8 / 21
7
しおりを挟むいよいよ、待ちに待った、花火大会当日。
朝、起きたときは、どんよりした空で、雨が心配だったけど…
花火には、影響なさそうで、ホッとした。
あの雨の日以来、学校で、彼女の姿を捜したけれど…
まだ、見つけることが、出来ないでいる。
ツヨシにも、聞いてみたけど…
そんなに、綺麗な人いたか?
と、逆に言われて、
俺自身… 本当に、あったことだったのか、不安になってきた。
「おーい、こっち、こっち」
まことに、手招きされ、
数人のグループの姿がみえた。
「おう、お待たせ」
普段は、男と間違うくらいの、カッコいいまことが…
今日は、さすがに、浴衣を着ていて…
不思議に、可愛く見えることに… 少し、あわてた。
「とりあえず、先に、腹ごしらえしようぜ」
「そうだな!」
と、視線を見回した先に…
白地に、牡丹の花の浴衣姿で、輝く瞳の… 美しい 彼女がいた。
俺は、思わず、ツヨシのわき腹を、肘でつついた。
「何すんだ…」
最後まで言えずに、
口をあんぐり開けた、まぬけ顔のツヨシがいた。
「あら、また会ったわね」
優しい声で言われ、心がふるえた。
「どーも…」
間違いない、彼女だ。
「紹介するね。うちの姉貴」
「エーッ、お前の姉貴!?」
ふたりの顔を、見比べても…
全然、似てない…。
まことは、ひまわりみたいなイメージだけど…
彼女は、白い百合が似合いそう。
ツヨシも、そう思ったようで、視線を動かしながら、ソワソワと、落ち着かない。
「姉の、橘 まりあです」
… まりあさん。
名前まで、素敵です。
夢じゃないよな…
会えて良かったー。
「真聖、ホントに… 綺麗な人だなぁ」
「うん、そうだろう」
「なんで、今まで、気づかなかったんだ?」
ツヨシも、見覚えがなかったらしく、首を傾げている。
「それはね、転校生だから…」
「えっ、転校生!?」
「そうなの、真聖君と一緒」
「あっ、ああ~、奇遇ですね」
あれ?
俺… 名前… 言ったっけ?
『妹に、聞いたんだろ!』
あっ、そうか!
だからなんだ…
あの、まことの意味ありげな笑い。
知ってたんなら、早く、教えてくれればいいのに…
「何、食べる~?」
現実に引き戻され、腹が減っていたことを思い出した。
「俺、たこ焼き!」
『オレも、たこ焼き、食いたい』
食いたいって、言われても…
こんなに人が多いんだ、無理だな。
『1個くらいなら、バレないって』
お前のことだから、1個じゃ、我慢できないだろ?
『そんなことは… ないぞ!』
いいや、絶対、無理だ。
《ドーン、ドドーン、パラパラパラ》
突然の大音響で、飛び上がり、ビックリしていると…
クスクスと笑い声が聞こえてきて、
「花火、始まったわね」
思ったより、近くに、まりあさんがいることに、ドギマギした。
「俺、花火みるの、初めてなんで…」
照れながら、言うと…
「実は、私も」
と、可愛くウィンクされ、さらに、興奮してしまった。
「風邪、ひかなかった?」
何を言われたのか、一瞬、考え込んだ…
あの雨の日を思いだし、覚えていてくれたことに、感激した。
《ドーン、ヒュルヒュルルー》
次々に上がる花火を見ながら、心は、まりあさんでいっぱいになり…
むしろ、まりあさんを見ていたくて… 持っていた、たこ焼きが、不自然に消えていることに気づかなかった。
「真聖、いつの間に、食ったんだ?」
はっ、何、言ってんだ。
ちゃんと、ここにあるだろう。
見ると、無くなっていた…
まだ、1個も食ってないのに…
茶々丸?
ダメだって、言っただろ!
『ボーッとしてるから』
だからって、誰かに見られたら…
大変なんだぞ!
『大丈夫だって、気にしすぎ』
そんな茶々丸を、うらめしく思いつつ、
「俺、たこ焼き好きだから、一気に…」
「そんなに、好きだったのか?」
「ああ、食い足りねぇから、また、買ってくるわ」
「おう、わかった」
《ド、ドドーン、ドンドン》
《ヒュー、パンパン、ドーン》
ツヨシに背を向け、たこ焼きを買いに走りながら…
まさか… まりあさんは、見てないよな?
と、気になった。
そんな俺の頭の上を、不思議そうに見つめる…
まりあさんがいた。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる