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3.最強の侍女
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「カトリーヌ……辛い役目を押し付けてすまない……」
お父様の目に、隈が目立ちます。きっと時戻しの魔法を教えるか教えないかで散々悩まれたのでしょう。
お母様と秘密のお話をしてから1週間。わたくしは、あと3日で国を出ます。それから1年間王妃教育を行い、結婚する予定となっておりますわ。
「お父様、わたくしは大丈夫ですわ。これも王女の務めですもの」
「……すまない。せめてカトリーヌを守る為に、最強の護衛を用意した」
「お久しぶりです。カトリーヌ姫」
騎士の礼をして、ピクリとも動かない彼の名はリュカ。幼い頃から知っています。とても真面目な騎士です。
「楽にしてちょうだい」
動きません。わたくしがお父様に目配せをして、お父様が顔を上げるように言うとようやく顔を上げました。久しぶりに会いましたが、ますます精悍な顔つきになって参りましたわね。
「話は聞いた。カトリーヌを守ってくれ」
「承知しました。命に代えてもカトリーヌ姫を生涯お守り致します」
「生涯?! お父様、まさかリュカをずっとわたくしに付けるおつもりですか?!」
「そのつもりだ」
「そんなの無理ですわ! わたくしが嫁ぐ時に男性の護衛を連れて行くなんて不可能です。連れて行けるのは侍女だけ。そういう取り決めですもの。今はまだ結婚準備ですから、男性の護衛が居ても許されるでしょうが、結婚したら無理ですわ。それに、リュカは優秀な騎士です。身体を鍛えたり国を守ったり……わたくしに付けるのは勿体ないですわ」
「ご安心下さいカトリーヌ姫。俺は侍女になれます」
いや……何を言っているの?
リュカは身長は190センチはありますし、筋肉隆々です。侍女に化けるなど不可能ですわ。
ところが、リュカが指をパチリと鳴らすとみるみる身体が縮まり可愛らしい侍女になりました。服まで変わるのですか?! これは、何ですの?!
「リュカ……?」
「いいえ、侍女のルカでございます」
声まで変わるんですの?!
「お父様、これは何ですか? リュカは何処に行ってしまったのですか?!」
「落ち着きなさい。リュカはここに居る」
「いやどう見ても可愛らしい侍女ですわよね。リュカだと分かっておりますけど、頭がついていきませんわ。それに、この魔法は何ですの? 土魔法の応用ですか? でも、身体が大きくなるならともかく、小さくなるなんて聞いたことありませんし……」
まさか、リュカも王家の血を引いているのでしょうか?
「カトリーヌ、魔法は4属性だけではない」
やはり、そうですか。そういえばリュカの曽祖母が王族だったような……。
「そうなのですか?」
お父様は、わたくしにどこまで伝えるつもりなのでしょうか。初めて聞いたという顔をしませんと。嘘は良くありません。見破られた時に困りますもの。
「うむ。王家の血を引くものは、特殊な魔法が使えるのだ。ロドラ家は過去に王妹の子どもが嫁いだから、以降の血族は特殊な魔法を使えるのだ」
「それが、性別を反転させる魔法なのですか?」
「皆、バラバラなのだ。リュカは自分のみ性転換の魔法が使える」
「他にはどのような魔法があるのですか? わたくしはどんな魔法が使えますの?」
「カトリーヌにも特殊な魔法の力があるが、今は教えられぬ。他にも、身体強化や鑑定などがある。瞬間記憶や転移といった強力なものもあるぞ」
「転移ですか……憧れますわね。そしたら結婚しても逃げられますのに。つまり、様々な魔法があるのですね。鑑定とやらでどのような魔法が使えるか分かるということですか?」
「そうだ。鑑定が使える者は現在では20名程度おる。その為、王家の血が僅かでも入っている者は産まれたら必ず鑑定を行うようにしている。鑑定の結果は親にしか知らされない。本人に告知するか決めるのは親だ。中には、生涯知らぬまま死んだ者もおる」
「なるほど。わたくしの魔法は告知出来ぬ程危険な力なのですか?」
「……そうではない。だが、どうしても今は伝えられぬ……すまぬ」
「謝らないで下さいまし。お父様が言えないと決めたのなら、きっと大事な事なのでょう。とにかく、鑑定やリュカの性転換などは親から存在を教えて貰わないと使えないのですね?」
「……ああ、そうだ」
お父様、そんなに苦しそうなお顔をなさらないで下さいまし。わたくし、もう知ってしまいましたわ。
思わずそう言いたかった、ここに居るのはリュカとお父様だけ、リュカは信用出来るから言ってしまおうかとも思った。でも、きっとお母様が責められる。なら、わたくしの中だけに留めておけば良いわ。
