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俺はノアと会食を行う事となった。そこにこれから結婚するらしい女性も出席していいかと聞かれた。ふとエリーゼの事が頭を掠めたが、そんなことあるはずがない。もしあるとしたら、俺はどうすれば良いというのだ。エリーゼに戻ってきてくれなんて言えない。エリーゼがノアと結婚したならば、エリーゼの両親はあちらの国に着くだろう。
まさかあるとは思えない想像が現実になるなんて思いたくもない。あいつはそこまで積極的じゃないし、男との関係なんてうまいわけがない。
「フィル、会食私は出席しなくてもいいかしら」
「は?何言っているんだ」
久しぶりに仕事が早く終わり、ベリンダと二人で晩酌をしているときだった。珍しくリアムが一人で部屋で寝たらしいので、本当に久しぶりに晩酌をした。
「だって、私嫌なんだものあの人。怖くて睨まているみたいで全然食事が喉を通らないの」
「だからって、そんなことできるはずないだろ」
「ねえ、会食ってそんなに大切なこと?」
大切に決まっているだろ。俺たちの国の命がかかっているというのに。何を呑気なことをベリンダは言っているのだ。ベリンダがこの国を守ってくれるわけでもないのに。
「だって、ただご飯食べるだけでしょ?私難しい話よく分からないし」
「ダメだ。会食は出席してくれ。何のための王妃だと思っているんだ」
「そうだけど、私とても苦手なの。最近は肌の調子だって悪いし、髪だって全然ケアできてない。これで人前に立つなんて嫌よ」
「じゃあ、リオルの教育も乳母に任せたらいいだろう。家庭教師だって、リアムの事をしっかり育ててくれるはずだ」
「それじゃあ、ダメよ。あの子きっと耐えられない」
それを聞いて俺はどんどんイライラとしてきた。なぜベリンダは俺の言う事を聞いてくれない?今までは全部俺の言う事を聞いてくれていたのに。俺が良しとすれば、ベリンダだって良しとしていたはずなのに。
「あのな、王族なんだ。嫌なことも、耐えられるように育つのが王族なんだ。リオルなら大丈夫さ。僕と君の子だ。きっと耐えられる」
「私、リオルにはのびのび育ってほしいのよ!だって、こんな王族のしきたりに縛られて生きるなんて可哀そうでしょう?」
「でも、それが王族だ。国の未来を背負っていくんだから」
「それはそうだけど。でもあの子は人より発達が遅いし。それに私はもっと子供を生めるわ。リオルじゃなくても良いでしょ?」
長男じゃないとダメなんだ。なぜベリンダはそれが分からない。
「なんで俺の言う事を聞けないんだ!ベリンダ、王族は長男じゃなくちゃいけない。それがルールなんだ!リオルは俺の王位を継がなければいけなんだ!」
「国のために王族のしきたりを破るのも、一種の策なんじゃないの?」
「お前に、王族の何が分かるんだ!男爵令嬢だったくせに!」
おもわずそう口走ってしまった。頭の中で血が勢いよく駆け巡り、心臓へと舞い戻っていく。その感覚が酷く残っている。
するとベリンダは持っていたコップを勢いよくテーブルに置いた。「ゴン!」という音が部屋に響いた。
「貴方が王妃は楽って言ったんでしょ!私は優雅な生活ができると思って、貴方と結婚したのに!」
「お前今更何を言い出すんだ。俺の事を愛しているんじゃないのか」
「愛してるけど、そんなこと…」
ベリンダは悲しそうな、情けなさそうな表情をすると、頭をぐしゃぐしゃに掻きむしった。魂が抜けたようにベッドに倒れこみ、布団にくるまって眠ってしまった。
俺にどうしろって言うんだよ。やっぱりエリーゼを呼ぶしかないのか?でもエリーゼがどこに言ったのかも全然分からない。目撃証言も舞踏会の会場から屋敷まで送った運転手だけ。それだけでどうやって見つけ出せというのだ。あいつはもう死んでいるのかもしれない。
生きていたとしても、地球の反対側にいないとも言い切れないし、どうしたって。
「エリーゼを探しているんでしょ?」
「なんで知っているんだ?」
「もう野垂れ死んでるに決まってるでしょ。あの冷徹な帝王と結婚なんてできるわけないのよ。探すだけ無駄よ。今まで探していなかったのに今更探すなんて、ほんと貴方って嫌な人よね」
