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生まれたての弱者
勘違いと引き分け
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アシュリーを囮にしてアラックは1人洞窟の壁の中を移動して引き返していた。
時折位置を確認するために顔を覗かせる時はちょっとだけハラハラした。
そして遂に先ほどの広間へとたどり着いた。
この広間は先程までゴブリンが大量にいたが今は静かなものだった。
そして案の定、奥に鎮座する玉座には1匹のゴブリン・メイジが座っていた。
容姿は他のゴブリンとほとんど同じである。
違いは服装だ、土で汚れた黒いローブと自身よりも背の高い木の杖、手にはブレスレットや指輪も見受けられた。
完全に魔術師の其れである。
アラックはその姿を再確認して息を呑んだ。
はっきりと言ってしまえばアラックはかなり不利である。
ゴーストは物理には耐性があるが魔術に耐性は無いのだ。
そして相手は魔術を使うメイジ系のモンスター、火でも水でもなんでも良い、当てれば魔王候補であるゴブリン・メイジのステータスをもってして俺はお陀仏だ。
思わず身震いしてしまう。
「待てよ、アシュリーのステータスがアレだったんだ、一度進化してるあいつのステータスって…よそう、考えるだけ無駄だ」
本当に無駄である。
結局のところ自分より上であるということには変わらないのだから。
だからやることは決まっている。
真当な戦闘は出来ない。
下克上なんて出来ない。
だから俺はこうするしかないんだ。
「ばぁ」
アラックは下に回ってゴブリン・メイジを驚かせた。
ゴブリン・メイジは驚くのも束の間、魔術を放つ。
「二重魔術・ホーリネスファイア!!」
「うひゃあ!?」
元々直ぐに引っ込む予定だったので当たらずに済んだ。
魔術は広間の入口に当たると亀裂だけ入れて消えた。
やはりこちらがアンデッド系と知って神聖魔術を使ってきやがった。
闇の妖精系統である筈のゴブリンが神聖魔術を使っている時点で魔王候補とは規格外だとわかる。
てか二重魔術ってなんだ!?
複合魔術とかマジでおっかねぇ。
これで相当の手練という事がわかった。
「こりゃ慎重にいかないとな…」
「ホーリネスレッサーサンクチュアリ!」
「……こいつぅぅ!」
予想外の魔術に思わず拳を握り締める。
あろう事か俺を入れないようにしやがった。
これでは手出しが出来ない。
万事休すか、ゴブリン・メイジも相手がゴーストと知って玉座から降り広間の中央へ移動した。
先ほどの魔術によってアラックは広間に近づけなくなっている。
しかし万が一を心配して敵は中央へ移動したのだ。
これによって背後を簡単には取れなくなった。
「どうするべきか…」
既に手も足も出ない状況だ。
と、ゴブリン・メイジもそれがわかったのか出口の方へと歩き始めた。
まさかあいつアシュリーを倒しに行くんじゃ!
当然といえば当然の行動である。
魔王候補は魔王候補を倒さねばならないのだから。
「させるか!」
咄嗟に出口の方へ飛び出してスキル、ポルターガイストを使う。
ポルターガイストによって道に落ちていた石をいくつも持ち上げてゴブリン・メイジへと投げつけた。
が、しかし致命傷には至らずかすり傷も同然だった。
「チェインマジックショット!」
また別の魔術を繰り出すゴブリン・メイジ。
「あ、あぶねぇ!」
また間一髪である。
洞窟の壁に逃げ込むアラック。
というよりも今のはかなり軽率だった。
「え?」
次の瞬間アラックの横で爆発が起きた。
先程ゴブリン・メイジが放った魔術は周囲に連鎖する魔術だったのだ。
よって攻撃が壁や床や天井に連鎖したのだ。
連鎖故に威力自体は先程よりも格段に下がっているのが不幸中の幸いだった。
しかし、それでもアラックの体力は半分以下になってしまった。
体力を確認してみれば残り体力は5/18だった。
「はぁはぁ…死ぬかと思った」
心臓もないので落ち着くのは早かった。
そもそもそういった感覚は全て人間だった頃の名残である。
実際には平常のはずなのだ。
と、先ほどの攻撃とは違う音が響いた。
それは崩れるような音で広間の入口が閉じてしまったということだった。
しかしそれがどうしたというのか、これで倒せると楽観視するほど相手は弱くないと知っている。
それこそ魔術で穴を開けることができ…るか?
