腹黒公爵の狩りの時間

編端みどり

文字の大きさ
5 / 15

もうひとりの兄

しおりを挟む
「今日の打ち合わせは、どうだった?」

「エミリー様はやはり優秀ですね。正確な事務作業に、斬新な発想。商会が大きくなるのは当然ですわね」

「我が家の代表は、マチルダがやるのか?」

「ええ! エミリー様からご指名頂けましたの! お兄様、これで我が領地も潤いますわ! ですが5年限定ですので、そのあとの事もきちんと考えませんと。おそらく、デヴィッド様の商会にほとんどのものが引き継がれますわ。お兄様も、出来るだけデヴィッド様の商会と取引をして下さいませ。今のうちに、うちの領地の良さをさりげなくアピール致しますわよ」

「マチルダ、お前はしっかりしているなあ」

「お褒め頂き嬉しいですわ」

「……ところで、マチルダ」

「なんですか?」

「マチルダは、好きな人などは居ないのか?」

「……いません、わねぇ。どなたかから婚約の申し込みでもありましたか?」

「っいや、ない、ないぞ!」

「そんなに何回も言わなくてもよろしいですわ……お兄様は婚約も決まりましたものね。お優しそうな方で良かったわ」

「そうだな。マチルダも良い人がいると良いのだが。マチルダはどんな方が好みだい?」

「そうですわねぇ、エミリー様みたいにしっかりしてる方が良いですわ」

「……っそうか、エミリー様みたいな方か」

「まぁ、なかなか居ませんわよね。あ、でもサイモン様は素敵な方でしたわ! まぁ、公爵家ですし、もうご婚約者などがいらっしゃると思いますけど」

「サイモン様の何処が良かったんだい?」

「嫌ですわ、好きと言う訳ではありませんの。ただ、ジェシカ様を追い詰めたりしたお姿は、腹黒くて素敵でしたわ」

「……お前の好みがわからないよ」

「そうですか? 貴族ですし多少は腹黒い方がうまく世の中を渡っていけるではありませんの。そう考えるとわたくしとエミリー様の好みは真逆ですわね」

「デヴィッド様は、誠実なお方だからな」

「誠実過ぎてハメられていてはお話になりませんわ」

「辛辣だな」

「おほほ、エミリー様のような方には、デヴィッド様はピッタリなんでしょうけどね。わたくしは違いますわ。お兄様、今日はデスクワークばかりで身体が鈍っておりますの。少しお付き合い下さいませんか?」

「手合わせかい? いいよ。ところでマチルダ」

「何ですの?」

「サイモン様の剣を、扇子で受け止めたとは本当かい?」

「……なぜご存知なんですか?!」

「その……ある人から聞いてね」

「ああ、そんなの噂になったらますます婚約申し込みなど来そうにありませんわ。お兄様、どうしましょう?」

「大丈夫、マチルダに政略結婚させる気はないから、気長にいけばいいよ」

「もう! そんな事仰るなら一生ここに居座りますわよ!」

「それはいいね。ずっと居ればいいよ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

嫌いなあいつの婚約者

みー
恋愛
朝目が覚めると、見たことのない世界にいて?! 嫌いな幼馴染みが婚約者になっている世界に来てしまった。 どうにかして婚約を破棄しようとするけれど……?

「幼馴染は、安心できる人で――独占する人でした」

だって、これも愛なの。
恋愛
幼い頃の無邪気な一言。 「お兄様みたいな人が好き」――その言葉を信じ続け、彼はずっと優しく隣にいてくれた。 エリナにとってレオンは、安心できる幼馴染。 いつも柔らかく笑い、困ったときには「無理しなくていい」と支えてくれる存在だった。 けれど、他の誰かの影が差し込んだ瞬間、彼の奥に潜む本音が溢れ出す。 「俺は譲らないよ。誰にも渡さない」 優しいだけじゃない。 安心と独占欲――その落差に揺さぶられて、エリナの胸は恋に気づいていく。 安心できる人が、唯一の人になるまで。 甘く切ない幼馴染ラブストーリー。

【完結】お嬢様だけがそれを知らない

春風由実
恋愛
公爵令嬢であり、王太子殿下の婚約者でもあるお嬢様には秘密があった。 しかしそれはあっという間に公然の秘密となっていて? それを知らないお嬢様は、日々あれこれと悩んでいる模様。 「この子たちと離れるくらいなら。いっそこの子たちを連れて国外に逃げ──」 王太子殿下、サプライズとか言っている場合ではなくなりました! 今すぐ、対応してください!今すぐです! ※ゆるゆると不定期更新予定です。 ※2022.2.22のスペシャルな猫の日にどうしても投稿したかっただけ。 ※カクヨムにも投稿しています。 世界中の猫が幸せでありますように。 にゃん。にゃんにゃん。にゃん。にゃんにゃん。にゃ~。

