婚約破棄された王女は暗殺者に攫われる

編端みどり

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61.冒険者は、別れる

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「さて、これで依頼は終了ですね」

無事に隣国への大使の役目を終え、クリステルとジル、護衛として雇われたレミィ達はクリステルの部屋で最後の別れを惜しんでいた。

ジルが、使用人も退出させた為部屋に居るのはレミィ達とジルだけだ。

「ありがとうございました」

「たっぷり報酬は頂きましたし、約束通り国王様とお話しさせて頂けました。こちらこそありがとうございます。クリステル王女とジル王子の依頼なら、いつでも歓迎しますよ」

国王と話して、レミィは様々な疑問をぶつけた。国王は救援が間に合わなかった事をレミィに詫びた。他にも、レミィの疑問に全て答えた国王は娘を守ってくれた事に礼を言った。

ゴールドランクの冒険者ならば国王にも謁見出来るが、護衛も付けずに国王と会話が認められたのは、今回の依頼の報酬だった。

レミィが満足した事で、彼らは今後も冒険者を続けていく。評判は鰻登りで、依頼料も跳ね上がっているという。

「……その、ここには誰も居ないから……」

クリステルがモジモジとレミィ達を見つめると、レミィは堪らずクリステルを抱きしめた。

「クリスさん、敵は何処に居るか分かりませんからね! ちゃんとジルさんの側に居るんですよ!」

「毒はもうほぼ判別出来るよね? 侍女やメイドが出したお茶は一気に飲んじゃダメだからね! お菓子も、匂いとかちゃんと確認するんだよ! 解毒薬になる薬草は定期的に届けてあげるから、おかしいと思ったらすぐ使ってね! 料理は問題ないと思うけど、運ぶ人が何か盛ることもあるんだから、ちゃんと毒見をするんだよ!」

「武器は寝る時も身に付けるのを忘れないで! 王女を狙うヤツなんて死んで当然なんだから、毒を塗るのも忘れちゃダメよ!」

「お前ら、まるで母親みてぇだな」

「だって! 心配なんだもん!」

「わたくし、こんな風に心配された経験がほとんどありませんから嬉しいですわ。また、会えますか?」

「「「もちろん!」」」

「俺達はクリステル王女の依頼は最優先ですからね」

「オレの依頼ならどうだ?」

「ジルさんの依頼も最優先ですよ。でねーと命が危ねぇんで」

「心外だな」

「ジルさんが俺達に依頼するなんて、ほぼクリスさんの為に決まってんだから、断るって事は死を意味するじゃねぇっすか」

「おお、だいぶオレの事を分かってきたな」

「ういっす」

「そろそろ時間切れですね。たかが冒険者が王女様に抱きついているのを見られたらまずいです」

「みなさん、頼りなかった私に色々教えて下さってありがとうございました。もう、きっと冒険者は出来ないと思いますけど、とても楽しかったです」

「私は、ガウスと会って、ファルとルカと仲間になって幸せでした。でも、ずっと心に何かが突き刺さったまま生きていたんです。クリスさんのおかげでそれが無くなりました。私こそ、ありがとうございます。クリスさんとジルさんに会えた私は、幸運です」

「王女様とお友達になれるとは思わなかったよ。クリスさんなら、きっと素敵な王女様になるだろうね。でも、無理しちゃダメだよ? どうしても嫌になったら、ジルさんに言えば連れ出してくれるだろうから」

「そうそう。あんな強い人滅多に居ないんだから、安心してれば良いよ。正直、クリスさんもかなり強いしね。でも、それは出来るだけ隠しておくんだよ。切り札はギリギリまで切らない方が良いから」

「はい! 行き帰りに教えて頂いた通り、たくさん武器を仕込みました! 分からないようにこっそり攻撃する方法もいっぱい習ったので、できるだけそれで対処しますね! 今までは着替えも自分でしてましたけど、きっと侍女がつくでしょうから、バレないようにこっそり武器を仕込む方法をたくさん教えて頂けて助かりました」

「旅で国王陛下が用意したクリスさんの髪飾りやアクセサリーも、バッチリ痺れ薬が仕込んでありますからね。クリスさんとジルさんは分かってるから触らないでしょうし、普通に仕舞うだけならけっして触れない場所ですから、痺れている侍女や使用人は信用出来ませんからね。最初に付く使用人は、うまくやれば忠実な味方になってくれます。ただし……言いたくありませんが、王子の手の者の可能性もあります。しばらくは警戒して下さい。私達は冒険者なので、正規の護衛を無視してクリスさんに付いている訳にはいきませんから」

「だなぁ。こうやって王女様と話してるだけで睨まれてるからな。ま、一応俺達はゴールドランクだから、表立っては言われないのは助かるな」

「シルバーのままだったら、護衛すらさせて貰えなかっただろうね」

「そうね。ランクアップして良かったわ」

「また会おうね!」

「はい! また!」

「クリス、まだ少し時間が取れる。オレはちょっとガウスと話があるから、もうちょっとゆっくりしてな」

「本当?! ありがとうジル!」

ジルは、ガウスを連れて部屋を出た。護衛の騎士が訝しんでいたが、ジルがひと睨みすると姿勢を正して真っ直ぐ前を向く。

「ガウス、これは城を出てから女性陣に渡してくれ」

「……うぃ、りょーかいです」

「クリスは、身を守る術を知らないから信用出来るガウス達に護衛して貰って助かった」

「光栄です。おふたりなら、いつでも仕事をうけますよ」

ふたりの会話を、ジルに追い出された侍女とメイドが聞いていた。
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