腹黒公爵の狩りの時間

編端みどり

文字の大きさ
9 / 15

茶会【マチルダ視点】

しおりを挟む
「あらお兄様、今日はよろしくお願いしますね」

サイモン様が現れた。相変わらず落ち着かれていてカッコいいなぁ。

「サイモン様、わたくしも一緒にエスコートしていただいてよろしいのですか?」

あ、あれ? 勇気を出して聞いたのに返事がないし、サイモン様が固まっておられるわ! わたくしからお声がけするのは失礼だったかしら? でも、以前ご挨拶もしているからマナー違反ではないわよね?! 馴れ馴れしすぎた?! もしかしてエミリー様にエスコートを押し付けられたのかしら?

「エミリー様! お返事がありません! やっぱり駄目なのではありませんか?!」

「お兄様?」

やっぱり本当はお嫌だったのにエミリー様に押し切られたのかしら。サイモン様はずいぶんエミリー様を可愛がっておられるから、妹のお願いを断れなかったのね。うちもお兄様はわたくしに甘いし、そういうものかもしれないわ。

だからエミリー様、圧をかけるのはおやめくださいませ……。わたくしエスコートは遠慮する方が良いかしら? でもひとりでは入場できないし、今更参加しないのも失礼だし、困ったわ。

「失礼、あまりに美しく見とれていた。エスコートは問題ないよ。よろしくお願いいたしますね」

な、なんですのこの笑みは! 惚れ惚れしてしまいますわ! いけない、変な勘違いをしないようにしなくては……。

「そ、そうですか。ではよろしくお願いします。エミリー様、ドレスはやっぱり色を何とかしたほうが……」

令嬢の嫉妬の的になる気は、ありませんわよ。

「問題ありませんわ、ね、お兄様?」

「うむ、問題ない」

ちょっと待って下さいませ! エミリー様とそっくりの笑みで、サイモン様からも圧をかけられては断れませんわ!
わたくしにこんなドレスを着せて、何を企んでおられますの?! サイモン様の令嬢避けにでもするおつもり? 

……あり得ますわね。サイモン様は素敵ですしおモテになられるでしょうから、面倒も多いのかもしれませんわ。仕方ありません。わたくしには迷惑をかける婚約者もおりませんし、好きな殿方も居ませんから令嬢避けくらいは引き受けましょう。どうせ、夜会が終われば国に帰りますしね。

「……おふたりがそう仰るなら構いませんけれど」

「それより、マチルダ様。わたくし、ちょっとデビィの予定の調査がありますの。少しだけ席を外しますので、お兄様とお話ししていて下さいな。お兄様、よろしいですわよね?」

「うむ、問題ない」

唐突! 唐突ですわエミリー様! どうせデヴィッド様の事ばかり考えていて、我慢できなくなったに違いありませんわ!

「何も今やらなくてもいいじゃありませんか……。まぁ、エミリー様ですし仕方ありませんけど」

「うむ、問題ない」

「お兄様?」

エミリー様、そんなに圧をかけなくてもわたくしサイモン様のお顔を見てるだけで癒されますから無言でも問題ありませんわよ?

「お兄様、くれぐれもマチルダ様をよろしくお願いしますね! さ、早くここに座ってくださいまし」

ああ、サイモン様が近いわ! ちょっとドキドキするわね。落ち着かないと。

「では、少し私のお相手をお願いするよ。マチルダ嬢、よろしくね」

「は、はいっ。よろしくお願いします!」

クールで冷静なお姿は素敵だわ。

「マチルダ嬢は、普段は何をして過ごされているんだい?」

「最近はエミリー様のお仕事をする事が多いですが、以前はお兄様と鍛錬する事も多かったですね」

「私の剣を止めた手腕は見事だったね」

「……その節は、はしたない真似をして申し訳ありませんわ」

恥ずかしいですわ! とっさに身体が動いてしまったからに過ぎませんのに。

「サイモン様の剣は素早くて素敵でしたわ。それに、エミリー様の事も考えて、デヴィッド様へ手加減なさるなんてお優しいですわ」

「手加減?」

「ええ、あの時デヴィッド様へ剣を向けたのは本気ではございませんでしたでしょう? わたくしの扇子で止められましたし、サイモン様のお怒りを表現してトーマス様達を追い詰めようとなさったんでしょう?」

「……バレていたとはお恥ずかしい……」

やはりそうなのね。サイモン様はどのくらいお強いのかしら? お兄様より強かったりして!

「いつか本気のサイモン様とお手合わせ願いたいですわ!」

「喜んでお受けするよ」

「嬉しいですわ! でも、お手柔らかにお願い致しますわ。お兄様にはいつも勝てませんの」

「ただ、私も少し立て込んでいてね。3ヶ月程すれば時間も取れるから、その辺りでまたご連絡するよ」

「かしこまりました。兄も一緒でもよろしいですか?」

さすがに、ふたりきりと誤解されてはサイモン様にご迷惑よね。お兄様も巻き込みましょう。きっと来てくださるわ。

「もちろん、お強いと噂のジョセフ様と手合わせ出来るなど光栄だよ」

わたくしも最近は身体が鈍っているし、鍛錬を増やしておきましょう。あっさりサイモン様に負けてしまっては申し訳ないもの。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜

丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。 与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。 専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、 失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。 そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、 セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。 「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」 彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、 彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。 嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、 広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、 独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。 栄養と愛情を取り戻したセレナは、 誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、 社交界で注目される存在となる。 一方、セレナを失った伯爵家は、 彼女の能力なしでは立ち行かず、 ゆっくりと没落していくのだった――。 虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

氷の公爵の婚姻試験

潮海璃月
恋愛
ある日、若き氷の公爵レオンハルトからある宣言がなされた――「私のことを最もよく知る女性を、妻となるべき者として迎える。その出自、身分その他一切を問わない。」。公爵家の一員となる一世一代のチャンスに王国中が沸き、そして「公爵レオンハルトを最もよく知る女性」の選抜試験が行われた。

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

【完結】無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない

ベル
恋愛
旦那様とは政略結婚。 公爵家の次期当主であった旦那様と、領地の経営が悪化し、没落寸前の伯爵令嬢だった私。 旦那様と結婚したおかげで私の家は安定し、今では昔よりも裕福な暮らしができるようになりました。 そんな私は旦那様に感謝しています。 無口で何を考えているか分かりにくい方ですが、とてもお優しい方なのです。 そんな二人の日常を書いてみました。 お読みいただき本当にありがとうございますm(_ _)m 無事完結しました!

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

処理中です...