あっち向いてホイっ!

ありま

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 いよいよ、待ちに待った、花火大会当日。
 
 朝、起きたときは、どんよりした空で、雨が心配だったけど…
 
 花火には、影響なさそうで、ホッとした。
 
 
 あの雨の日以来、学校で、彼女の姿を捜したけれど…
 
 まだ、見つけることが、出来ないでいる。
 
 ツヨシにも、聞いてみたけど…
 
 そんなに、綺麗な人いたか?
 
 と、逆に言われて、
 
 俺自身…  本当に、あったことだったのか、不安になってきた。
 
 
「おーい、こっち、こっち」
 
 まことに、手招きされ、
 
 数人のグループの姿がみえた。
 
「おう、お待たせ」
 
 普段は、男と間違うくらいの、カッコいいまことが…
 
 今日は、さすがに、浴衣を着ていて…
 
 不思議に、可愛く見えることに…  少し、あわてた。
 
「とりあえず、先に、腹ごしらえしようぜ」
 
「そうだな!」
 
 と、視線を見回した先に…
 
 白地に、牡丹の花の浴衣姿で、輝く瞳の… 美しい 彼女がいた。
 
 俺は、思わず、ツヨシのわき腹を、肘でつついた。
 
「何すんだ…」
 
 最後まで言えずに、
 
 口をあんぐり開けた、まぬけ顔のツヨシがいた。
 
「あら、また会ったわね」 
 
 優しい声で言われ、心がふるえた。
 
「どーも…」
 
 間違いない、彼女だ。
 
「紹介するね。うちの姉貴」
 
「エーッ、お前の姉貴!?」
 
 ふたりの顔を、見比べても…
 
 全然、似てない…。
 
 まことは、ひまわりみたいなイメージだけど…
 
 彼女は、白い百合が似合いそう。
 
 ツヨシも、そう思ったようで、視線を動かしながら、ソワソワと、落ち着かない。
 
「姉の、橘  まりあです」
 
 …  まりあさん。
 
 名前まで、素敵です。
 
 夢じゃないよな…
 
 会えて良かったー。
 
「真聖、ホントに…  綺麗な人だなぁ」
 
「うん、そうだろう」
 
「なんで、今まで、気づかなかったんだ?」
 
 ツヨシも、見覚えがなかったらしく、首を傾げている。
 
「それはね、転校生だから…」
 
「えっ、転校生!?」
 
「そうなの、真聖君と一緒」
 
「あっ、ああ~、奇遇ですね」
 
 あれ?
 
 俺…  名前…  言ったっけ?
 
『妹に、聞いたんだろ!』
 
 あっ、そうか!
 
 だからなんだ…
 
 あの、まことの意味ありげな笑い。
 
 知ってたんなら、早く、教えてくれればいいのに…
 
「何、食べる~?」
 
 現実に引き戻され、腹が減っていたことを思い出した。
 
「俺、たこ焼き!」
 
『オレも、たこ焼き、食いたい』
 
 食いたいって、言われても…
 
 こんなに人が多いんだ、無理だな。
 
『1個くらいなら、バレないって』
 
 お前のことだから、1個じゃ、我慢できないだろ?
 
『そんなことは…  ないぞ!』
 
 いいや、絶対、無理だ。
 
《ドーン、ドドーン、パラパラパラ》
 
 突然の大音響で、飛び上がり、ビックリしていると…
 
 クスクスと笑い声が聞こえてきて、

 「花火、始まったわね」
 
 思ったより、近くに、まりあさんがいることに、ドギマギした。
 
「俺、花火みるの、初めてなんで…」
 
 照れながら、言うと…
 
「実は、私も」
 
 と、可愛くウィンクされ、さらに、興奮してしまった。
 
「風邪、ひかなかった?」
 
 何を言われたのか、一瞬、考え込んだ…
 
 あの雨の日を思いだし、覚えていてくれたことに、感激した。
 
《ドーン、ヒュルヒュルルー》
 
 次々に上がる花火を見ながら、心は、まりあさんでいっぱいになり…
 
 むしろ、まりあさんを見ていたくて…  持っていた、たこ焼きが、不自然に消えていることに気づかなかった。
 
「真聖、いつの間に、食ったんだ?」
 
 はっ、何、言ってんだ。
 
 ちゃんと、ここにあるだろう。
 
 見ると、無くなっていた…
 
 まだ、1個も食ってないのに…
 
 茶々丸?
 
 ダメだって、言っただろ!
 
『ボーッとしてるから』
 
 だからって、誰かに見られたら…
 
 大変なんだぞ!
 
『大丈夫だって、気にしすぎ』
 
 そんな茶々丸を、うらめしく思いつつ、
 
「俺、たこ焼き好きだから、一気に…」
 
「そんなに、好きだったのか?」
 
「ああ、食い足りねぇから、また、買ってくるわ」
 
「おう、わかった」
 
《ド、ドドーン、ドンドン》
 
《ヒュー、パンパン、ドーン》
 
 ツヨシに背を向け、たこ焼きを買いに走りながら…
 
 まさか…  まりあさんは、見てないよな?
 
 と、気になった。
 
 そんな俺の頭の上を、不思議そうに見つめる…
 
 まりあさんがいた。
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