時を戻して、今度こそ好きな人と幸せになります

③カドゥール国に行く前に3

クリストフ様は魅了魔法を持っていました。ルイーズがクリストフ様を魅了した後、もしクリストフ様がルイーズに魅了魔法をかけていたら……。

ルイーズの両親は、使用人をずいぶん虐げていたそうです。だから、証拠も簡単に集まりました。

ルイーズ自身は何もしていなくても、使用人達を虐げる両親を見ていたルイーズが、魅了されたクリストフ様に残虐な事を吹き込まれたら、あっさり受け入れるのではないでしょうか。

魅了されても、本人が出来る事しかしない。でも、残酷な事をしてはいけない。したくない。そういった価値観がそもそもなければ……幼い子どもを暗殺者に仕立てるように、価値観を塗り替える事が可能なのではないでしょうか。お兄様達は魔法がかかっていてもわたくしに少し冷たくなった程度で危害を加えられたりはしなかったですけど、ルイーズはまるで子どものようでしたもの。

「カティも気が付いたか。過去のクリストフも、自分が魅了魔法を使えるって知ってたんじゃないかと思う。で、ルイーズ様に魅了魔法をかけたんじゃねぇかな。魅了をかけたのは、どっちが先かは分かんねえけど……多分ルイーズ様が先だろうな」

「そうでしょうね。ルイーズの両親は使用人を虐げていた。そんな環境で育っていれば残酷な事が嫌だとか怖いとか、そんな当たり前の事を考える機会がなかったのかもしれないわね」

「だよな。クリストフは、魅了に時間制限がなければカティを魅了しようと思ったかもしれないって言ってたから、魔法で惚れたルイーズ様に魅了魔法をかけてもおかしくねぇ」

「ルイーズがクリストフ様に魅了を使ったのは間違いないわよね？」

「ああ。先に使ったのはルイーズ様だろ。ルイーズ様はクリストフの好みじゃねぇからな。あの怠け者のルイーズ様が訓練をするとは思えないから、クリストフもルイーズ様を魅了したんだと思うぜ。今のルイーズ様はナイフなんて触った事すらないそうだ。けど、あの時は躊躇いなくカティの首にナイフを当ててた。あの動きは訓練しないと出来ない」

「ややこしすぎるわ。つまり、ルイーズがクリストフ様を魅了して、クリストフ様がルイーズを魅了したって事？　で、クリストフ様とルイーズがお互い影響しあって、残虐で我儘な人が2人出来上がった……とか？」

「多分そんな感じじゃねぇかなー。クリストフが魅了を使えるってどこで知ったかは分からねぇけど、カドゥール国に鑑定持ちが居る可能性が高いと思ってんだけど、じゃあその鑑定持ちは誰に鑑定してもらったんだって考えると、どーしても辻褄が合わねえんだよな」

「鑑定を持っていても、教えて貰えないと使えないものね。もしカドゥール国に鑑定持ちが居るなんて聞いた事ないわ。王妃教育では習わなかったし、特殊な魔法を使えそうな人は誰も居なかった」

「単純にカティに隠してた可能性もあるけど、面倒な仕事はぜんぶカティに押し付けるって言ってなんでも教えてたし、ルイーズ様が来てからは国王も王妃も仕事をしなくなってた」

「そういえばそうだったわね」

「だからきっと、カティが知らないって事はカドゥール国では特殊魔法の存在は知られていない。クリストフみたいに、本当は所持していても知らない人ばかりだと思う。少なくとも国は知らないだろう」

「そうなると、可能性が高いのはローランかしら。ローランがクリストフ様に魅了魔法を持っていると教えたんじゃない」

「ローランが？」

「ええ、過去ではローランはクリストフ様を慕っていたの。だから、ルイーズの魅了が良く効いたんじゃないかと思うの」

「ローランは魅了されても国の秘密を他国の王族に言うような奴じゃねえぞ」

「分かってるわ。今のローランはそうよ。でも、過去では違う。今のローランはわたくしが知っている過去のローランよりもかなりしっかりしているわ。元々優秀だったけど、精神的にはまだ子どもだったのに過去に戻ってから変わったわ。間違いなくリュカの影響よ」

「俺？」

「ええ、お兄様も以前よりお勉強をなさっているわ。リュカに負けないようにってね」

「マジか……あれ以上勉強してどうすんだよ。俺も負けないようにしねぇと」

「それよ。お兄様も、ローランも、シリルもリュカを意識してる。リュカに負けないようにってシリルは家庭教師を増やしたそうよ」

「シリルはまだ11歳だぞ。勘弁してくれよ……本気を出した王族は怖えよ」

「あら、リュカだってもう王族よ。わたくしに婿入りしたのだから」

「そうだったな、未だに信じられねぇけど毎日カティと一緒に居られるから夢じゃねぇんだよな」

「そうよ。わたくし最高に幸せだわ」

「俺もだ」

忙しい日々だけど、リュカと話すと癒される。とても幸せだわ。