前世の推しが婚約者になりました

編端みどり

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あの日から、パタリとレベッカ様が来なくなった。理由は分からない。

レベッカ様にお手紙を書きたいけど、駄目ってお兄様に言われた。そうよね。敵対している家の令嬢から手紙って……警戒されるし、レベッカ様がお叱りを受けるかもしれないもの。

結婚式は、名前入りの招待状を頂いているから行けるけど……本当に行って大丈夫だろうか。欠席のご連絡もしにくいし、どうしたら良いか分からない。

悩んでいたら、お兄様から結婚式は行くようにと言われた。名入りの招待状を頂いておいて欠席する方が問題らしい。レベッカ様から聞いた話もしたけど、お兄様は分かってるから心配するなとしか言ってくれなかった。

マナーは散々習ったし、貴族名鑑も暗記したけど、貴族の勢力図は分からないのよね。

王族と結婚するわたくしは、貴族同士の対立は知らない方が良いらしい。だから、一切教えて貰えない。

レベッカ様のお家は王妃様のご実家だから、なんとなく仲が悪いんだろうなとは思ってるけど……それくらいしか分からない。だから逐一、お兄様やお父様に確認するしかない。

なんだか、蚊帳の外に追いやられているみたいだけど仕方ない。

……ああもう! ネガティブ禁止!

アル様と会えなくなってから、気持ちが不安定になる事が増えた。最近はレベッカ様のおかげでなんとか持ち堪えていたけど……。暗い気持ちが止まらない。

わたくしが落ち込んでいる事は隠していたけど、いつも世話をしてくれるメイドのアンリは気が付いたみたいだ。街に行こうと、誘ってくれた。護衛も付けてくれて、お父様やお兄様の説得もしてくれた。

「アンリ! このオルゴール、可愛いわ!」

「本当ですね。買いましょう」

「このリボンも素敵」

「買いましょう」

「ねぇアンリ?」

「なんですか? お嬢様」

「さっきからわたくしが手に取った物を全て購入しているわよね?」

「旦那様から、お嬢様が望むなら店ごと買い取れと申し付けられています」

過保護!
贅沢し過ぎは良くないわ!

「アンリ、わたくし店を見るだけでも楽しいの。あまり物が増え過ぎてしまったら帰らないといけないでしょう? だから、買う物は厳選したいの」

「ご安心下さいお嬢様。購入した物品を運ぶ馬車は別途ご用意しております。お嬢様は手ぶらでお買い物頂けます。例え、店の物を全部買ったとしても次の店に行けます」

過保護の筆頭は、アンリだった!

「わたくしが買うと言った物だけ買うわ。手に取る物が全て気に入るとは限らないから、手に取るだけなら買わなくて良いわ。買うかどうかはわたくしが決める。良いわね?」

「かしこまりました」

ふぅ。こう言えば大丈夫。
やっぱり命令するの慣れないなぁ。15年も貴族令嬢やってんだから慣れなきゃいけないのに。
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