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2 感染
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抱き起こした聴蝶の体は煮え滾るみたいに熱かった。
「救急車を呼んで!――早く!――」
観空が携帯を耳にあてたとき人集りを搔き分けて入ってきた男が私を突き飛ばし,腕から聴蝶を奪いとった。
「何するんだ!」暴れる私を観空が押さえつける。「病院関係者なのか?――薬のにおいがする」
観空の問いかけに男は頷いた。「看護師だ。うちの病院が近くにある。感染症専門病棟に入ってもらう――」
野次馬が一挙に分散していく――
「安心していい! 誰も感染していないから!」男が周囲に呼びかけた。「全員,早く帰宅してください」
素直に遠ざかっていく群衆を尻目に,男は聴蝶を抱きあげた。
「感染ってどういうことだよ?!」
「何かの間違いだよね?!」
口々に質問する私たちから,男はひょいと飛びのいた。一跳びで数メートルばかりも後退している。サーカスか何かの芸当でも見せられたようで,啞然とする。
「近づくな。マスクをしろ」と短い指示がくだった。「――最善を尽くしますが,覚悟はしてください」男が背をむけて歩き出す。
「ちょ,ちょっと!――」駆け出そうとする矢先に制止が入る。だが,もう大人しくなどしていられない。男に追いついて肩を摑もうとした。
眼前の体が氷上を滑るみたいに遠くへ瞬間移動してからターンして,こちら側へむきなおる。「無謀な真似をして感染したら,この人が悲しみますよ」聴蝶に視線を落とす。
駆けてきた観空に抱きしめられた。
「でも,覚悟しろなんて……」涙声を振り絞る。
「彼女の感染しているのはリドルという未知のウイルスです。重症化して回復した例は皆無です」
「救急車を呼んで!――早く!――」
観空が携帯を耳にあてたとき人集りを搔き分けて入ってきた男が私を突き飛ばし,腕から聴蝶を奪いとった。
「何するんだ!」暴れる私を観空が押さえつける。「病院関係者なのか?――薬のにおいがする」
観空の問いかけに男は頷いた。「看護師だ。うちの病院が近くにある。感染症専門病棟に入ってもらう――」
野次馬が一挙に分散していく――
「安心していい! 誰も感染していないから!」男が周囲に呼びかけた。「全員,早く帰宅してください」
素直に遠ざかっていく群衆を尻目に,男は聴蝶を抱きあげた。
「感染ってどういうことだよ?!」
「何かの間違いだよね?!」
口々に質問する私たちから,男はひょいと飛びのいた。一跳びで数メートルばかりも後退している。サーカスか何かの芸当でも見せられたようで,啞然とする。
「近づくな。マスクをしろ」と短い指示がくだった。「――最善を尽くしますが,覚悟はしてください」男が背をむけて歩き出す。
「ちょ,ちょっと!――」駆け出そうとする矢先に制止が入る。だが,もう大人しくなどしていられない。男に追いついて肩を摑もうとした。
眼前の体が氷上を滑るみたいに遠くへ瞬間移動してからターンして,こちら側へむきなおる。「無謀な真似をして感染したら,この人が悲しみますよ」聴蝶に視線を落とす。
駆けてきた観空に抱きしめられた。
「でも,覚悟しろなんて……」涙声を振り絞る。
「彼女の感染しているのはリドルという未知のウイルスです。重症化して回復した例は皆無です」
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