お父様の目に、隈が目立ちます。きっと時戻しの魔法を教えるか教えないかで散々悩まれたのでしょう。
お母様と秘密のお話をしてから1週間。わたくしは、あと3日で国を出ます。それから1年間王妃教育を行い、結婚する予定となっておりますわ。
「お父様、わたくしは大丈夫ですわ。これも王女の務めですもの」
「……すまない。せめてカトリーヌを守る為に、最強の護衛を用意した」
「お久しぶりです。カトリーヌ姫」
騎士の礼をして、ピクリとも動かない彼の名はリュカ。幼い頃から知っています。とても真面目な騎士です。
「楽にしてちょうだい」
動きません。わたくしがお父様に目配せをして、お父様が顔を上げるように言うとようやく顔を上げました。久しぶりに会いましたが、ますます精悍な顔つきになって参りましたわね。
「話は聞いた。カトリーヌを守ってくれ」
「承知しました。命に代えてもカトリーヌ姫を生涯お守り致します」
「生涯?! お父様、まさかリュカをずっとわたくしに付けるおつもりですか?!」
「そのつもりだ」
「そんなの無理ですわ! わたくしが嫁ぐ時に男性の護衛を連れて行くなんて不可能です。連れて行けるのは侍女だけ。そういう取り決めですもの。今はまだ結婚準備ですから、男性の護衛が居ても許されるでしょうが、結婚したら無理ですわ。それに、リュカは優秀な騎士です。身体を鍛えたり国を守ったり……わたくしに付けるのは勿体ないですわ」
「ご安心下さいカトリーヌ姫。俺は侍女になれます」
いや……何を言っているの?
リュカは身長は190センチはありますし、筋肉隆々です。侍女に化けるなど不可能ですわ。
ところが、リュカが指をパチリと鳴らすとみるみる身体が縮まり可愛らしい侍女になりました。服まで変わるのですか?! これは、何ですの?!
「リュカ……?」
「いいえ、侍女のルカでございます」
声まで変わるんですの?!
「お父様、これは何ですか? リュカは何処に行ってしまったのですか?!」
「落ち着きなさい。リュカはここに居る」
「いやどう見ても可愛らしい侍女ですわよね。リュカだと分かっておりますけど、頭がついていきませんわ。それに、この魔法は何ですの? 土魔法の応用ですか? でも、身体が大きくなるならともかく、小さくなるなんて聞いたことありませんし……」
まさか、リュカも王家の血を引いているのでしょうか?
「カトリーヌ、魔法は4属性だけではない」
やはり、そうですか。そういえばリュカの曽祖母が王族だったような……。
「そうなのですか?」
お父様は、わたくしにどこまで伝えるつもりなのでしょうか。初めて聞いたという顔をしませんと。嘘は良くありません。見破られた時に困りますもの。
「うむ。王家の血を引くものは、特殊な魔法が使えるのだ。ロドラ家は過去に王妹の子どもが嫁いだから、以降の血族は特殊な魔法を使えるのだ」
「それが、性別を反転させる魔法なのですか?」
「皆、バラバラなのだ。リュカは自分のみ性転換の魔法が使える」
「他にはどのような魔法があるのですか? わたくしはどんな魔法が使えますの?」
「カトリーヌにも特殊な魔法の力があるが、今は教えられぬ。他にも、身体強化や鑑定などがある。瞬間記憶や転移といった強力なものもあるぞ」
「転移ですか……憧れますわね。そしたら結婚しても逃げられますのに。つまり、様々な魔法があるのですね。鑑定とやらでどのような魔法が使えるか分かるということですか?」
「そうだ。鑑定が使える者は現在では20名程度おる。その為、王家の血が僅かでも入っている者は産まれたら必ず鑑定を行うようにしている。鑑定の結果は親にしか知らされない。本人に告知するか決めるのは親だ。中には、生涯知らぬまま死んだ者もおる」
「なるほど。わたくしの魔法は告知出来ぬ程危険な力なのですか?」
「……そうではない。だが、どうしても今は伝えられぬ……すまぬ」
「謝らないで下さいまし。お父様が言えないと決めたのなら、きっと大事な事なのでょう。とにかく、鑑定やリュカの性転換などは親から存在を教えて貰わないと使えないのですね?」
「……ああ、そうだ」
お父様、そんなに苦しそうなお顔をなさらないで下さいまし。わたくし、もう知ってしまいましたわ。
思わずそう言いたかった、ここに居るのはリュカとお父様だけ、リュカは信用出来るから言ってしまおうかとも思った。でも、きっとお母様が責められる。なら、わたくしの中だけに留めておけば良いわ。
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