勇者パーティーを追放された転生テイマーの私が、なぜかこの国の王子様をテイムしてるんですけど!

柚子猫

文字の大きさ
61 / 95

61.追放テイマーと猫型ギルドハウス

しおりを挟む
 黒猫マークでおなじみの輸送ギルド。
 普段なら昼間ってあんまり人がいないんだけど、今はたくさんの配達人とギルド職員であふれかえっている。

「ねぇ、ショコラ?」
「なあに、リサ」
「アンタさぁ。この申請書……」

 ギルドのカウンターに置かれているのは、私が提出したパーティーメンバーのリスト。

「あはは、またメンバーが増えたんだよね。登録よろしく!」
「……いや、そういうことじゃなくてさぁ」
「え? なにか間違って記入してる?」
「そうじゃないわよ!」

 リサは両手でカウンターを思い切り叩いた。

「ちょっと、リサ。どうしたのよ?」
「はぁ……どこから突っ込めばいいいのかしら……」
「え?」
「まず、このメンバーリスト!!」

 彼女はカウンターのメンバーリストを押し付けてきた。

「だから、なんなのよぉ」
「あのね!」

 リサが頭を押さえながら大きな声をあげる。

「賢者様がいて、ちびっこ魔法使いがいて。で、追加メンバーが、精霊使いのシェラさん?」
「あーあと。ミルフィナちゃんと、ベリ……ベールもいるから!」
「そうね……元王女までいるのよね。って! もうほとんど勇者パーティーじゃない!!」
「そ、そうかな?」

 勇者パーティー。
 私は、ちらっと腰にくっついている聖剣に視線を向けた。

 村に皆にはナイショにしてるけど。
 よく考えたらさ、勇者って私なんだから……。
 ほとんどというか……完全に勇者パーティーだよねぇ。

「で。この豪華メンバーでやることが……なんで輸送なのよ!!」
「え? だって輸送パーティーだし、うち」
「普通はさ、魔王倒しに行ったり……って魔王は倒したことになるの、これ?」
「倒してはいないけど。うーん、仲間とか友達かな?」

「いまさらだけどさぁ……それもどうかと思うわけよ……」

 リサはカウンターに両肘を付けて頬に手をあてる。
 
「で。もう一人の追加メンバーが、エリエルっていう名前で職業が……女神?」
「うん、本人がどうしてもそれしか書きたくないって」
「確かにエリエルって女神様の名前だけどさぁ……」

「ちょっとちょっと、失礼な子ね。せっかく、天才女神エリエル様がこの世界に降臨してるっていうのに!」

 カウンターにひょこひょこ背を伸ばしてリサに訴えかける、ふわふわ金髪の女の子。
 
 可愛いぃぃ!!
 なにこのカワイイ生き物!!

「ちょっと、ショコラもちゃんと伝えなさいよ!」
「えーと。一応本物の女神なんだけど……って信じないよね?」

「まぁ、アンタがいうなら信じなくもないけどさ。女神ねぇ……どうなってるのよ、ホントに」

 リサは飛び跳ねてるエリエル様を見て、大きなため息をついた。

「ふふん。どうやら私の偉大さが伝わったようね。おもいきり崇めてもいいのよ?」
「はいはい、で。女神様も運送ギルドで働くわけね?」
「荷物を運ぶのなんて、女神の私にかかれば、ちょちょいのちょいよ!」

「ふーん。じゃあ、女神様だったらさ、なにかすごいことやって見せてよ?」
「え、女神の力って神聖なのよ? そんなに簡単に力をみせたりしないわ!」

 リサの質問に、両手を腰に手をあてて偉そうなポーズを取るエリエル様。

 ……。

 …………。

「……ねぇ、コスプレ好きな子供にしか見えなんだけど。ウチの姪っ子もこんな感じよ?」
「あはは、そう見えるよねー。うん、私も知らなかったらそう思うかなぁ」
「ホントにホントなわけ?」
「うん、まあ……」

 彼女は私に顔を近づけると、こそこそと話しかけてくる。

「ちょっと、聞こえてるわよ! いいわ。私が天才女神だっていうことを証明してあげるわよ!!」

 エリエル様は両目を閉じると、建物の床に手をあてた。
 
 ――次の瞬間。

 部屋全体がまばゆい光に包まれていく。

「なにこの光……」
「え、なにこれ?」
「なんだなんだ、なにがあった?」

 人でいっぱいのギルドハウスがざわめきだした。

 うわぁぁぁ。
 今度は何?!

 建物がきしむような音を立てて、大きく上下に揺れだした。

「うにゃーーーん! 歩けるようになったニャ。しゃべれるようになったニャ。これで無敵ニャン!」

 なにこの大きな声。
 まるで前世の校内放送みたいに、建物内全体に響いてるんだけど?!

「うわぁぁぁ」
「なんだこれ」

 床が大きく傾いて、みんな立っていられない。
 私たちは次々と、入り口から建物の外にはじきだされていく。

「うにゃーーーーん! みんな輸送ギルドをよろしくニャン!!」

 え。

 目の前にはあるのは、今さっきまでいた輸送ギルドの建物なんだけど。

 なんで。
 なんで。

 大きな足が四本はえてるのよ!!

 おまけに、屋根には大きな三角形の耳。
 奥では大きな尻尾のようなものが、ぶんぶん動いてるし。
 窓の形も変わっていて、大きな吊り上がった目に見えるし。
 入り口なんて、猫の口のように曲線を描いているし。

 ……なにこれ?

「旗をふって進もう~旗を振って進もう~、大事なにもつを届けるために~」 
 
 ギルドハウス……とういか、もうすっかり巨大な猫のような建物は、嬉しそうに歌を歌い始めた。
 中からは取り残された人たちの悲鳴が聞こえてくる。

「真心こめてどこまでも~、幸せを届けるために~、あの山こえて谷こえて~ニャン!」

 広場にいる村人たちは、みんなポカンとご機嫌な建物を見つめている。


「どう? 建物そのものを動けるようにしてあげたわ。これで大きな荷物も運べるわよね?」
「……これ、エリエル様がやったの?」
「そうよ、やっぱり私って天才よね! 褒めていいのよ?」

「今すぐ元に戻してください!!」

 なにこれ。
 ギルドハウスが荷物を運ぶとか。

 
 ……聞いたこと無いんだけど!!
しおりを挟む
感想 40

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

魔法筆職人の俺が居なくなったら、お前ら魔法使えないけど良いんだよな?!

川井田ナツナ
ファンタジー
俺は慈悲深い人間だ。 だから、魔法の『ま』の字も理解していない住民たちに俺の作った魔法筆を使わせてあげていた。 だが、国の総意は『国家転覆罪で国外追放』だとよ。 馬鹿だとは思っていたが、俺の想像を絶する馬鹿だったとはな……。 俺が居なくなったら、お前ら魔法使えなくて生活困るだろうけど良いってことだよな??

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

処理中です...