妹と婚約者の逢瀬を見てから一週間経ちました

編端みどり

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書籍発売御礼 エリザベスとイアンの出会い

1.リリアンとの出会い【エリザベス視点】

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わたくしは、エリザベス・ド・バルタチャ。十六歳でございます。デビュタントしたばかりで慣れておらず、未だに夜会に行くと緊張してしまいますわ。

わたくしは男爵家の長女ですから、十五歳にデビュタントを済ませておかないといけないのですが、我が家はあまりお金がなく……その上、両親はわたくしを嫌っておりますのでデビュタントの準備をして頂けませんでした。このままでは結婚相手が見つからないかもしれない……跡継ぎの弟に迷惑をかけたくないし、婚約者探しをしなくては。そう悩んでおりましたら、思いがけず格上の子爵家と婚約がまとまりました。

婚約者が出来てわたくしの世界は一変しました。時間はかかりましたがお義母様の助けをお借りして、お金を稼いでデビュタントを済ませたのが一カ月前の事でございました。弟にも、良い家庭教師の先生をお願いする事が出来ました。

デビュタントで大好きなケネス様とダンスを踊った時はとても幸せでした。

最近は、ケネス様やお義母様と一緒に夜会や茶会に行く事が増えました。全ての社交でケネス様とご一緒出来れば嬉しいのですが、半分程度しかご一緒出来ないのが寂しいです。ケネス様はお忙しい方ですから仕方ありませんわ。でも、お義母様はいつも一緒に社交をしてくださいます。たまに、今回のように途中で別れてしまう事もありますが、大抵は行き帰りの馬車で貴族の事や商売の事を厳しく教えて下さいます。

今日のパーティはケネス様がいらっしゃらないから少し退屈でした。お義母様と一緒に来たのですが、商談をするから先に一人で帰るようにと指示され、わたくしは一人になってしまいました。

まだ、社交に慣れておらず仲の良い方はおりません。少し寂しいですがお義母様の邪魔をしてはいけませんものね。だけど、来てまだ三十分も経っておりません。リンゼイ子爵家の馬車で来たので、帰りの馬車は自分で手配しないといけません。もう少し時間が経てば空いている馬車を捕まえられるかもしれませんが、今はまだ無理でしょう。馬を休ませないといけませんもの。

けど、このまま会場にいると、お義母様に見つかったら帰れと叱られてしまうかもしれません。

少し時間を潰そうとパーティ会場を出て、庭園を歩いていると、耳障りな女性の声が聞こえました。

「……だから! 貴女がお兄様の邪魔をするからでしょう!」

「そうよ! アンタ邪魔なのよ! なんで子どものくせにこんなとこにっ……」

気になって覗いてみると数人の令嬢が小さな少女を取り囲んでいます。少女のドレスは美しくこの場に映えるものですが、背がかなり低いのでおそらく未成年でしょう。あんな小さな子に寄ってたかって……!
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