Monsters・W・Class―モンスターズ・W・クラス―

青髭

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生まれたての弱者

新手の魔王候補

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 今日は趣向を変えて森の奥で探索をしていた。
 当然ながらこの森にはゴブリン以外も住んでいる。
 鳥や虫、魔物化していない小動物などだ。
 そもそも単体で行動しているゴブリンも滅多にいないのだ。
 だから新たな経験値を求めて探索しているわけだが。

 アラックは後ろを振り返ってみる。
 そこにはあれからずっとついてくる魔王候補(元)のアシュリーがいた。

「あのぉーいつまでついてくるんですか?」
「スキルが戻ってくるまでよ」
「消えたわけじゃないんでしょ?」

 そう、アシュリーのスキル凶魁星はスキル欄からなくなったわけではない。
 黒く塗りつぶされて使用不可となっている状態らしいのだ。

「あなたのせいで恩恵が消えちゃったんだから責任もって協力しなさいよ」
「えぇーいやだなぁ」
「しなさい」
「…そういえば恩恵って具体的にはどんな感じなんだ?」

 話題を逸らさねば厄介事を押し付けられそうだったのでそのスキルの効果を聞いてみた。
 するとアシュリーは人差し指を顎に当てて顔を上に向ける。

「えっとねー」
「なんで覚えてねーんだよ。お前のスキルだろうが」
「し、仕方ないでしょ。結構多かったんだから!」
「早く早くー」
「えっと…そ、そうよ。確か経験値3倍…」
「まじか!めっちゃウマいな!」
「いやレベルアップに必要な経験値量が」
「なんだ使えん、そんなスキル消えてよかったじゃないか」

 やれやれと両手を上げて大げさに残念がってみせる。

「それだけじゃないわよ!その代わりにレベルアップ時にもらえるステータスポイントが6倍になるんだから!」
「イマイチそれが良いのかわからん数字だな」
「そ、そんなことないわよ!アラックはレベル今いくつなのよ?」
「俺?9だけど」
「私は7よ、それを踏まえてステータス見せて」
「え、いやだけど?」
「見せなさい」
「やだ」
「い・い・か・ら・!」

 詰め寄ってくるので渋々見せることにした。
 てか他人に見せられるのね。

 名前「アラック・リテスノーモ」
 種族「ゴースト」レベル「9/10」
 職業「ー」レベル「ー/ー」
 
 状態「正常」
 体力「18/18」
 魔力「20/20」
 筋力「6」
 耐久「31」
 敏捷「10」
 幸運「10」
 階位「F」

 技能「物体透過」「下位物理耐性」「神聖攻撃脆弱」「ポルターガイスト」

 名前「アシュリー・リテスノーモ」
 種族「スケルトン」レベル「7/10」
 職業「ー」レベル「ー/ー」
 
 状態「正常」
 体力「216/216」
 魔力「32/32」
 筋力「22」
 耐久「60」
 敏捷「34」
 幸運「11」
 階位「F」

 技能「■■■」「下位斬撃耐性」「打撃攻撃脆弱」「下位刺突耐性」「神聖攻撃脆弱」

 ステータスウィンドウを出しステータスを見比べるとそこには驚きの結果があった。
 レベルが低いにも関わらずアシュリーのステータスは俺よりも上だったのだ。
 特に目を引いたのは体力だ、3桁もある。
 これは確かにスキルの恩恵の有り難さがわかるというものだ。
 このチート野郎め。かくいうアラックはそんな感想であるが。

「わかった?今後も順調に行くはずだったのにあなたのせいでこうなったんだからせめてレベル上げには協力してもらうわよ。あと盾役ね」
「…はぁ、分かったよ。盾役はともかくレベル上げは一緒にやるか。2人の方が効率良いだろうしな」
「決まりね」

 二人はレベルを上げる為に更に奥へと進んでいった。
 しばらくすると大きな壁に苛まれた。
 剥き出しの土壁、その上にまだ森が続いていると木々が見える。
 いきなりピンチである。
 浮いているアラックはなんてことないがスケルトンであるアシュリーはこの崖を登るのは大変そうである。

「どうする、右か左どっちに行きたい?」
「右にするわ」
「じゃあ右で」

 アシュリーに決めさせたのは右も左もアラックからしてみれば同じに見えるからだ。
 そのまま壁伝いに進んでいくと横穴が空いている所を発見した。

「ね?」
「はいはいそうですねー行くぞ」

 なにが、ね?だ、ただのまぐれだろうが。
 その無い髪をクルクルといじる仕草を止めろ。
 なんでそのぐらいでこいつは調子に乗れるのだろうか。
 …逆に考えるとこいつが魔王になれば討伐とか楽なんじゃね?
 そう思って気づかれないようにアシュリーを見る。
 アシュリーは気づいていないようでキョロキョロと洞窟の周りを見ていた。

「前見て歩けよ、危ないぞ」
「え?あぁそうね!」
「何なんだいったい…」

 人畜無害の骨はこのまま魔王になってもらいたいものである。
 と、しばらく歩いていると洞窟は二手に分かれていた。
 左側はいたって普通、つまり特に何もない道が続いていた。
 右側はいたって異常、ヤギの髑髏が入口の上に掛けられていた。

「右ね」
「その心は?」
「敵が居そう」
「ごもっともで」

 アラックとアシュリーは躊躇い無く右側へと向かった。
 数分後には2人は全速力で逃げるのだった。

「おい!お前の同業者じゃないか!なんとかしろよ!」
「うっさいわね!だったら私のスキル返して!」
「別に取った覚えねーよ!」
「うわっ来た!」
「ギー!ギギー!」

 2人は追いつかれないように走った。
 棍棒を持ったゴブリンの群れが追いかけて来ていた。
 アラックからしたらこの状況はピンチだがアシュリーからしたらゴブリンの群れぐらいなら問題はないのである。
 ではなぜ逃げているのか、答えはその奥にあった。
 アシュリーと同じく魔王候補のゴブリン・メイジが居たのだ。
 そのゴブリン・メイジは2人を見るなり「他の魔王候補か、殺せぇぇ!」と手下達に命令したのだ。
 ご丁寧に魔術による強化を込めて。
 進化しているのでその効果もまぁまぁ強く、これが逃げる要因になったのだ。

「開口一番に殺せぇぇって普通言うか!?」
「現に言ってたじゃない!」
「魔王候補ってのは知能が高いんじゃなかったのか!?」
「そりゃ高いわよ、あいつメイジだったんだから。頭悪くて魔術なんて扱えっこないわよ!」
「少し答えがズレてませんかねぇ!?」
「要するに頭が良くて血の気も多い奴ってことでしょ!他の候補者が強くなる前に潰すって結構重要なことよ?」
「先に潰しておく…か…」

 確かにそうである。
 あのゴブリン・メイジが魔王になったらやっかいだ。
 だったら、とアラック思いついた。

「アシュリー!」
「な、なによ!」
「後は任せた、じゃ!」

 アラックは手を上げてそう言うとそのままススーっと洞窟の壁へと姿を消した。
 それを見たアシュリーは咄嗟に壁の方へ手を出してアラックを掴もうとした。
 しかし間に合わずに空を掴む。そもそもアラックは掴めない。
 そんなことも気づかない程慌てていたのだ。

「こ、この裏切り者ぉー!!」

 洞窟にアシュリーの声が反響した。
 その声も直ぐにゴブリン達の声に掻き消えた。
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