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茶会
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「あらお兄様、今日はよろしくお願いしますね」
エミリーがすました顔で声をかけてくる。しかし私はマチルダ嬢から目が離せない。なんと美しいのだ。
「サイモン様、わたくしも一緒にエスコートしていただいてよろしいのですか?」
よろしいに決まっている。
「エミリー様! お返事がありません! やっぱり駄目なのではありませんか?!」
焦った表情も愛らしい。が、妹から黒いオーラを感じる。
「お兄様?」
「失礼、あまりに美しく見とれていた。エスコートは問題ないよ。よろしくお願いいたしますね」
「そ、そうですか。ではよろしくお願いします。エミリー様、ドレスはやっぱり色を何とかしたほうが……」
「問題ありませんわ、ね、お兄様?」
「うむ、問題ない」
「……おふたりがそう仰るなら構いませんけれど」
「それより、マチルダ様。わたくし、ちょっとデビィの予定の調査がありますの。少しだけ席を外しますので、お兄様とお話ししていて下さいな。お兄様、よろしいですわよね?」
「うむ、問題ない」
「何も今やらなくてもいいじゃありませんか……。まぁ、エミリー様ですし仕方ありませんけど」
「うむ、問題ない」
「お兄様?」
ハッとする。先ほどから同じセリフしか出てきていないぞ。いかん、まだ落ち着かない。エミリーが呆れた顔をしているのは気のせいか?
「お兄様、くれぐれもマチルダ様をよろしくお願いしますね! さ、早くここに座ってくださいまし」
「しっかりなさいまし」
小さな声でエミリーが叱咤してくれる。そうだ、可愛い妹にもこれ以上恥ずかしい姿は見せられん。
「では、少し私のお相手をお願いするよ。マチルダ嬢、よろしくね」
「は、はいっ。よろしくお願いします!」
ああ、なんと愛らしい。……いかん、腑抜けにならないようにせねば。
「マチルダ嬢は、普段は何をして過ごされているんだい?」
既に調査済みだが、それを急に言ったら引かれてしまうから、まずはできる話題を増やさないと。
「最近はエミリー様のお仕事をする事が多いですが、以前はお兄様と鍛錬する事も多かったですね」
「私の剣を止めた手腕は見事だったね」
「……その節は、はしたない真似をして申し訳ありませんわ」
恥ずかしいそうにしているマチルダ嬢は、ますます美しい。やはり夜会などやめておいた方が良いのではないか?!
「サイモン様の剣は素早くて素敵でしたわ。それに、エミリー様の事も考えて、デヴィッド様へ手加減なさるなんてお優しいですわ」
「手加減?」
「ええ、あの時デヴィッド様へ剣を向けたのは本気ではございませんでしたでしょう? わたくしの扇子で止められましたし、サイモン様のお怒りを表現してトーマス様達を追い詰めようとなさったんでしょう?」
「……バレていたとはお恥ずかしい……」
「いえ、いつか本気のサイモン様とお手合わせ願いたいですわ!」
「喜んでお受けするよ」
「嬉しいですわ! でも、お手柔らかにお願い致しますわ。お兄様にはいつも勝てませんの」
冷や汗など出たのはいつぶりだ?! あの時の私は本気だった。それを易々と止めたマチルダ嬢より強いジョセフ様……鍛錬を、増やそう。今までの倍は鍛錬しないと恥ずかしいところを見せてしまう!
「ただ、私も少し立て込んでいてね。3ヶ月程すれば時間も取れるから、その辺りでまたご連絡するよ」
「かしこまりました。兄も一緒でもよろしいですか?」
「もちろん、お強いと噂のジョセフ様と手合わせ出来るなど光栄だよ」
……鍛錬は、3倍に増やそう。私はそう心に誓った。
エミリーがすました顔で声をかけてくる。しかし私はマチルダ嬢から目が離せない。なんと美しいのだ。
「サイモン様、わたくしも一緒にエスコートしていただいてよろしいのですか?」
よろしいに決まっている。
「エミリー様! お返事がありません! やっぱり駄目なのではありませんか?!」
焦った表情も愛らしい。が、妹から黒いオーラを感じる。
「お兄様?」
「失礼、あまりに美しく見とれていた。エスコートは問題ないよ。よろしくお願いいたしますね」
「そ、そうですか。ではよろしくお願いします。エミリー様、ドレスはやっぱり色を何とかしたほうが……」
「問題ありませんわ、ね、お兄様?」
「うむ、問題ない」
「……おふたりがそう仰るなら構いませんけれど」
「それより、マチルダ様。わたくし、ちょっとデビィの予定の調査がありますの。少しだけ席を外しますので、お兄様とお話ししていて下さいな。お兄様、よろしいですわよね?」
「うむ、問題ない」
「何も今やらなくてもいいじゃありませんか……。まぁ、エミリー様ですし仕方ありませんけど」
「うむ、問題ない」
「お兄様?」
ハッとする。先ほどから同じセリフしか出てきていないぞ。いかん、まだ落ち着かない。エミリーが呆れた顔をしているのは気のせいか?
「お兄様、くれぐれもマチルダ様をよろしくお願いしますね! さ、早くここに座ってくださいまし」
「しっかりなさいまし」
小さな声でエミリーが叱咤してくれる。そうだ、可愛い妹にもこれ以上恥ずかしい姿は見せられん。
「では、少し私のお相手をお願いするよ。マチルダ嬢、よろしくね」
「は、はいっ。よろしくお願いします!」
ああ、なんと愛らしい。……いかん、腑抜けにならないようにせねば。
「マチルダ嬢は、普段は何をして過ごされているんだい?」
既に調査済みだが、それを急に言ったら引かれてしまうから、まずはできる話題を増やさないと。
「最近はエミリー様のお仕事をする事が多いですが、以前はお兄様と鍛錬する事も多かったですね」
「私の剣を止めた手腕は見事だったね」
「……その節は、はしたない真似をして申し訳ありませんわ」
恥ずかしいそうにしているマチルダ嬢は、ますます美しい。やはり夜会などやめておいた方が良いのではないか?!
「サイモン様の剣は素早くて素敵でしたわ。それに、エミリー様の事も考えて、デヴィッド様へ手加減なさるなんてお優しいですわ」
「手加減?」
「ええ、あの時デヴィッド様へ剣を向けたのは本気ではございませんでしたでしょう? わたくしの扇子で止められましたし、サイモン様のお怒りを表現してトーマス様達を追い詰めようとなさったんでしょう?」
「……バレていたとはお恥ずかしい……」
「いえ、いつか本気のサイモン様とお手合わせ願いたいですわ!」
「喜んでお受けするよ」
「嬉しいですわ! でも、お手柔らかにお願い致しますわ。お兄様にはいつも勝てませんの」
冷や汗など出たのはいつぶりだ?! あの時の私は本気だった。それを易々と止めたマチルダ嬢より強いジョセフ様……鍛錬を、増やそう。今までの倍は鍛錬しないと恥ずかしいところを見せてしまう!
「ただ、私も少し立て込んでいてね。3ヶ月程すれば時間も取れるから、その辺りでまたご連絡するよ」
「かしこまりました。兄も一緒でもよろしいですか?」
「もちろん、お強いと噂のジョセフ様と手合わせ出来るなど光栄だよ」
……鍛錬は、3倍に増やそう。私はそう心に誓った。
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