Monsters・W・Class―モンスターズ・W・クラス―

青髭

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生まれたての弱者

新たな出会いです。

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 次の日もアラックは同じ戦法でゴブリンを倒すことにした。
 昨日の失敗も踏まえて今回は慎重にことを進めた。

「へいへーい!」
「ギギギ!」

 激昂しながら棍棒を振り回すゴブリンはあっと言う間に奈落の底へ真っ逆さま。

「楽勝っすわ」

 余裕過ぎて欠伸が出てしまう。
 最初とまではいかないが経験値が入ってくる。
 そしてレベルが上がる。6→9。

「お、あとちょっとで上限か」

 最大値が10ということもあって直ぐに到達してしまうようだ。
 人間の時は最大値が100だったので種族によって最大値が違うのだろう。
 そいういえば割り振るポイントも違ったような気がする。
 残念なことにそこらへんも記憶がなくて歯がゆい。

 そう思いながら新たなる餌を探しているとおよそ森に似つかわしくないモンスターを見つけた。
 そいつはがりっがりに痩せて、いやむしろ骨だ。
 どうやってつながっているのか不思議だが骨のモンスター。
 いわゆるスケルトンである。
 とっさに隠れるアラック。
 その理由は一目瞭然だ。怪しすぎるからである。
 腰に剣を携え、小さい紐結びのバックを肩にかけているのである。
 そして探索なのかキョロキョロしているところを見ると知能も高い印象を受けた。
 下級モンスターであるスケルトンが知能を有しているはずはないのだが目の前のイレギュラーについつい警戒してしまう。
 まぁ、そう言ってしまうと自分もイレギュラーであるが。

 そこで気がついた。
 もしや自分と同じ境遇のモンスターなのでは?
 そして荷物を見るからにモンスターになってから大分経っている。
 つまりは先輩、助言、あわよくば助けてもらえるかも知れない。
 そう思うと隠れている場合ではない。
 早速スケルトン先輩(仮)の元へと走ってゆく。
 ま、足は浮いてるんですけどね。
 
「あの~すいません」
「ん?」

 スケルトンが振り向くとそこには半透明で楕円形の人型をしたゴーストがいた。

「ぎ…」
「ぎ?」

 まるでゴブリンのような声を聞いてアラックは当てが外れたかなと思った。
 が、しかし。

「ぎぃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃ!!?!?!?」
「ええええええええええええええ!!?」
「アンデッドだぁぁぁぁぁ!!?」

 そう叫ぶとスケルトンはどこから出ているのかキラキラと涙を流しながら脱兎の如く走り去ってしまった。
 呆然と立ち尽くすアラック。ま、浮いてるんですけどね。

「アンデッドって…スケルトンもアンデッドじゃないですか…」

 と、ここで逃がすわけにはいかない。
 アラックは急いでスケルトンを追いかけた。

「待てー」
「うわっ!追いかけてきた怖いぃぃ!」

 逃げるスケルトンは存外足が早く、しかも上手い具合に木々を避けていた。
 敏捷の差が大きいのか少しずつ距離を放される。 
 ゴーストのスキルとしてこちらは木々を無視して進めるのでなんとか見失わないだけだ。
 …まぁ、慌てふためいていて泣き叫んでいるので見失っても問題はないのだが。
 それにしてもスケルトンがゴーストにビビって逃げる様はかなり滑稽である。

「うぎゃっ!?」

 遂にスケルトンは顔面から木にぶつかってその足を止めた。
 そのまま倒れて目を回す。眼球なんてないけどね。
 イッツ、アンデッドジョーク。

「やっと止まった」
「う~ん」
「もしもーし、生きてますかー」
「し、死んでまーす…」

 この返答が冗談なのか熊に出会った時の死んだふりなのか少し判断に迷うところであった。

「どうしたものか…ん?」

 そこでスケルトンのバッグに目が行った。
 起きないなら起きないで勝手にさせてもらおう。
 と、バッグに手を伸ばしたその時。

「きゃぁぁぁぁぁヘンタイ!」

 大声で叫ばれてびっくりした。
 その声の方向を向けば先ほどのスケルトンである。
 スケルトンはバッグを掴んで抱き寄せると変質者を見る目でこちらを睨んできた。
 骨がどうやってとかは聞かないで欲しい。比喩的なものである。

「レディのバッグを盗もうだなんて貴方最低よ!」
「れ、レディって…骨に言われてもなぁ…」

 呆れを表現するかのようにアラックは頭をかいた。

「…え、レディ?てことは女性?」
「何を失礼ね!この骨盤の形を見てわからないの!?」

 そう言ってスケルトンは骨盤の所を指差す。
 なるほど、確かに男のものとはちが…。
 って、わかるかそんなもん!
 なにがどう違うってんだ!
 目の前の骨盤は大きな蝶のような形をしているなぁと思うぐらいだ。
 そもそも人の骨なんて綺麗な状態で見ることなんて無いので区別のしようがなかった。

「って、いつまで見てるのよこのヘンタイ!」

 頬を思いっきり叩かれた。

「えー、見ろって言ったのそっちじゃん」
「…くっ」

 頬を染めてそっぽを向くなそっぽを。
 スケルトンにされてもシュールでしかないわ!

「で、結局あんたは何なんだ?ただのスケルトンじゃないよな?つーかなんで同じアンデッドを怖がるんだよ」
「そ、それは…私、お化けが苦手なのよ…」
「はぁ…」
「だ、だってゴーストって基本だれかれ構わず驚かすじゃない!私そういうのも苦手で見ただけでも鳥肌が立っちゃうのよ!」

 そう言って腕を指すが皮膚など無く骨があるだけである。
 なんかこのままだと話が進まなそうだったので単刀直入に聞くことにした。

「あんたも元人間か?」

 そう聞くとスケルトンの動きが止まった。
 これは当たりかなと思っていると予想外の言葉が来た。

「え、なにそれ?」
「え、違うのか?」
「私、生まれも育ちもスケルトンよ」
「ホント?」
「ホントよ」

 数秒の沈黙の後、アラックは崩れ落ちる。

「マジかよ!せっかく同士に会えたと思ったのに!」
「あー言っている事は良くわからないのだけど大丈夫?」
「大丈夫なもんか!てかなんで生粋のアンデッドなのにそんなに喋れるんだよ!?アレか?実はアンデッド達はアンデッド達で共通の言語か何か意思疎通が出来る方法があって普段はそれを使っているとかか!?」
「違うわよ」
「違うんかい!だったらなんで喋れるんだよ!?」
「それは私が凶魔星きょうませいの生まれ変わりだからよ」
「…なにそれ?」
「え、知らないの?そもそも貴方もそうじゃないの?」
「え?」
「え?」

 再び沈黙が続くのであった。
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