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「困るよお嬢ちゃん! 金払ってくれよ!」
ん? 泥棒?
ふと店主の大声を聞いて振り向くと、可愛らしい少女がオルゴールを抱えて店を出ようとしていた。
ってぇ! アレは!
「……キャサリン王女……」
まずい! まずいまずいまずい!
なんでここに王女様が居るか知らないけど、このままじゃ店主の首が物理的に飛ぶ!
「ごめんなさい。彼女は私の連れなの。私の支払いが済んだと勘違いしていて。アンリ、あのオルゴールを買うわ」
「かしこまりました」
「貴女は……アル……」
「しー! 今は黙っておいて下さいまし。とにかく、ここを出ます。穏便に」
店主に謝罪して、商品の代金を払い、ついでにいくつか高価な品も買い、多めに支払いをする。
「彼女の勘違いを、これで許して頂けるかしら? 店は出ていなかったんだから、厳密には泥棒ではないでしょう?」
高価な品を買い、チップも払った事で店主はキャサリン王女が高貴な方だと気が付いたみたいだ。周りを見渡すけど、キャサリン王女の護衛は居ない。
もう! どうなってんのよ!
「……けど、泥棒だろ?」
まだ搾り取れると思ったか。それも正しい。
「なら、これでどう? 忠告しておくわ。死にたくなければ、これで納めなさい。でないと、1時間後にこの店は無くなるわ。物理的にね」
本格的に脅す。わたくしにこっそり付いていた護衛を呼び、ニッコリ笑う。脅しだけど、許して。さすがに王女様はヤバいんだって!
「わ、分かった。これで良い」
「ありがとう。そうそう。貴方の作るオルゴールは素晴らしかったわ。今度是非、テイラー公爵家で購入させてね」
「は……。こ、公爵家……。し、失礼しました!」
「失礼したのはこちらだから。本当にごめんなさい。支払いはいつも任せきりだったから失敗してしまって。許して下さって嬉しいわ。次は、わたくしが望む曲をオルゴールにして下さる? もちろん、対価はしっかりお支払いするわ」
「はい! 喜んで!」
「後日伺うわ。きっとこの子が来るから覚えておいて。アンリ、お願いね。アル様の曲をオルゴールにして貰うの」
「それは素敵ですね! すぐ譜面をお届けします」
店主の怒りは収まった。キャサリン王女の護衛や影が見てるかどうかは分からないけど、後日うちが利用すると分かってる店は潰せないだろう。ちょっとがめつい所はあるが、この店のオルゴールは素晴らしかった。
会話を店主に聞かれる訳にいかないから、キャサリン王女の母国語で話す。
「キャサリン王女様、お一人ですか?」
「そうよ」
「お買い物は済みましたか?」
「ええ」
「城にお送りします」
「やだ!」
やだって……子どもかよ。
あーもー! 貴女のせいでアル様と会えないのに!
夜会の時のしっかりした様子はなく、むすっとしておられるキャサリン王女。
これ、放っておくのは無しよね。
「では、我が家にお越し下さい。護衛も付けずに街中を歩くのは危険です」
「分かったわ。アルフレッドの婚約者の家なら大丈夫だろうし」
チクリ。
胸が痛い。キャサリン王女は、アル様の婚約者だからわたくしを信じてくれた。それって……アル様がキャサリン王女に信頼されている証なのでは?
ああもう、ネガティブ禁止だってば!
わたくしはキャサリン王女の気が変わる前に急いで馬車に乗せ、家に連絡を入れた。
お忍びは終わりね。良いオルゴールの店が見つかったから良しとしましょう。
ん? 泥棒?
ふと店主の大声を聞いて振り向くと、可愛らしい少女がオルゴールを抱えて店を出ようとしていた。
ってぇ! アレは!
「……キャサリン王女……」
まずい! まずいまずいまずい!
なんでここに王女様が居るか知らないけど、このままじゃ店主の首が物理的に飛ぶ!
「ごめんなさい。彼女は私の連れなの。私の支払いが済んだと勘違いしていて。アンリ、あのオルゴールを買うわ」
「かしこまりました」
「貴女は……アル……」
「しー! 今は黙っておいて下さいまし。とにかく、ここを出ます。穏便に」
店主に謝罪して、商品の代金を払い、ついでにいくつか高価な品も買い、多めに支払いをする。
「彼女の勘違いを、これで許して頂けるかしら? 店は出ていなかったんだから、厳密には泥棒ではないでしょう?」
高価な品を買い、チップも払った事で店主はキャサリン王女が高貴な方だと気が付いたみたいだ。周りを見渡すけど、キャサリン王女の護衛は居ない。
もう! どうなってんのよ!
「……けど、泥棒だろ?」
まだ搾り取れると思ったか。それも正しい。
「なら、これでどう? 忠告しておくわ。死にたくなければ、これで納めなさい。でないと、1時間後にこの店は無くなるわ。物理的にね」
本格的に脅す。わたくしにこっそり付いていた護衛を呼び、ニッコリ笑う。脅しだけど、許して。さすがに王女様はヤバいんだって!
「わ、分かった。これで良い」
「ありがとう。そうそう。貴方の作るオルゴールは素晴らしかったわ。今度是非、テイラー公爵家で購入させてね」
「は……。こ、公爵家……。し、失礼しました!」
「失礼したのはこちらだから。本当にごめんなさい。支払いはいつも任せきりだったから失敗してしまって。許して下さって嬉しいわ。次は、わたくしが望む曲をオルゴールにして下さる? もちろん、対価はしっかりお支払いするわ」
「はい! 喜んで!」
「後日伺うわ。きっとこの子が来るから覚えておいて。アンリ、お願いね。アル様の曲をオルゴールにして貰うの」
「それは素敵ですね! すぐ譜面をお届けします」
店主の怒りは収まった。キャサリン王女の護衛や影が見てるかどうかは分からないけど、後日うちが利用すると分かってる店は潰せないだろう。ちょっとがめつい所はあるが、この店のオルゴールは素晴らしかった。
会話を店主に聞かれる訳にいかないから、キャサリン王女の母国語で話す。
「キャサリン王女様、お一人ですか?」
「そうよ」
「お買い物は済みましたか?」
「ええ」
「城にお送りします」
「やだ!」
やだって……子どもかよ。
あーもー! 貴女のせいでアル様と会えないのに!
夜会の時のしっかりした様子はなく、むすっとしておられるキャサリン王女。
これ、放っておくのは無しよね。
「では、我が家にお越し下さい。護衛も付けずに街中を歩くのは危険です」
「分かったわ。アルフレッドの婚約者の家なら大丈夫だろうし」
チクリ。
胸が痛い。キャサリン王女は、アル様の婚約者だからわたくしを信じてくれた。それって……アル様がキャサリン王女に信頼されている証なのでは?
ああもう、ネガティブ禁止だってば!
わたくしはキャサリン王女の気が変わる前に急いで馬車に乗せ、家に連絡を入れた。
お忍びは終わりね。良いオルゴールの店が見つかったから良しとしましょう。
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