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第一章

【ミクタ】明日までに

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「おい! お前んとこにマイス隠してねえか?!」

「ああ?! んなわけねーだろ! お前が隠してんじゃねえのかよ!」

ちっ……これで30件、マイスはどこにもいねぇ。欲深い奴らから当たっているがどこにもいねぇ。見落としたか……?

「マイス、どこに行きやがったんだ……?」

明日には、領主様が視察に来る。毎回新商品を出すミクタは優遇されていて、職人ギルドは税を減らして貰っている。だけど、視察の度に新商品を提案する事が条件だ。

今までは仕事上がりのマイスを捕まえて、メシでも奢れば新商品が出来ていた。まずい、調子に乗って一度に2つも3つも提案しねぇで、ストックしておけば良かった。

「明日までになんとか見つけねぇと」

免除されていた税金を払う金はねぇ。全部使っちまったからな。

くそっ……ちょっとは残しておけば良かったぜ。

「ダメです! どこにもマイスは居ません!」

「ちくしょう! 何処に居るんだよ?! 街から出てねぇのは間違いねぇだろ?!」

「マイスが大量に食料などを買っていたらしいんです! もしかして街にもう居ないのかも……」

「なんだと?! 詰所にもっかい問い合わせだ!!!」

…………………………

「何度聞かれても、マイスが外に出るのは見てないよ。台帳まで無理矢理見ただろう?」

「なんでだよ?! 居眠りでもしてたんじゃねーのか?!」

「馬鹿にしないで貰えるか? あまりに酷かったら領主様に報告するぞ」

やべえ、領主様に報告されちまったら新商品をマイスがぜんぶ手がけてた事がバレちまうかもしれねえ。新商品は、バラバラのヤツが作った事にしてあって、ミクタの職人はレベルが高いと思って貰えてるから、税を免除してもらってんのに。

「ちっ……」

ここにこれ以上いて怪しまれたらまずい。

くそっ! マイスは何処に居るんだよ?!
もう明日には領主様が来ちまう。

「こうなったら、自分達で新商品を開発するしかねぇ」

「……分かりました、しかし、どうやって開発しますか?」

全てマイスに任せてたから、俺は開発方法が分からねぇ。

「職人ギルドに所属している職人全員集めろ」

「今すぐですか?!」

「ああ、今すぐだ。来ねぇ奴は除名する」

「無茶ですよ?! 急に招集しても全員来ませんよ!」

「来ないなら除名って言えば来るだろ。とにかく明日の午後には領主様が来るんだ。それまでになんとかしねぇと。マイスを隠してる奴がいても、こんだけ大騒ぎすりゃあ連れてくるだろ」

「そ、そうですね! マイスが来れば良いんですから!」

そうだ、マイスは職人しか出来ねぇ筈だ。絶対どっかに居る。この街からは出てないんだから……。
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