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私は口を開けて、驚いていた。エリーゼと、ファミールはその男性の周りを飛び回って、はしゃいでいる。私は内心焦っていた。
「あ、あの、すいません。子爵家の娘ごときが、偉そうな口をきいて」
「いや、君の演説には聞き入ってしまった。とてもハキハキと自分の意見を話すことができ、かつ何物にもとらわれないその授業の形は、今までの家庭教師ではできなかっただろう」
ビナーズ家の当主様は私の手を握ると、ニコニコと笑ってブンブン振った。私は頭がパンクしてしまいそうだった。
「おっと、私の名前がまだだったな。私はビナーズ家、四十九代目当主、ケビン・ビナーズだ」
「ワタクシは、フィナリー家の長女、エミリア・フィナリーと申します。私から挨拶も出来ず、恥ずかしいばかりです」
「それにしても、出来たお嬢様だなぁ。学園には通っていたのかい?」
「いえ、学園には通っていませんでした。家で自主勉強をしていました」
「向上心に満ち溢れているな。ぜひ、二人を立派にしていただきたい」
「ワタクシめに出来るかどうか。なんせただの田舎娘なもので」
「この双子を従えるだけで、一苦労よ。今までの家庭教師より何倍もいい。失敗したらまた違う道を探せば良いだけの事」
ケビン様はそう、口を大きく開けて笑っていた。とても豪快な笑いだった。その様子は何となくジャックを思わせる気配がある。
「二人とも、走らなくても良い、歩いていればいつかはゴールへたどり着く」
二人はそれを聞いて、ポカンとしていた。この言葉は『ルーベルクの冒険記』に出てくる一節で、努力が苦手な青年へ向けた言葉だった。私もこの言葉が大好きだ。この言葉が分かるようになるのはきっと大人になってからだろう。
「では、子ども達を頼みたい」
「最善を尽くします」
「それと、ここでは気楽に暮らすと良い。無理はしないように。傷にも障るだろう」そうケビン様はにっこりと笑って出て行った。
「ねえ、今日は何をするの?」
「わ、私と一緒に社交ダンス踊りましょう!」私は手をグッと握って言った。
「そんなことやるの?貴族で、できない奴の方が少ないだろう」ファミールが呆れて言った。
私はその言葉がぐさりと刺さってきた。そりゃそうだ。社交ダンスを踊れない女なんかいないだろう。私は二人に頭を下げた。
「私は、家庭教師という職業をしていながら、子爵家の娘でありながら、社交ダンスが全く踊れまないのです」
『え…』
二人はそう声を漏らしてから、良く分からないという顔をしていた。
『なんで踊れないの』
五歳児にそういわれても仕方がない。
「私は、勉強という勉強に執着した結果。勉強以外の事がおろそかになってしまったのです」
「そんなこと、私たちが、教えてあげるわ」
「その代わり、僕の知らないことをいっぱい教えてくれ」
「もちろんです」
「あ、あの、すいません。子爵家の娘ごときが、偉そうな口をきいて」
「いや、君の演説には聞き入ってしまった。とてもハキハキと自分の意見を話すことができ、かつ何物にもとらわれないその授業の形は、今までの家庭教師ではできなかっただろう」
ビナーズ家の当主様は私の手を握ると、ニコニコと笑ってブンブン振った。私は頭がパンクしてしまいそうだった。
「おっと、私の名前がまだだったな。私はビナーズ家、四十九代目当主、ケビン・ビナーズだ」
「ワタクシは、フィナリー家の長女、エミリア・フィナリーと申します。私から挨拶も出来ず、恥ずかしいばかりです」
「それにしても、出来たお嬢様だなぁ。学園には通っていたのかい?」
「いえ、学園には通っていませんでした。家で自主勉強をしていました」
「向上心に満ち溢れているな。ぜひ、二人を立派にしていただきたい」
「ワタクシめに出来るかどうか。なんせただの田舎娘なもので」
「この双子を従えるだけで、一苦労よ。今までの家庭教師より何倍もいい。失敗したらまた違う道を探せば良いだけの事」
ケビン様はそう、口を大きく開けて笑っていた。とても豪快な笑いだった。その様子は何となくジャックを思わせる気配がある。
「二人とも、走らなくても良い、歩いていればいつかはゴールへたどり着く」
二人はそれを聞いて、ポカンとしていた。この言葉は『ルーベルクの冒険記』に出てくる一節で、努力が苦手な青年へ向けた言葉だった。私もこの言葉が大好きだ。この言葉が分かるようになるのはきっと大人になってからだろう。
「では、子ども達を頼みたい」
「最善を尽くします」
「それと、ここでは気楽に暮らすと良い。無理はしないように。傷にも障るだろう」そうケビン様はにっこりと笑って出て行った。
「ねえ、今日は何をするの?」
「わ、私と一緒に社交ダンス踊りましょう!」私は手をグッと握って言った。
「そんなことやるの?貴族で、できない奴の方が少ないだろう」ファミールが呆れて言った。
私はその言葉がぐさりと刺さってきた。そりゃそうだ。社交ダンスを踊れない女なんかいないだろう。私は二人に頭を下げた。
「私は、家庭教師という職業をしていながら、子爵家の娘でありながら、社交ダンスが全く踊れまないのです」
『え…』
二人はそう声を漏らしてから、良く分からないという顔をしていた。
『なんで踊れないの』
五歳児にそういわれても仕方がない。
「私は、勉強という勉強に執着した結果。勉強以外の事がおろそかになってしまったのです」
「そんなこと、私たちが、教えてあげるわ」
「その代わり、僕の知らないことをいっぱい教えてくれ」
「もちろんです」
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