平凡を望んだ私が、なぜ侯爵と結婚して、溺愛されることとなったのか?

コトミ

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第九話

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 冷たい空気が漂い始め、暖炉に火がともり始めた時、ケイトはソフィの16歳までの誕生日まで待つこととなった。それまであと一か月の猶予があり、頻繁にソフィのお屋敷にやってきては、入り浸っていた。そのたびに一輪の花とプレゼントを渡していた。
 その日もプレゼントを持ってやってきた。プレゼントは両手で抱えるほどの包装された箱だった。
 なんだか、どんどん大きくなっている気がする。

「何度も言っておりますが、いりません。プレゼントはもう持ってこないでください。花だけで結構です」
「いったい何を渡せば、喜んでいただけるのか」

 普通の男であればため息を漏らしながら怒るところだけれど、この人はなぜか恍惚とした表情を浮かべて、とても喜んでいる。単純に気持ち悪い。

「プレゼントで愛を伝えるなんて、私は好きではありません」
「では、今度は愛を綴った詩を書いてくるよ」
「それもいりません」

 全くこの人は外見と地位以外に取り柄はないのかしら。
 持ち帰らせるのも嫌だったために、ソフィは仕方がなくその箱を受け取ってため息を吐いた。

「それにしても今日は、いつにもまして可愛らしい」
「別に、可愛くはないと思いますけど」

 そんな風な会話を一通りして、屋敷の中へと向かい入れる。メイド達も、お父様もこの様子に慣れてしまって、メイド達は毎回貰うプレゼントの数々を楽しみにしていた。私の物だけれど。
 二人は窓際の部屋で向かい座り、
 
「そう言えばケイト様、いくつですか。そう言えば聞いていませんでしたよね」

 19とか、18とかかな。私と年が変わらなさそう。
 そんなことを思いながらメイドが用意した湯気が立ち上る紅茶を掴み、口まで運んだ。

「27だよ。大人だろう」

 そう言われソフィは飲んでいた紅茶を噴き出しそうになった。紅茶が気管のおかしなところへ入り、ゲホゲホとむせた。
 
「ちょっと、大丈夫?」

 に!?にじゅうななぁ!?

「なんで、二十七歳なのに、結婚してないんですか!本当に侯爵ですか!?貴方それでも貴族ですか!?」
「女性は20歳までに結婚するかもしれないけど、男は30歳までは猶予があるから」

 そ、そうなの?男性も女性と同じで結構すぐ結婚する物だと思っていたけれど。確かに考えてみたら、女性は妊娠するから、若いうちに結婚するだけで、男性は違うの?
 でも、そんなことが肝心じゃなくて、この人、本当に変態なんじゃないの!?十歳も違う私に求婚して、婚約したってこと!?

「本当に、変態…?」
「ふふ、そんなことはないと思うけど」

 罵倒されて、嬉しそうにしないでほしい。
 胸ポケットからハンカチを取り出したケイトはソフィの口を、丁寧に四つ折りにされたハンカチで拭こうと、手を伸ばした。

「結構です」

 自分のハンカチでソフィは口元を拭いた。
 もしかしてこの人は私のことを妹ぐらいに思っているのではないのかしら。妹のようなものだと思われているということはない?それなら合致がいくんだけど。

「今度、舞踏会へ行くのだけれど、一緒に行かないかい?」

 この人と、舞踏会?
『なんで、こんな赤毛の女が』『釣り合わない』『可哀そうなケイト様』『ソバカス女!』
 無理無理無理無理!

「すみません」
「わかった」
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