あっち向いてホイっ!

ありま

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 あっという間に、クリスマスの季節がやってきた。
 
 今年は、暖冬らしく、コートいらずで過ごしている。
 
 
 まだ、雪を見たことがなかったので、楽しみにしていたのに…
 
 すごーく、残念。
 
 
「クリスマスの予定は?」
 
「…  あるわけないだろ」
 
「しょうがない。男だけで集まるか?」
 
「まあ…  うん」
 
「せっかくだから、プレゼント交換もやっちゃう?」
 
「二人でやるのは、つまんないだろ」
 
「二人じゃないよ。バンドの奴らと一緒さ」
 
 
 …  バンド…。
 
 
 思い出したら、鳥肌がたった。
 
 あの時の演奏は、圧巻だった。
 
 すごかったぁ~。
 
 
 文化祭以来、俺は、ギターを練習していて…
 
 楽器の難しさを実感している。
 
 だから、バンドの連中を尊敬している。
 
 せっかくだから、仲良くなって、教えてもらおうかな?
 
 なんて、都合のいいこと考えてる。
 
 
『なあ、クリスマスって、たこ焼き食うか?』
 
 たこ焼き…  どうだろう?
 
 俺だって、初めてだから…  わかんないよ。
 
『じゃあ、プレゼント交換って、なんだ?』
 
 それも、わかんねぇ。
 
『…  大丈夫か?』
 
 まあ、なんとかなるでしょ…
 
『お前は、ホントに、お気楽だな』
 
 お気楽で結構!
 
 
 今朝から、降り始めた雪が、いい感じに積もっていて…
 
 これが、ホワイトクリスマスというらしい。
 
 今年は、見られないと思っていた雪が…  感動だぁ~。
 
 思わず、立ち止まり、食べたくなるほど、きれいだなぁ~。
 
 
 
 パーンッ!  パーンッ!
 
「メリークリスマス」
 
 ウォーッ!
 
「自己紹介しとこうか?」
 
「そうだな。ドラムのアマネです」
 
 背が高くイケメン、眼鏡かけてて、頭良さそうにみえるな。
 
 たしか、リーダーだったはず。
 
 
「ボーカルやってます。ソウタっす」
 
 文化祭の時も、お元気キャラで、一生懸命、盛り上げてたよな。
 
  
「ベースのタクミです」
 
 マイペースで、あまり、周りを気にしないタイプにみえるなぁ。
 
 でも、演奏はカッコ良かった。
 
 
「真聖です。よろしく」
 
『オレ、茶々丸』
 
 お前は、いいの。
 
 おとなしくしてろ!
 
『チェッ、つまんねぇ』
 
 
 
「文化祭の演奏、すっげーよかったです。感動しました」
 
「ありがとう。うれしいよ」
 
「それで、あのー、お願いがあるんですけど…」
 
「なに?」
 
「ギター、教えてほしいんですけど…」
 
「ギターなら、ツヨシだろ」
 
「悪ぃ、俺、教えるの下手でさ。アマネ頼むよ」
 
「ウーン、でも…  今は無理だな、残念だけど…」
 
「そっかぁー、じゃあ、今度、時間あるときでいいよ」
 
「わかった。それでいいなら」
 
 
 
『おい、腹へったぞ‼』
 
 わかった、わかった。
 
 今日は、たこ焼きパーティーだ。
 
 最近、たこ焼きばっかなんだけど…  不思議と、あきないんだよ。
 
 
「そろそろ、たこ焼きやらねぇ?」
 
「ああ、そうだった」
 
「でもよ、クリスマスに、たこ焼きって…  変じゃねぇ?」
 
「いいじゃん、たまには」
 
「まあ、嫌いじゃないけど…」
 
「俺も、初めてだな」
 
 
『いや~、うまい!』
 
 お前、早すぎ!?
 
 皿に取ってからにしてくれ!
 
『すまん、つい…』
 
 誰も、見てなかったみたいだけど…
 
 
「うん、やっぱうまい」
 
『ホント、うまくて止まらん、ウッ』
 
 おいおい、全部、食うなよ。
 
『おぉ、そうだった。気をつける』
 
「おい!これ、すっげー辛いんだけど…」
 
「そんなわけ…  うわー辛い」
 
「わさび入れたんだけど、うまいだろ?」
 
「まあ、確かに、うまいけども、ちょっと、入れすぎじゃねぇ」
 
 
「こっちは、メチャクチャ甘いぞ!」
 
「ああ、たぶん、チョコだな」
 
 冷静に、アマネが分析している。
 
「チョコ~!?  まずくはないけど…」
 
「あと、バナナもいれてるから」
 
 悪びれずに、笑顔のソウタが言った。
 
「いつの間に、そんなに、色々入れたんだ?」
 
「まあまあ、気にしない、気にしない」
 
『オレ、辛いのはムリ…』
 
 お前も、食ってたのか?
 
 食い意地はってるからだぞ…
 
『でも、チョコとバナナは、いけるぞ』
 
 はいはい、わかりました。
 
 それでも、控えめに頼むよ。
 
「かっら~、まただ。チョコどれだよ~」
 
 
 さっきから、ツヨシは、わさびしか食えてない。
 
 かわいそうに…
 
 
「たぶん、ここの黒っぽいやつ」
 
「ホントだろうなぁ?  チェッ、バナナだった」
 
 
「あっれ~、気のせいかなぁ、さっき、たこ焼きが浮いてたような?」
 
 まっ、まずい!?
 
「あっち向いてホイっ!」
 
「なんだあ、いきなり?」
 
「いや~、急にやりたくなって」
 
「それにしても、あっち向いてホイっ!なんか、全然やらないぜ」
 
「そっ、そうか?  たまには、いいんじゃない」
 
「まあ、クリスマスだし、楽しきゃいっかぁ」
 
 
 なんとか、ごまかせたらしい…
 
 
 
「あっ、そうだ。真聖は、初詣どうする?」
 
「どうするって?」
 
「一緒に行く?」
 
 初詣?
 
 行ったことがないんだから、どうするも何もわかんないよなぁ…
 
『行ったらいいじゃん、何事も経験だぞ』
 
 …  そうだな。
 
「俺、初詣…  行ったことないんだけど…」
 
「行ったことない?  1度も?」
 
「ああ、…  1度も」
 
「まあ、行ってみりゃあ、わかる」
 
「そうそう、夜中に、ちょちょっと、神社に行くだけだからさ」
 
「神社ねぇ、行ってみるか」
 
「よーし、決まり!」
 
 
『たこ焼きあるかな?』
 
 お前、本当に…  好きだな。
 
 さっきは、ごまかせたからいいけど…  今度やったら、留守番な!
 
『そんなこと言うなよ~、ワルかった、すまん』
 
 
 初めてのクリスマスは、ものすごく楽しいうちに終わってしまった。
 
 それにしても、本当に気をつけないと、いつか、バレそうだよな…。
 
 
 この雪景色、一生の思い出だ。
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