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第十八話
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目を覚まして私はベッドの横に置いてある椅子にエリックが座っていることに気が付いた。ラフなシャツに身軽そうな黒のパンツ姿。両腕を組んで、ウトウトと頭を揺らしている。
「父と、母は?」
目を覚ましたエリックは椅子から立ち上がり両腕を高く伸ばしてから、大きく息を吐いた。立ち上がった椅子から、新聞がぽつんと座っていた。それから平然とした様子で私を見た。その緑色の瞳は怒りを孕んでいるようだった。
「死んでなかった」
怒りなどよりも先に私は安堵が体の中に巡り、硬直していた体がから力が抜け、ベッドに沈んでいくように感じた。目頭が熱くなって、涙が零れた。
「よかった、死んでなかった」
手で涙を拭いて、大きく息を吸った。
立って腕を組んだままエリックは床を見つめていた。その背中は少し怖いと感じた。ピリピリとした空気が肌でもわかる。今までにないぐらいに彼は憤りを感じている。恩師である父を侮辱されたと感じたから?私があんなに大げさにしなければ、もっと冷静だった。嘘だってわかったはずなのに。
「誰から二人が死んだと聞いたんだ?」
「それは、ミーナという女性から」
「フィリップ伯爵の愛人か?」
「…そう」
それを聞きエリックは手を握りしめて、壁まで歩いていくと、握りしめた拳で壁を殴りつけた。部屋に振動が伝わり、驚いて布団を握りしめた。
「くそ、あいつ、嘘つきやがった。ぶっ殺してやる」
「ぶって、しかも殺すだなんて、穏やかじゃないわ」
面白がったためだろう。キッと睨まれて、でもすぐその顔はすぐに緩んで、ため息が漏れた。
「俺はもう我慢ならない。伯爵からは止められていたが、あの人はまだ帰ってこない」
今までにないほどに低い、声色だった。
「どういうこと?」
踵を返して、私のところまでやってくると、起き上がろうとする私の肩を掴んで、ベッドに無理やり寝かされ、布団をかけられた。私は手で彼の手首を強くつかんだ。
彼は少し驚き、眉をしかめた。
「貴方が私に隠し事をするのが嫌でたまらないのよ。私が無能だとでもお思いで?今、体はとても弱っているけれども、頭は冴えてるわ」
まるで叱られてしまった子供の様に、黙ったまま俯いてしまった。
「ねえ、貴方は何が心配なの?何を恐れているの?」
彼の骨が浮き出た両手を包み込むように握った。
「手紙の中でも、ここでも貴方は私にとても優しいわ。私があなたの迷惑になることも分かってる。でも隠し事はしないで。私は大丈夫」
ため息を吐き目元を強くこすったエリックはソファに置いていた新聞を私の方へ投げて渡した。その新聞はミランダ・ローズが書いているものだった。その中には表紙に、私とエリックの関係のことが大々的に書かれていた。精神がおかしくなった私が、父親が亡くなったと勘違いして、半狂乱になったと、そう書かれていた。
持っていた新聞の端を握りしめ、新聞には大きくしわが寄った。
「大量の手紙も来てる。止めようとしたが、止められなかった」
「いいえ、貴方が悪いわけじゃないでしょ。何も謝ることないわ」
それにしても、私よりもエリックに対して酷い書かれようだ。まるでエリックのことを酷く恨んでいるようにも見える。
「ねえ、彼女に何かしたの?こんなにひどく書く必要ある?」
「ある」
まさかそんなことないと思っていたので、思わず「はあ」と声が漏れた。何をしたのかということは聞かなかった。エミリアが言っていた荒れていた時代に何かあったのだろう。
「私が半狂乱になったって書かれているけど、みんなこう思っているってわけよね?ミーナのことは誰も分からなかったの?」
「いや、言ったが、フラン家がミーナの奴をかくまって、そんな奴を入れていないと。それに人が多すぎて、どうにもならなかった」
顎を触りながら端から端まで新聞を眺めていると、エリックに新聞を取られてしまった。
「貴方はこれから何をするつもりなの?」
「何って?」
「私のために何化かてくれようとしているのでしょう?何をする目的なの?」
それを聞き私は小さく笑ってから「最終的な目的」と聞いた。エリックは私と向き合い、ため息交じりに言った。
「フィリップ領をウィットビル領にしたい」
