どんな成分があるのよ!
逆に気になるんだけど!
「あとね、ここはショコラと行こうって、周らずにとっておいたの」
「どこどこ」
「ふふん。これよ!」
二人は嬉しそうに振り返ると、大きな見出しのページを指さした。
『ある日突然、イケメンの高貴な貴族と出会った私が、彼の花嫁候補になって溺愛される女神の湯』
……。
…………。
うそでしょ。
なにこの、ラノベのタイトルみたいな温泉。
「この温泉にはいると、素敵な彼が出来るんだって!」
「ほら、ここに書いてあるでしょ! 逆ハーレムも夢じゃないって!」
二人が興奮して、紹介記事をパンパンと叩く。
体験談とか、すごくウソっぽいんだけど。
あ、でも。
私は改めて、記事の写真を眺めてみる。
神殿みたいな大きな建物が、まるごと温泉になってるみたい。
へー、こんなところもあるんだ。
名前はともかく、すごくキレイで楽しそう。
「二人ともありがと。じゃあ、今からここ行ってみる?」
「やったぁ。ずっと行ってみたかったのよね。楽しみ!」
「目指せ逆ハー!」
「「おー!」」
ちょっと、周りから思いきり見られてるからね?!
「ほら、ショコラも一緒に! おー!」
「もう。いいから、早く行くよ!」
私たちは、雑誌の地図を確認しながら、温泉街の大通りを歩いていった。
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