勇者パーティーを追放された転生テイマーの私が、なぜかこの国の王子様をテイムしてるんですけど!

柚子猫

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80.追放テイマーは光の中

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 スポットライトがいろんな色に変化して会場を盛り上げている。
 なんだか。
 なんだか。
 会場全体が光のカーテンをまとってるみたい。

 私たちは、フォルト村に作られた特設ステージの光の中を、飛んだり跳ねたり歌ったり。
 全身を使ってパフォーマンス中。
 すぐ隣には、ミルフィナちゃんの輝くような笑顔と天使の歌声。

 彼女、小さい頃から吟遊歌姫アイドル に憧れてたんだって。
 それであんなに歌うのも踊るもの好きだったんだ。
 
「うふふ。ショコラちゃんのおかげで、夢がかないましたわ」

 バックステージで次の衣装に着替える時に、嬉しそうに耳元でささやいてきた。

 うわぁぁ。
 なんて可愛らしく微笑むんだろう。
 同性なのに……胸が締め付けられるくらい可愛い。
 
 もし……彼女が女神エリエルさまのルーレットを回していたら。
 選ばれた職業は『吟遊歌姫アイドル 』だったんじゃないかなぁ。
 うん、そんな気がするな。
 
「さぁ。ラストの曲も楽しみますわよ!」
「だね。おもいっきりいこう!」

 今度はウエストをぎゅっとコルセットで絞った衣装。
 鎧の胸元には大きなリボン。
 スカートの中のパニエにもリボンがついていて、揺れるとちらりと見えるようになっている。

 えーと、鏡の前で軽く一回転してみる。
 前世のアニメとかコスプレなんちゃって勇者みたいなイメージ?
 まぁ……私の腰にある聖剣は本物なんだけどね。

「主様、ミルフィナ様。準備オッケーです!」

「頑張ろう!」
「おーですわ!」

 水の魔性メルクルさんの合図で、ステージに飛び出していく。

 さすがに落ち着いてきて、観客席をゆっくり眺める余裕ができたみたい。
 あはは。まぁ、最後の曲だもんね。 
 
 最前列の近くに、お父さんとお母さん。
 あ、リサとコーディーもいる。来てくれたんだ。
 
 歌いながら、大きく手を振ってみる。
 動きに合わせて、ペンライトとウチワが大きな波を作る。

 ……すごい。
 
 ふと、ひときわ大きくライトを振って盛り上がってる二人組が目にはいった。
 大男と黒髪と金髪の……って。
 魔王様とベリル王子……じゃない、ベリルだよね、あれって。

 ぷ。
 まるで張り合うように身を乗り出してるんだけど。
 子供みたい。

 ――夢のような不思議な時間。

 なんだか色々な事があるけど。
 私やっぱり、この世界が大好きだ。


**********


 一瞬。
 ほんの一瞬だけ。

 世界が真っ暗になった気がした。

「……え、なに?」

 目の前現れたのは、制服姿のボーイッシュな少女。
 口元を押さえてびっくりした表情をしている。

「……リコ?」
「え?」
「うそ……リコ……やっぱりリコだぁ!」

 彼女はすごい勢いで抱きついてきた。
 受け止められずに、おもわず後ろに倒れてしまう。

 これは夢?

 でも……。
 でも……。
 すごく痛いんだけど!!

 それに、抱きついている親友ヒナちゃんの体温と涙のぬくもりを感じるし。

 なにこれ。
 どうなってるの?

「リコちゃん……いままでどこに……それにその恰好……」

 前世の友達の一人が、おそるおそる声をかけてきた。

 え、恰好って?
 ヒナちゃんに抱きつかれたまま、少しだけ両手を広げて自分の姿を確認する。

 アニメにでてくるような、なんちゃって姫騎士コスプレのような衣装。
 腰には聖剣がさげられている。

 うん、コンサートの衣装だよね。
 さっきまで歌ってたんだし、別におかしくは……。

 ――て。
 ――あれ?

 あらめて周囲をみて、呆然とする。

 規則的に並べられた椅子と机。
 私を取り囲んでいる見覚えのある制服を着た生徒たち。
  
 ……間違いないよね。
 ……ここって……学校の教室だ……。  

「水沢さん……光の中から出現したよね」
「なんだったんだ、今の……」
「すげぇ、映画みたいだ……」

 ざわめきがどんどん大きくなる。

「静かにしなさい。みんな席に戻って!」

 担任の先生の大きな声が教室に響き渡る。 

「あなた本当に……水沢さん…よね?」
「は。はい」

 学校で一番若い春ちゃん先生は、大きく深呼吸すると心配そうな瞳で見つめてきた。

「どこかケガをしたりしてないわよね?」 
「今、ヒナちゃんに押し倒されておしりが痛いです」
 
「そう。まず先生と職員室にいきましょう。中村さん、水沢さんから離れて」
「やだ! もう絶対リコから離れない!」

 ヒ、ヒナちゃん。
 そんなに強く抱きしめられると……。
 
「ヒナちゃん、ギブ……」
「ほら、離してあげて。水沢さん苦しがってるでしょ?」

 先生の言葉で、ヒナちゃんがぱっと手を離す。

「さ、行きましょう。とりあえず、事情を聞かせてね」

 私は先生に手を引かれて、学校の廊下を歩いていく。
 
 ……姫騎士みたいなコスプレ衣装で!

「あれ……水沢さん……ウソ……?」
「行方不明だったはずじゃ……それにあの衣装……」
「噂通り……異世界にいってたんじゃ……」

 なんだかすごく注目されてるのがわかる。
 それはそうだよね。

 どう考えても、ものすごく浮いてるもん、私。


 それより、なんなのこの状況。
 いきなりの展開で、頭がついていかない。

 頬をつねってみると……やっぱり痛い。

「……水沢さん?」
「あ、いえ。なんでもないです」

 どうしよう。
 いったい何があったの?
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