俺はため息ばかりが出てきた。なんでベリンダは何もわかってくれないのだ。俺の事も何も知らないくせに。知ったような口を聞いて。俺のイエスマンのはずだろ。
まさかあるとは思えない想像が現実になるなんて思いたくもない。あいつはそこまで積極的じゃないし、男との関係なんてうまいわけがない。
「フィル、会食私は出席しなくてもいいかしら」
「は?何言っているんだ」
久しぶりに仕事が早く終わり、ベリンダと二人で晩酌をしているときだった。珍しくリアムが一人で部屋で寝たらしいので、本当に久しぶりに晩酌をした。
「だって、私嫌なんだものあの人。怖くて睨まているみたいで全然食事が喉を通らないの」
「だからって、そんなことできるはずないだろ」
「ねえ、会食ってそんなに大切なこと?」
大切に決まっているだろ。俺たちの国の命がかかっているというのに。何を呑気なことをベリンダは言っているのだ。ベリンダがこの国を守ってくれるわけでもないのに。
「だって、ただご飯食べるだけでしょ?私難しい話よく分からないし」
「ダメだ。会食は出席してくれ。何のための王妃だと思っているんだ」
「そうだけど、私とても苦手なの。最近は肌の調子だって悪いし、髪だって全然ケアできてない。これで人前に立つなんて嫌よ」
「じゃあ、リオルの教育も乳母に任せたらいいだろう。家庭教師だって、リアムの事をしっかり育ててくれるはずだ」
「それじゃあ、ダメよ。あの子きっと耐えられない」
それを聞いて俺はどんどんイライラとしてきた。なぜベリンダは俺の言う事を聞いてくれない?今までは全部俺の言う事を聞いてくれていたのに。俺が良しとすれば、ベリンダだって良しとしていたはずなのに。
「あのな、王族なんだ。嫌なことも、耐えられるように育つのが王族なんだ。リオルなら大丈夫さ。僕と君の子だ。きっと耐えられる」
「私、リオルにはのびのび育ってほしいのよ!だって、こんな王族のしきたりに縛られて生きるなんて可哀そうでしょう?」
「でも、それが王族だ。国の未来を背負っていくんだから」
「それはそうだけど。でもあの子は人より発達が遅いし。それに私はもっと子供を生めるわ。リオルじゃなくても良いでしょ?」
長男じゃないとダメなんだ。なぜベリンダはそれが分からない。
「なんで俺の言う事を聞けないんだ!ベリンダ、王族は長男じゃなくちゃいけない。それがルールなんだ!リオルは俺の王位を継がなければいけなんだ!」
「国のために王族のしきたりを破るのも、一種の策なんじゃないの?」
「お前に、王族の何が分かるんだ!男爵令嬢だったくせに!」
おもわずそう口走ってしまった。頭の中で血が勢いよく駆け巡り、心臓へと舞い戻っていく。その感覚が酷く残っている。
するとベリンダは持っていたコップを勢いよくテーブルに置いた。「ゴン!」という音が部屋に響いた。
「貴方が王妃は楽って言ったんでしょ!私は優雅な生活ができると思って、貴方と結婚したのに!」
「お前今更何を言い出すんだ。俺の事を愛しているんじゃないのか」
「愛してるけど、そんなこと…」
ベリンダは悲しそうな、情けなさそうな表情をすると、頭をぐしゃぐしゃに掻きむしった。魂が抜けたようにベッドに倒れこみ、布団にくるまって眠ってしまった。
俺にどうしろって言うんだよ。やっぱりエリーゼを呼ぶしかないのか?でもエリーゼがどこに言ったのかも全然分からない。目撃証言も舞踏会の会場から屋敷まで送った運転手だけ。それだけでどうやって見つけ出せというのだ。あいつはもう死んでいるのかもしれない。
生きていたとしても、地球の反対側にいないとも言い切れないし、どうしたって。
「エリーゼを探しているんでしょ?」
「なんで知っているんだ?」
「もう野垂れ死んでるに決まってるでしょ。あの冷徹な帝王と結婚なんてできるわけないのよ。探すだけ無駄よ。今まで探していなかったのに今更探すなんて、ほんと貴方って嫌な人よね」
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