それは純粋な疑問だった。
洞窟の厚さを直ぐに思い出す。
入口はどうだったか、かなりの高さだった。
そして洞窟の形状は斜めだ。進むにつれて徐々に徐々に下へと下がっていた。
それを踏まえて、いくら強いと言っても限度があるのではと考える。
そう、強さだ、魔王候補特有の強さを考えろ。
奴らのことについて俺は知っていることが何があるか。
必要経験値3倍、レベルアップ時のステータスポイント6倍だ。
それだけじゃないはずだ。
アシュリーは言っていた。恩恵は多かったと。
「あっ、そうだ、あいつ神聖魔術を使ってる」
魔術と単に言ってもその種類は多岐に渡る。
故に自分との相性も多かれ少なかれ出てくるのだ。
そう、種族的にもそれはある。
シルフという種族がいる。
この種族は風の妖精系統であるので風の魔術と相性が良い。逆に言えば他の魔術はそれほどではないということ。
少なくとも風の魔術よりは不得手であるのだ。
そしてゴブリン、こいつらは闇の妖精系統のモンスターである。
つまり本来は暗黒魔術を得意とする種族なのだ。
それをあろう事かサンクチュアリまで使うのだ。
「魔王候補は何でもアリってか?」
不得手を克服するのはかなり骨が折れると記憶している。
例えそれが特権的スキルを有していてもだ。
「そういえば火炎魔術も使ってやがったか。複合込みで」
きっと幅広く使えるのだろう。
その中で得意な暗黒魔術は如何程になるのか。
アラックはこの状況を観て勝てる見込みを見出した。
まだ魔力は残ってるな。
元々そこまで多くないので使ってもしばらくすれば回復するが。
時間が無い、直ぐに行動に移すんだ。
先ほどのサンクチュアリが解かれていた。
それは入口が崩れて範囲も崩れたからだ。
アラックは天井から顔を覗かせる。
まだ中央にいるのを確認した。
アラックは意を決して飛び出した。
「こっちだ!ポルターガイスト!!」
先ほどとは違い今度は玉座付近にあったボロい剣を飛ばした。
「くっ、結構魔力使うな…」
飛ばした剣はゴブリン・メイジの杖に弾かれる。
すぐさまホーリネスファイアが飛んできたが直ぐに天井に隠れる。
このトライ&エラー戦法でいいはずだ。
天井に魔術が当たり爆発音が聞こえる。
先程よりも威力を強くしているようだ。
次は回り込んで反対の壁から飛び出す。
「こっちだよ間抜け!」
「マジックショット!」
攻撃が来たら直ぐに隠れる。
やつは攻撃ばかりで防御をしてこない。
それは耐久に自信があるのか、それとも俺を弱いと見ているのか。
もしそうだったらそれは正解と言っておこう。
お前の攻撃が直で当たったら俺は消滅だよ。
アラックが再び壁へと消える。
と、後ろから声をかけられた。
「良くもやってくれましたわね!」
振り向くとそこにはぷんすかと怒るアシュリーがいた。
なぜ?と周りを見渡すとそこは先ほどの道だった。
よく見れば壁と思って通り抜けた壁は先程ゴブリン・メイジが崩した土と岩だったのだ。
「丁度いいや、アシュリーは一度上に行ってくれる?」
「はぁ!?あんたどういうつ、ってどこ行ったァァァァァァ!?」
アラックは言うだけ言うとさっさと天井へと消える。
ふぅ、それにしても意外と早くて助かった。
ゴブリン・メイジを足止めなんて長く続かない。
正直助かった。
とは言ってもアシュリーが洞窟を出て壁をよじ登りこの上に来るのにどのくらいかかるのか分からないので結局足止めの時間稼ぎはまだ続くが…。
「やってやるさ、存分に!」
勢い良く天井から出て先程と同じようにポルターガイストを発動する。
ゴブリン・メイジは杖で投げた剣を弾…かなかった。
剣はゴブリン・メイジに当たるが傷一つつかなかった。
その代わりゴブリン・メイジは両手で杖を持って呪文を唱えていた。
そして詠唱が終わるとこちらを見る。
まずい!直感と本能がそう叫んだ。
すぐさまアラックは天井へ逃げ、更に軌道を変えて空中へと逃げる。
眼下を見れば丁度壁を一生懸命登るアシュリーがいた。