「優しい人ね。私の生きがいを奪い返してくれるだなんて」
「元々伯爵は私にくれる予定だったらしい。あの人はすでに領地をくれると手紙で教えてくれた。でもあの人はまだ帰ってこない」
なんだか楽しそうな気がしてきて、私はにっこりと笑った。
「面白そうね。じゃあ、これから何をするの?」
「ミランダ・ローズに書いてほしい記事がたくさんあるが、希望薄だろうな」
「私に良い案があるわ」
カールやフラン子爵ほどに秘密が隠されている人間はいない。それにマリー夫人のこともいろいろ明かされることになるだろう。
「父と、母は?」
目を覚ましたエリックは椅子から立ち上がり両腕を高く伸ばしてから、大きく息を吐いた。立ち上がった椅子から、新聞がぽつんと座っていた。それから平然とした様子で私を見た。その緑色の瞳は怒りを孕んでいるようだった。
「死んでなかった」
怒りなどよりも先に私は安堵が体の中に巡り、硬直していた体がから力が抜け、ベッドに沈んでいくように感じた。目頭が熱くなって、涙が零れた。
「よかった、死んでなかった」
手で涙を拭いて、大きく息を吸った。
立って腕を組んだままエリックは床を見つめていた。その背中は少し怖いと感じた。ピリピリとした空気が肌でもわかる。今までにないぐらいに彼は憤りを感じている。恩師である父を侮辱されたと感じたから?私があんなに大げさにしなければ、もっと冷静だった。嘘だってわかったはずなのに。
「誰から二人が死んだと聞いたんだ?」
「それは、ミーナという女性から」
「フィリップ伯爵の愛人か?」
「…そう」
それを聞きエリックは手を握りしめて、壁まで歩いていくと、握りしめた拳で壁を殴りつけた。部屋に振動が伝わり、驚いて布団を握りしめた。
「くそ、あいつ、嘘つきやがった。ぶっ殺してやる」
「ぶって、しかも殺すだなんて、穏やかじゃないわ」
面白がったためだろう。キッと睨まれて、でもすぐその顔はすぐに緩んで、ため息が漏れた。
「俺はもう我慢ならない。伯爵からは止められていたが、あの人はまだ帰ってこない」
今までにないほどに低い、声色だった。
「どういうこと?」
踵を返して、私のところまでやってくると、起き上がろうとする私の肩を掴んで、ベッドに無理やり寝かされ、布団をかけられた。私は手で彼の手首を強くつかんだ。
彼は少し驚き、眉をしかめた。
「貴方が私に隠し事をするのが嫌でたまらないのよ。私が無能だとでもお思いで?今、体はとても弱っているけれども、頭は冴えてるわ」
まるで叱られてしまった子供の様に、黙ったまま俯いてしまった。
「ねえ、貴方は何が心配なの?何を恐れているの?」
彼の骨が浮き出た両手を包み込むように握った。
「手紙の中でも、ここでも貴方は私にとても優しいわ。私があなたの迷惑になることも分かってる。でも隠し事はしないで。私は大丈夫」
ため息を吐き目元を強くこすったエリックはソファに置いていた新聞を私の方へ投げて渡した。その新聞はミランダ・ローズが書いているものだった。その中には表紙に、私とエリックの関係のことが大々的に書かれていた。精神がおかしくなった私が、父親が亡くなったと勘違いして、半狂乱になったと、そう書かれていた。
持っていた新聞の端を握りしめ、新聞には大きくしわが寄った。
「大量の手紙も来てる。止めようとしたが、止められなかった」
「いいえ、貴方が悪いわけじゃないでしょ。何も謝ることないわ」
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「ねえ、彼女に何かしたの?こんなにひどく書く必要ある?」
「ある」
まさかそんなことないと思っていたので、思わず「はあ」と声が漏れた。何をしたのかということは聞かなかった。エミリアが言っていた荒れていた時代に何かあったのだろう。
「私が半狂乱になったって書かれているけど、みんなこう思っているってわけよね?ミーナのことは誰も分からなかったの?」
「いや、言ったが、フラン家がミーナの奴をかくまって、そんな奴を入れていないと。それに人が多すぎて、どうにもならなかった」
顎を触りながら端から端まで新聞を眺めていると、エリックに新聞を取られてしまった。
「貴方はこれから何をするつもりなの?」
「何って?」
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