東雲の空を行け ~皇妃候補から外れた公爵令嬢の再生~

くる ひなた
恋愛
「あなたは皇妃となり、国母となるのよ」  幼い頃からそう母に言い聞かされて育ったロートリアス公爵家の令嬢ソフィリアは、自分こそが同い年の皇帝ルドヴィークの妻になるのだと信じて疑わなかった。父は長く皇帝家に仕える忠臣中の忠臣。皇帝の母の覚えもめでたく、彼女は名実ともに皇妃最有力候補だったのだ。  ところがその驕りによって、とある少女に対して暴挙に及んだことを理由に、ソフィリアは皇妃候補から外れることになる。  それから八年。母が敷いた軌道から外れて人生を見つめ直したソフィリアは、豪奢なドレスから質素な文官の制服に着替え、皇妃ではなく補佐官として皇帝ルドヴィークの側にいた。  上司と部下として、友人として、さらには密かな思いを互いに抱き始めた頃、隣国から退っ引きならない事情を抱えた公爵令嬢がやってくる。 「ルドヴィーク様、私と結婚してくださいませ」  彼女が執拗にルドヴィークに求婚し始めたことで、ソフィリアも彼との関係に変化を強いられることになっていく…… 『蔦王』より八年後を舞台に、元悪役令嬢ソフィリアと、皇帝家の三男坊である皇帝ルドヴィークの恋の行方を描きます。

王子、侍女となって妃を選ぶ

夏笆(なつは)
恋愛
ジャンル変更しました。 ラングゥエ王国唯一の王子であるシリルは、働くことが大嫌いで、王子として課される仕事は側近任せ、やがて迎える妃も働けと言わない女がいいと思っている体たらくぶり。 そんなシリルに、ある日母である王妃は、候補のなかから自分自身で妃を選んでいい、という信じられない提案をしてくる。 一生怠けていたい王子は、自分と同じ意識を持つ伯爵令嬢アリス ハッカーを選ぼうとするも、母王妃に条件を出される。 それは、母王妃の魔法によって侍女と化し、それぞれの妃候補の元へ行き、彼女らの本質を見極める、というものだった。 問答無用で美少女化させられる王子シリル。 更に、母王妃は、彼女らがシリルを騙している、と言うのだが、その真相とは一体。 本編完結済。 小説家になろうにも掲載しています。

あの、初夜の延期はできますか?

木嶋うめ香
恋愛
「申し訳ないが、延期をお願いできないだろうか。その、いつまでとは今はいえないのだが」 私シュテフイーナ・バウワーは今日ギュスターヴ・エリンケスと結婚し、シュテフイーナ・エリンケスになった。 結婚祝の宴を終え、侍女とメイド達に準備された私は、ベッドの端に座り緊張しつつ夫のギュスターヴが来るのを待っていた。 けれど、夜も更け体が冷え切っても夫は寝室には姿を見せず、明け方朝告げ鶏が鳴く頃に漸く現れたと思ったら、私の前に跪き、彼は泣きそうな顔でそう言ったのだ。 「私と夫婦になるつもりが無いから永久に延期するということですか? それとも何か理由があり延期するだけでしょうか?」  なぜこの人私に求婚したのだろう。  困惑と悲しみを隠し尋ねる。  婚約期間は三ヶ月と短かったが、それでも頻繁に会っていたし、会えない時は手紙や花束が送られてきた。  関係は良好だと感じていたのは、私だけだったのだろうか。 ボツネタ供養の短編です。 十話程度で終わります。

悪役令嬢に相応しいエンディング

無色
恋愛
 月の光のように美しく気高い、公爵令嬢ルナティア=ミューラー。  ある日彼女は卒業パーティーで、王子アイベックに国外追放を告げられる。  さらには平民上がりの令嬢ナージャと婚約を宣言した。  ナージャはルナティアの悪い評判をアイベックに吹聴し、彼女を貶めたのだ。  だが彼らは愚かにも知らなかった。  ルナティアには、ミューラー家には、貴族の令嬢たちしか知らない裏の顔があるということを。  そして、待ち受けるエンディングを。

【完結】あなたからの愛は望みません ~お願いしたのは契約結婚のはずでした~

Rohdea
恋愛
──この結婚は私からお願いした期間限定の契約結婚だったはずなのに!! ある日、伯爵令嬢のユイフェは1年だけの契約結婚を持ちかける。 その相手は、常に多くの令嬢から狙われ続けていた公爵令息ジョシュア。 「私と1年だけ結婚して? 愛は要らないから!」 「──は?」 この申し出はとある理由があっての事。 だから、私はあなたからの愛は要らないし、望まない。 だけど、どうしても1年だけ彼に肩書きだけでも自分の夫となって欲しかった。 (冷遇してくれても構わないわ!) しかし、そんなユイフェを待っていた結婚生活は……まさかの甘々!? これは演技? 本気? どっちなの!? ジョシュアに翻弄される事になるユイフェ…… ユイフェの目的とは? ジョシュアの思惑とは? そして、そんなすっかり誰も入り込めないラブラブ夫婦(?) な結婚生活を送っていた二人の前に邪魔者が───

処理中です...