あっち向いてホイっ!

ありま

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 一面の黒い人だかり…
 
 何なんだぁー。
 
 この、人の多さは…
 
 身動きがとれない。
 
 初詣って、こんな人ごみの中を歩くだけなのか…?
 
 
「おい、ツヨシまだか?」
 
「う~ん、もうちょっとかなぁ」
 
「さっきから、そればっかりなんだけど…」
 
 ちっとも、前に進まない。
 
 あっちもこっちも、頭、頭ばっかりで…  何にも見えない。
 
 一体、この先に何があるんだ?
 
 
『たこ焼きまだか?』
 
 しっ!  静かに!
 
 見りゃあわかるだろ、まだだよ。
 
『いい加減、あ・き・た』
 
 しょうがないだろ、こう人が多いと、行きたいところにも行けないし…
 
 俺だって、好きこのんできたわけじゃない…疲れたぁ。
 
 こんなことなら、家で寝てた方がマシだった…  来なきゃ良かったなぁ。
 
 
「ひょっとして、真聖じゃない?」
 
 誰だよ、俺の名前を呼ぶのは?
 
 ウッヒョっ~!?
 
「まこと!  なんでいるんだぁ?」
 
「何でって、初詣以外の何にみえるんだぁ?」
 
「ああ、そうだった」
 
 
「あけましておめでとう、真聖君」
 
「あっ、あけましておめでとうございます、まりあ先輩」
 
 平然と言ったつもりだったが…
 
 突然のことで、俺の心臓は、急速に息苦しくなった。
 
 バレてないよな…?
 
 久しぶりに会った、まりあ先輩は、相変わらず綺麗で…  その微笑みに見とれてしまった。
 
 こんな所で会えるなんて…  正月そうそう、ラッキー‼
 
「真聖、ひとり?」
 
「いや、ツヨシと来たけど…」
 
 あれ、いない。どこいったんだ?
 
 おっかしいなぁ?
 
「はぐれたのか?」
 
「どうやら、そうらしい」
 
「それは、淋しいわね」
 
 俺としては、まりあ先輩といられる方がうれしいから、このままでも、全然いいんだけど…
 
「あけましておめでとうございます!」
 
「あれっ?  君はあの時の…?」
 
 あのお姫様抱っこは、キョウレツ過ぎて…  忘れらんないよ…。
 
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「ふたり、知り合いだったの?」
 
「知り合いっていうか、まあ、ちょっと…」
 
 言えるわけないじゃん。あんなこと、男にとっては、一生の恥。
 
 頼むから、内緒にしててくれよ。という、俺の願いが通じたのか、あのことは、言うつもりがないらしい…
 
 ただ、ニコニコと笑っている。
 
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 世の中狭いなぁと実感する。
 
「妹のみお。春から、うちの高校に入る予定」
 
「予定じゃなくて、絶対入るもん!」
 
「はい、はい、わかりました」
 
 言い方が可愛くて、思わず笑ってしまった。
 
 それが気に入らなかったのか、にらまれてしまった。
 
 そんな顔も全然怖くないから、また、笑いそうになって、あわてて我慢した。
 
 
『たこ焼は?』
 
 だから、もうちょっと待てって。
 
『もうちょっと…って、どんくらいだよ?』
 
 本当にちょっとだから…
 
 
 そのまま、まりあ先輩達と話ながら進むと、やっと、俺たちの番がきて…
 
 並んで願い事をしている横顔を盗み見ていると、なんだか胸がドキドキして落ち着かない。
 
「あのー、この後どうしますか?」
 
「私は、帰るわ。真聖君は、どうするの?」
 
「俺は、ちょっと…たこ焼を買おうかと…」
 
「たこ焼、好きなの?」
 
「はいっ、めっちゃ好きです」
 
 俺、なんで、たこ焼好きをアピールしてんだろ?
 
「お~い、真聖~。どこ行ってたんだよ、捜したぞ!」
 
「悪ぃ、気がついたら見失ってた」
 
「見つかって良かったよ」
 
 ハァハァと、息切れしてまで、捜してくれたんだなぁ…申し訳ない。
 
 
 
「あれ~、よく見たら、まりあ先輩じゃないですか?  奇遇ですね」
 
「あけましておめでとう、ツヨシ君」
 
「私もいるんだけど…」
 
「ああ、まこともいたんだ」
 
「いたら悪いかよ」
 
 全く、このふたりは、会えばいつもケンカになるんだよな。
 
 
「あれっ?  このちっこい子は?」
 
「私の妹のみお。」
 
「エーッ、お前の妹?  マジかよ、可愛すぎだろ」
 
「いいえ、ホントです。近所でも有名な美人三姉妹です」
 
「…美人三姉妹って、ふつう自分で言わないだろ」
 
「春から、うちの高校に入るらしいぞ」
 
「ホントか?  それは、楽しみだなぁ」
 
 どうやら、ツヨシは一目惚れしたらしく、それからしばらく、みおちゃんの話ばかりしたがり、まことに、うざがられていた。
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