4 / 5
4.過去を悔いる【祖父視点】
しおりを挟む
「お父様、ごめんなさい……助けて……」
嫁いだ娘から手紙が来た時、何故ワシはもっと調べなかったのだろう。
金が足りないのだろうと勝手に判断して、支援金を増やして済ませたのは何故だ。
答えは、ワシが愚かだったからだ。
我々が貴族として特権を享受しているのは、民を守るためだった筈なのに。
いつの間にか、民よりも自分たちの身分を守ることばかり考えてしまっていた。
あの頃のワシは、味方がおらず疑心暗鬼だった。
ワシの目の届かないところに、大事な娘を追いやってしまった。
娘の妊娠がバレないように。孫の出自がバレないように。そのことばかり考えていた。だから娘の手紙読んでも深く考えず、金で解決すれば良いと思ってしまった。
息子が……息子になった彼があの家に侵入して調査をして、命がけでワシに進言してくれなければ、大事な娘と孫は……。
「お父様、また泣いてるわ。どうしたの?」
愛しい娘が、ワシの涙を拭いてくれた。
事故に見せかけて死んだ事にして、ようやく娘を連れ戻せた。孫ももうすぐ息子と共に戻って来る。
ワシの身内は、娘と孫と新たに加わった息子だけ。孫は亡き妻に似て、賢くしたたかな子に育った。
「全て……全てに後悔している……」
「もう、いつまでも泣かないで。もうすぐルリィを連れてあの人が帰って来るわ。そしたら、みんな一緒に暮らしましょう」
「いいのか……ワシは……」
「いいの。ルリィを産めてとても幸せよ。でも、お父様に認めてもらう前に既成事実を作るべきではなかったわ」
「それに関しては、その通りだ。だが、そのくらい追い詰められていたのだろう。年頃なのに婚約は決まらず、周りに置いていかれ焦っていたのだろう?」
「ううん。わたくしは幼い頃からずっと彼が好きだったの。でも、身分が違うから諦めていた。だけど彼は諦めてなくて、お父様に認められる為に出世しようとしてくれたわ。だけど待てなくて……貴族としての価値が無くなれば、彼と結ばれると思ってしまった。彼を説得して、ルリィを授かった時は嬉しかった。けど、間違ってた。わたくしは政治を分かっていなかった」
「本当は結婚を認めたかったんだ。けど、無理だったんだ。すまない……」
「良いの。お父様の気持ちは分かってるから。彼に退職金まで出してくれたんですってね。おかげで、退職金を増やして彼がわたくしを訪ねて来てくれた。彼が来た後は毒を盛られずに済んだわ」
「毒なんて……許せない……」
「あの男はどのみち終わりよ。お父様からのお金がなくなれば破綻するわ。ルリィの幸せのためにも放置しましょ」
彼がいなければ、娘は生きていなかった。
報告を受けて、すぐに娘達を連れ戻そうとしたが彼に止められた。娘や孫を人質に取られたらたまらない。特にルリィは、あの男を慕っているようだからと。私は彼と相談して、娘と孫の受け入れ体制を整え、あの男から娘と孫を守る為に少しずつ使用人を入れ替えた。支援金を増やすと彼の予想通り、あの男は娘と孫に媚を売り始め以前よりも大事にするようになった。
心配だからと、彼は密かに屋敷に侵入して娘と孫を守ってくれた。
「ルリィは幸せになって欲しい。もう二度と、間違えたりしたくない……」
「お父様は、わたくしを事故にみせかけて殺すことも、閉じ込めておくことも出来たのにそうしなかった。どうして?」
「大事な娘にそんなことできるか! 遠くに嫁がせたのも……ワシのためでもあるが……噂話の餌食にしたくなかった。遠くの地で、幸せになって欲しかったんだ……」
「でしょ? お父様が毎月支援金を送ってあの男に圧をかけてくれたから、わたくし達は無事生きられたのよ。毒はすぐ効くものじゃなかった。ちょっとくらい大丈夫だったの。それにね、あの人が助けに来てくれた」
「だが……家に帰らずあんな女と……あんなクズに大事な娘を……」
「ま、そこは仕方ないわ。あの男にとって、わたくしは汚い妻だったんでしょうから。お父様はちゃんと話をして、受け入れたのはあの男なのに、金を餌に汚いものを押し付けられたと愚痴っているのを聞いちゃったのよね」
あっけらかんと笑う娘。
彼が訪れてくれなければ、今頃こんなふうに笑ってくれなかった筈だ。
一生かけて償うつもりだ。だから、ずっと一緒にいて欲しい。
嫁いだ娘から手紙が来た時、何故ワシはもっと調べなかったのだろう。
金が足りないのだろうと勝手に判断して、支援金を増やして済ませたのは何故だ。
答えは、ワシが愚かだったからだ。
我々が貴族として特権を享受しているのは、民を守るためだった筈なのに。