「がんばってるなー」
そう言った同じタイミングで先程いた天井部分が黒い光に飲み込まれて消えていった。
ゴブリン・メイジが唱えていたのは今の魔術を使うためだったのだ。
これ食らってたら蒸発するように消えていただろう。
「あはは…得意分野の暗黒魔術、やっべぇ」
そしてその穴から上がってくるゴブリン・メイジの姿。
少し遅れてアシュリーが登りきった。
魔王候補同士がにらみ合う。
「あのゴーストはお前の手下か?」
「え?…そ、そうよ!」
咄嗟にそう答えるアシュリー。
てかちげーよ。
「そうか…それにしても良く生きてたな。俺の手下は…やられたか、まぁ魔王候補に勝てるはずも無いか」
「私にかかればあの程度の魔物なんてよゆーよよゆー!」
「なあ、今回は痛み分けにしないか?」
「ん?」
と、思わぬ言葉にアラックは首をかしげた。
なにせ出会って早々に殺せと言い放った相手だからだ。
「ど、どういうことよ?」
「お互いに手下を失って痛手だろう。だから今回はお互いに手を引こうと言っているんだ」
「え?俺確かにゴーストで死んでるけど…」
どうやらあいつは先ほどの一撃で死んだと思っているようだ。
「なるほどね、いいわよ」
「だが次に会うときはお互いにまた敵同士だ」
「もちろんよ。その時までに新しい手下を揃えておくんだから!」
それを聞くとゴブリン・メイジは魔術でどこかへと消えていった。
「転移まで使えるって…あいつ本当にゴブリン・メイジかよ…」
「あ、やっぱり生きてたんだ」
「やっぱりってなんだよやっぱりって!」
ゴブリン・メイジが消えたのを確認して近寄ってみればこの言いようである。
「いやーそれにしても引き分けにしてくれてよかったよかった。正直戦ってたら絶対に死ぬもん私」
「堂々と言うような台詞じゃないな」
「仕方ないじゃない、あんたのせいでスキル不能なんだから。ま、そのおかげか普通だけどレベルもマックスになったけどね!ドヤァ」
「なっ…確かにあれだけのゴブリンを倒したんだ、かなりの経験値になったんだろう」
「おかげで分岐が出てきたわ」
「じゃあ進化できるのか!?」
「ふふ、そういうこと」
アシュリーは人差し指を立ててそう言った。
時折位置を確認するために顔を覗かせる時はちょっとだけハラハラした。
そして遂に先ほどの広間へとたどり着いた。
この広間は先程までゴブリンが大量にいたが今は静かなものだった。
そして案の定、奥に鎮座する玉座には1匹のゴブリン・メイジが座っていた。
容姿は他のゴブリンとほとんど同じである。
違いは服装だ、土で汚れた黒いローブと自身よりも背の高い木の杖、手にはブレスレットや指輪も見受けられた。
完全に魔術師の其れである。
アラックはその姿を再確認して息を呑んだ。
はっきりと言ってしまえばアラックはかなり不利である。
ゴーストは物理には耐性があるが魔術に耐性は無いのだ。
そして相手は魔術を使うメイジ系のモンスター、火でも水でもなんでも良い、当てれば魔王候補であるゴブリン・メイジのステータスをもってして俺はお陀仏だ。
思わず身震いしてしまう。
「待てよ、アシュリーのステータスがアレだったんだ、一度進化してるあいつのステータスって…よそう、考えるだけ無駄だ」
本当に無駄である。
結局のところ自分より上であるということには変わらないのだから。
だからやることは決まっている。
真当な戦闘は出来ない。
下克上なんて出来ない。
だから俺はこうするしかないんだ。
「ばぁ」
アラックは下に回ってゴブリン・メイジを驚かせた。
ゴブリン・メイジは驚くのも束の間、魔術を放つ。
「二重魔術・ホーリネスファイア!!」
「うひゃあ!?」
元々直ぐに引っ込む予定だったので当たらずに済んだ。
魔術は広間の入口に当たると亀裂だけ入れて消えた。
やはりこちらがアンデッド系と知って神聖魔術を使ってきやがった。
闇の妖精系統である筈のゴブリンが神聖魔術を使っている時点で魔王候補とは規格外だとわかる。
てか二重魔術ってなんだ!?
