【完結】妹ばかり愛され追い出された姉ですが、無口な夫と暮らす日々が幸せすぎます

コトミ

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 三年が経った頃、私とジェラールの間には一人の息子が生まれたことで、義母は私に何も言わなくなった。息子の名前はそして息子が生まれたことを報告すると両親がやってきて、散々孫を可愛がった後に、カタリナが離婚したという話をしてた。離婚したのちは、帰ってきて家に住み続けているということだ。そして本当に久しぶりに冷静にカタリナがいない場所で三人で話をした。

「ずっとセラフィナに甘えていたの。貴方は何も言わない、面倒事も起こさない子だったからね」
「カタリナを王宮へ連れて行ったのはいくつだったか覚えてるか?」
「そんなの覚えてない。まだまだ幼かった」

 今更私に近づいてくるということに対する、ふつふつとした怒りが湧いた。母も父も私には全く構ってこなかったのに、今更両親は私に媚を売り始めた。私がジェラール様の子を産んだことで私とジェラール様との間に。簡単には離れられない約束事のようなものが出来たからかもしれない。

「あの時はもっと生活が安定したら、セラフィナも連れてこようと思った」

 申し訳なさそうに白髪まみれになった頭を撫でながら父は言った。そんな顔したって許されると思っているの?嘘なんていくらでもいえる。

「だけど、カタリナが成長していくにつれて、あの子の癇癪癖がひどくなって、私達でもどうしようもなくなっていた」

 俯いた母は小じわが増え、膝の上に置かれた手も欠陥が浮き出て、シミが出来ている。小さいころ母に握られた手は真っ白で柔らかかった。

「特にあの子は貴方に酷い対抗心をあらわにしていたの。カタリナは貴方に嫉妬していたのよ」
「どうして?カタリナは私より良い生活をしてきたじゃないの。それなのにどうして嫉妬する必要があるわけ?私の方が嫉妬してもおかしくないくらいよ」

 でも分かっているの。確かにカタリナにはないものを私は持っているかもしれない。それは

「すべてはあの子の責任だって私達も分かっているわ。でも平等に接するには難しすぎたの。少しでもあなたに愛情を注げば、すぐにカタリナは癇癪を起し、不安定になった。だからあなたを守るためには、私達はこれしか方法を思いつかなかった。ごめんなさい。愚かな私達を許してなんて言わないけれど、愛情がないわけではなかったことを知ってほしいの」

 ただ黙って私は考えていた。私にはマーサがいたし、案外幸せだった。自分の特性をかえられる人間というのは少ないし、私の知らないところでカタリナはもっとひどい人間なのかもしれない。でもそれをカタリナ自身が自覚するということはきっと遠い未来の話でしょうし、将来的に変化するかなんて誰にも分らない。両親を責める権利はあるけれど、それを行使したところで私の過去が変わるわけじゃない。

「カタリナにはなんて言ってここまでやってきたの?」
「友人のところへ行ってくるって、話したわ」

 カタリナは両親が私のところへ顔を出すことさえも嫌なのね。

「確かにお母様とお父様になぜ愛されないのかを悩んだこともあったけれど、今は幸せだから構わないの。それに本当の話を聞けただけで私は十分よ」
「セラフィナ、本当に苦労を掛けた。この結婚だって、すべて」

 これらが両親の本音だとは思わない。どこかに建前があって、嘘をついているかもしれない。あの家から私を追い出したのも事実、カタリナが結婚しなくなったからと私が結婚させられたのも事実。両親が私をないがしろにしているかもしれない。

「これからカタリナはどうするの?」
「どうするって?」
「このまま家に居続けるじゃ、お父様もお母様も大変でしょう?」
「でも、これからどうこうできるって話じゃないわよ。どうすればいいのか分からないし」

 今までどれぐらいカタリナが両親に頼ってきたかなんて知らないけれど、もっと世界を知った方が良い気がするわ。

「働かせたらどう?」

 二人とも眉を顰めた。

「私はマーサと二人きりで住んでいた時、料理を作るのを手伝ったし、洗濯もね。買い物だってやった。それは貴族のすることじゃないけれど、人と関わり合いながら様々なことを学んだわ。カタリナも王宮で働けとかメイドとして働けなんて言わないけど、どれだけ人に頼って生きているのか分からせたらどう?」

 この提案に案外二人は納得したようだった。カタリナは王宮の方が住み慣れているし、そっちへ戻って色々やらせてみると話していた。カタリナが何かしら変われば行けれど、そう簡単じゃないでしょうし。運良く物事が運ぶのを願うしかないわね。

「ママ」
「どうしたのノーマン?」 
「お花あげる」
「ありがとう」
 
 私の茶髪に、海よりも澄んだ青い瞳。鼻筋や頬にはソバカスが散っていて、何でも興味を示して知識を吸収していく。
 タンポポを受け取って、中庭にかけていくノーマンを眺めていた。こんなに純粋無垢な子を、上手く育てられるかしら。こんなにひねくれた私が。
 ふと隣へジェラールがやってきた。

「お仕事は終わったんですか?」
「ああ」

 彼の方に頭を預けて、ため息を吐いた。相変わらずその瞳はノーマンと同じように澄んでいて美しい。変わったところと言えば髪型をオールバックにしたところ。前より顔が見えるようになったけれど威圧感が増している。目の傷もはっきり見えるし。

「私、この子をちゃんと育てられるかしら」
「俺はお前よりもっと自信がない。どうやって相手をすればいいんだ」

 思わず笑ってしまった。ノーマンはまたタンポポをちぎって、こちらポテポテと歩いていてくる。

「どうやって育てられたかった?」

 タンポポを握りしめた手をジェラールへ伸ばした。

「あい、あげる」
「ああ」
「ありがとうでしょ」

 小突くと「ありがとうな」と言った。ノーマンはにっこりと笑ってまたタンポポを探しに出かけた。

「俺は褒められたかった」
「じゃあ、そうすればいいのよ」

 私はジェラール様の腕を抱きしめるように握った。左手にはめられたエメラルドの指輪を見つめた。

「ねえジェラール様」
「なんだ」
「こんな日が続けばいですね」
「そうだな」
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