いつの間にか、民よりも自分たちの身分を守ることばかり考えてしまっていた。
あの頃のワシは、味方がおらず疑心暗鬼だった。
ワシの目の届かないところに、大事な娘を追いやってしまった。
娘の妊娠がバレないように。孫の出自がバレないように。そのことばかり考えていた。だから娘の手紙読んでも深く考えず、金で解決すれば良いと思ってしまった。
息子が……息子になった彼があの家に侵入して調査をして、命がけでワシに進言してくれなければ、大事な娘と孫は……。
「お父様、また泣いてるわ。どうしたの?」
愛しい娘が、ワシの涙を拭いてくれた。
事故に見せかけて死んだ事にして、ようやく娘を連れ戻せた。孫ももうすぐ息子と共に戻って来る。
ワシの身内は、娘と孫と新たに加わった息子だけ。孫は亡き妻に似て、賢くしたたかな子に育った。
「全て……全てに後悔している……」
「もう、いつまでも泣かないで。もうすぐルリィを連れてあの人が帰って来るわ。そしたら、みんな一緒に暮らしましょう」
「いいのか……ワシは……」
「いいの。ルリィを産めてとても幸せよ。でも、お父様に認めてもらう前に既成事実を作るべきではなかったわ」
「それに関しては、その通りだ。だが、そのくらい追い詰められていたのだろう。年頃なのに婚約は決まらず、周りに置いていかれ焦っていたのだろう?」
「ううん。わたくしは幼い頃からずっと彼が好きだったの。でも、身分が違うから諦めていた。だけど彼は諦めてなくて、お父様に認められる為に出世しようとしてくれたわ。だけど待てなくて……貴族としての価値が無くなれば、彼と結ばれると思ってしまった。彼を説得して、ルリィを授かった時は嬉しかった。けど、間違ってた。わたくしは政治を分かっていなかった」
「本当は結婚を認めたかったんだ。けど、無理だったんだ。すまない……」
「良いの。お父様の気持ちは分かってるから。彼に退職金まで出してくれたんですってね。おかげで、退職金を増やして彼がわたくしを訪ねて来てくれた。彼が来た後は毒を盛られずに済んだわ」
「毒なんて……許せない……」
「あの男はどのみち終わりよ。お父様からのお金がなくなれば破綻するわ。ルリィの幸せのためにも放置しましょ」
彼がいなければ、娘は生きていなかった。
報告を受けて、すぐに娘達を連れ戻そうとしたが彼に止められた。娘や孫を人質に取られたらたまらない。特にルリィは、あの男を慕っているようだからと。私は彼と相談して、娘と孫の受け入れ体制を整え、あの男から娘と孫を守る為に少しずつ使用人を入れ替えた。支援金を増やすと彼の予想通り、あの男は娘と孫に媚を売り始め以前よりも大事にするようになった。
心配だからと、彼は密かに屋敷に侵入して娘と孫を守ってくれた。
「ルリィは幸せになって欲しい。もう二度と、間違えたりしたくない……」
「お父様は、わたくしを事故にみせかけて殺すことも、閉じ込めておくことも出来たのにそうしなかった。どうして?」
「大事な娘にそんなことできるか! 遠くに嫁がせたのも……ワシのためでもあるが……噂話の餌食にしたくなかった。遠くの地で、幸せになって欲しかったんだ……」
「でしょ? お父様が毎月支援金を送ってあの男に圧をかけてくれたから、わたくし達は無事生きられたのよ。毒はすぐ効くものじゃなかった。ちょっとくらい大丈夫だったの。それにね、あの人が助けに来てくれた」
「だが……家に帰らずあんな女と……あんなクズに大事な娘を……」
「ま、そこは仕方ないわ。あの男にとって、わたくしは汚い妻だったんでしょうから。お父様はちゃんと話をして、受け入れたのはあの男なのに、金を餌に汚いものを押し付けられたと愚痴っているのを聞いちゃったのよね」
あっけらかんと笑う娘。
彼が訪れてくれなければ、今頃こんなふうに笑ってくれなかった筈だ。
一生かけて償うつもりだ。だから、ずっと一緒にいて欲しい。
1,603
あなたにおすすめの小説
平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした
カレイ
恋愛
「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」
それが両親の口癖でした。
ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。
ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。
ですから私決めました!