複合魔術とかマジでおっかねぇ。
これで相当の手練という事がわかった。
「こりゃ慎重にいかないとな…」
「ホーリネスレッサーサンクチュアリ!」
「……こいつぅぅ!」
予想外の魔術に思わず拳を握り締める。
あろう事か俺を入れないようにしやがった。
これでは手出しが出来ない。
万事休すか、ゴブリン・メイジも相手がゴーストと知って玉座から降り広間の中央へ移動した。
先ほどの魔術によってアラックは広間に近づけなくなっている。
しかし万が一を心配して敵は中央へ移動したのだ。
これによって背後を簡単には取れなくなった。
「どうするべきか…」
既に手も足も出ない状況だ。
と、ゴブリン・メイジもそれがわかったのか出口の方へと歩き始めた。
まさかあいつアシュリーを倒しに行くんじゃ!
当然といえば当然の行動である。
魔王候補は魔王候補を倒さねばならないのだから。
「させるか!」
咄嗟に出口の方へ飛び出してスキル、ポルターガイストを使う。
ポルターガイストによって道に落ちていた石をいくつも持ち上げてゴブリン・メイジへと投げつけた。
が、しかし致命傷には至らずかすり傷も同然だった。
「チェインマジックショット!」
また別の魔術を繰り出すゴブリン・メイジ。
「あ、あぶねぇ!」
また間一髪である。
洞窟の壁に逃げ込むアラック。
というよりも今のはかなり軽率だった。
「え?」
次の瞬間アラックの横で爆発が起きた。
先程ゴブリン・メイジが放った魔術は周囲に連鎖する魔術だったのだ。
よって攻撃が壁や床や天井に連鎖したのだ。
連鎖故に威力自体は先程よりも格段に下がっているのが不幸中の幸いだった。
しかし、それでもアラックの体力は半分以下になってしまった。
体力を確認してみれば残り体力は5/18だった。
「はぁはぁ…死ぬかと思った」
心臓もないので落ち着くのは早かった。
そもそもそういった感覚は全て人間だった頃の名残である。
実際には平常のはずなのだ。
と、先ほどの攻撃とは違う音が響いた。
それは崩れるような音で広間の入口が閉じてしまったということだった。
しかしそれがどうしたというのか、これで倒せると楽観視するほど相手は弱くないと知っている。
それこそ魔術で穴を開けることができ…るか?
それは純粋な疑問だった。
洞窟の厚さを直ぐに思い出す。
入口はどうだったか、かなりの高さだった。
そして洞窟の形状は斜めだ。進むにつれて徐々に徐々に下へと下がっていた。
それを踏まえて、いくら強いと言っても限度があるのではと考える。
そう、強さだ、魔王候補特有の強さを考えろ。
奴らのことについて俺は知っていることが何があるか。
必要経験値3倍、レベルアップ時のステータスポイント6倍だ。
それだけじゃないはずだ。
アシュリーは言っていた。恩恵は多かったと。
「あっ、そうだ、あいつ神聖魔術を使ってる」
魔術と単に言ってもその種類は多岐に渡る。
故に自分との相性も多かれ少なかれ出てくるのだ。
そう、種族的にもそれはある。
シルフという種族がいる。
この種族は風の妖精系統であるので風の魔術と相性が良い。逆に言えば他の魔術はそれほどではないということ。
少なくとも風の魔術よりは不得手であるのだ。
そしてゴブリン、こいつらは闇の妖精系統のモンスターである。
つまり本来は暗黒魔術を得意とする種族なのだ。
それをあろう事かサンクチュアリまで使うのだ。
「魔王候補は何でもアリってか?」
不得手を克服するのはかなり骨が折れると記憶している。
例えそれが特権的スキルを有していてもだ。
「そういえば火炎魔術も使ってやがったか。複合込みで」
きっと幅広く使えるのだろう。
その中で得意な暗黒魔術は如何程になるのか。
アラックはこの状況を観て勝てる見込みを見出した。
まだ魔力は残ってるな。
元々そこまで多くないので使ってもしばらくすれば回復するが。
時間が無い、直ぐに行動に移すんだ。
先ほどのサンクチュアリが解かれていた。
それは入口が崩れて範囲も崩れたからだ。
アラックは天井から顔を覗かせる。
まだ中央にいるのを確認した。
アラックは意を決して飛び出した。
「こっちだ!ポルターガイスト!!」
先ほどとは違い今度は玉座付近にあったボロい剣を飛ばした。
「くっ、結構魔力使うな…」
飛ばした剣はゴブリン・メイジの杖に弾かれる。
すぐさまホーリネスファイアが飛んできたが直ぐに天井に隠れる。
このトライ&エラー戦法でいいはずだ。
天井に魔術が当たり爆発音が聞こえる。
先程よりも威力を強くしているようだ。
次は回り込んで反対の壁から飛び出す。
「こっちだよ間抜け!」
「マジックショット!」
攻撃が来たら直ぐに隠れる。
やつは攻撃ばかりで防御をしてこない。
それは耐久に自信があるのか、それとも俺を弱いと見ているのか。
もしそうだったらそれは正解と言っておこう。
お前の攻撃が直で当たったら俺は消滅だよ。
アラックが再び壁へと消える。
と、後ろから声をかけられた。
「良くもやってくれましたわね!」
振り向くとそこにはぷんすかと怒るアシュリーがいた。
なぜ?と周りを見渡すとそこは先ほどの道だった。
よく見れば壁と思って通り抜けた壁は先程ゴブリン・メイジが崩した土と岩だったのだ。
「丁度いいや、アシュリーは一度上に行ってくれる?」
「はぁ!?あんたどういうつ、ってどこ行ったァァァァァァ!?」
アラックは言うだけ言うとさっさと天井へと消える。
ふぅ、それにしても意外と早くて助かった。
ゴブリン・メイジを足止めなんて長く続かない。
正直助かった。
とは言ってもアシュリーが洞窟を出て壁をよじ登りこの上に来るのにどのくらいかかるのか分からないので結局足止めの時間稼ぎはまだ続くが…。
「やってやるさ、存分に!」
勢い良く天井から出て先程と同じようにポルターガイストを発動する。
ゴブリン・メイジは杖で投げた剣を弾…かなかった。
剣はゴブリン・メイジに当たるが傷一つつかなかった。
その代わりゴブリン・メイジは両手で杖を持って呪文を唱えていた。
そして詠唱が終わるとこちらを見る。
まずい!直感と本能がそう叫んだ。
すぐさまアラックは天井へ逃げ、更に軌道を変えて空中へと逃げる。
眼下を見れば丁度壁を一生懸命登るアシュリーがいた。
「がんばってるなー」
そう言った同じタイミングで先程いた天井部分が黒い光に飲み込まれて消えていった。
ゴブリン・メイジが唱えていたのは今の魔術を使うためだったのだ。
これ食らってたら蒸発するように消えていただろう。
「あはは…得意分野の暗黒魔術、やっべぇ」
そしてその穴から上がってくるゴブリン・メイジの姿。
少し遅れてアシュリーが登りきった。
魔王候補同士がにらみ合う。
「あのゴーストはお前の手下か?」
「え?…そ、そうよ!」
咄嗟にそう答えるアシュリー。
てかちげーよ。
「そうか…それにしても良く生きてたな。俺の手下は…やられたか、まぁ魔王候補に勝てるはずも無いか」
「私にかかればあの程度の魔物なんてよゆーよよゆー!」
「なあ、今回は痛み分けにしないか?」
「ん?」
と、思わぬ言葉にアラックは首をかしげた。
なにせ出会って早々に殺せと言い放った相手だからだ。
「ど、どういうことよ?」
「お互いに手下を失って痛手だろう。だから今回はお互いに手を引こうと言っているんだ」
「え?俺確かにゴーストで死んでるけど…」
どうやらあいつは先ほどの一撃で死んだと思っているようだ。
「なるほどね、いいわよ」
「だが次に会うときはお互いにまた敵同士だ」
「もちろんよ。その時までに新しい手下を揃えておくんだから!」
それを聞くとゴブリン・メイジは魔術でどこかへと消えていった。
「転移まで使えるって…あいつ本当にゴブリン・メイジかよ…」
「あ、やっぱり生きてたんだ」
「やっぱりってなんだよやっぱりって!」
ゴブリン・メイジが消えたのを確認して近寄ってみればこの言いようである。
「いやーそれにしても引き分けにしてくれてよかったよかった。正直戦ってたら絶対に死ぬもん私」
「堂々と言うような台詞じゃないな」
「仕方ないじゃない、あんたのせいでスキル不能なんだから。ま、そのおかげか普通だけどレベルもマックスになったけどね!ドヤァ」
「なっ…確かにあれだけのゴブリンを倒したんだ、かなりの経験値になったんだろう」
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