王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。
拝啓、婚約破棄して従妹と結婚をなされたかつての婚約者様へ、私が豚だったのはもう一年も前の事ですよ?
北城らんまる
恋愛
ランドム子爵家のご令嬢ロゼッティは、ある日婚約破棄されてしまう。それはロゼッティ自身が地味で、不細工で、太っていたから。彼は新しい婚約者として、叔父の娘であるノエルと結婚すると言い始めた。
ロゼッティはこれを機に、叔父家族に乗っ取られてしまったランドム家を出ることを決意する。
豚と呼ばれるほど太っていたのは一年も前の話。かつて交流のあった侯爵の家に温かく迎えられ、ロゼッティは幸せに暮らす。
一方、婚約者や叔父家族は破滅へと向かっていた──
※なろうにも投稿済
【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います
菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。
その隣には見知らぬ女性が立っていた。
二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。
両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。
メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。
数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。
彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。
※ハッピーエンド&純愛
他サイトでも掲載しております。
断罪された公爵令嬢に手を差し伸べたのは、私の婚約者でした
カレイ
恋愛
子爵令嬢に陥れられ第二王子から婚約破棄を告げられたアンジェリカ公爵令嬢。第二王子が断罪しようとするも、証拠を突きつけて見事彼女の冤罪を晴らす男が現れた。男は公爵令嬢に跪き……
「この機会絶対に逃しません。ずっと前から貴方をお慕いしていましたんです。私と婚約して下さい!」
ええっ!あなた私の婚約者ですよね!?
【完結】勘違いしないでくれ!君は(仮)だから。
山葵
恋愛
「父上が婚約者を決めると言うから、咄嗟にクリスと結婚したい!と言ったんだ。ああ勘違いしないでくれ!君は(仮)だ。(仮)の婚約者だから本気にしないでくれ。学園を卒業するまでには僕は愛する人を見付けるつもりだよ」
そう笑顔で私に言ったのは第5王子のフィリップ様だ。
末っ子なので兄王子4人と姉王女に可愛がられ甘えん坊の駄目王子に育った。
【完結】婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜
平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。
だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。
流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!?
魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。
そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…?
完結済全6話
2025.10〜連載版構想書き溜め中
2025.12 〜現時点10万字越え確定
2026.1後半〜連載版投稿開始予定
婚約者を追いかけるのはやめました
カレイ
恋愛
公爵令嬢クレアは婚約者に振り向いて欲しかった。だから頑張って可愛くなれるように努力した。
しかし、きつい縦巻きロール、ゴリゴリに巻いた髪、匂いの強い香水、婚約者に愛されたいがためにやったことは、全て侍女たちが嘘をついてクロアにやらせていることだった。
でも前世の記憶を取り戻した今は違う。髪もメイクもそのままで十分。今さら手のひら返しをしてきた婚約者にももう興味ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる