あっち向いてホイっ!

ありま

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 カラフルな風船や、色とりどりの花が飾られた門をくぐると…
 
 
 そこは、別世界だった。
 
 
 焼きそばやフランクフルト、ソフトクリーム、かき氷等々、いろんな店があって…  もちろん、俺の大好きな、たこ焼きもあって…
 
 なんて、すごい!
 
 プログラムを片手に、ゆっくり、見て回るのは、楽しそうで、わくわくする。
 
 
 科学の実験コーナーだったり、誰でも出来る護身術だったり…
 
 トリックアートも、不思議で…  興味深かった。
 
 見るもの、全てが初めてで…
 
 興奮度、MAX‼
 
 そのなかでも…
 
 一番、楽しみにしてたのは…
 
 もちろん、ツヨシのバンドだけど…
 
 午後からなんだよね~。
 
 遊ぶ時間をけずってまで、練習を頑張ったんだから…
 
 すごく、期待している。
 
 
『たこ焼き、食わせろ!』
 
 お前は、また、それか?
 
『それが楽しみだろ』
 
 わかったけど、もう少し、後にしてくれ。
 
『なんでだよ?』
 
 クラスの当番で、午前中は、教室にいることになってるから…
 
『そんなの、いなくても、わかんないだろ?』
 
 そういうわけにいかないの。
 
 決まったことだから。
 
 お前、こっちに来てから、わがままになったんじゃないか?
 
『気のせいだ』
 
 
 
「あっれ~?  たこ焼き、減ってる?」
 
「自分で食べたんだろ」
 
「そうだっけ?」
 
「おっかしいなぁ~?」
 
 そんなやり取りが聞こえてきて、
 
 たこ焼きを持ってた人が近くにいたらしい…
 
 もしかして、お前?
 
『なんのことだ』
 
 また、勝手に食ったな?
 
『バレたか…』
 
『……すまん』
 
 バレてないみたいだけど…
 
 本当に、こんなこと、やめてくれ。
 
 せっかくの文化祭が、楽しめなくなる…。
 
 
『ホントに、悪かった』
 
 この先、大丈夫かなぁ~。
 
 
 
 ステージにいるツヨシは、緊張しているようだが、
 
 たくさんの観客に興奮もしているようで…
 
 見ているこっちが、ドキドキしてくる。
 
 ドラムの音で始まった1曲目、よく店とかでよく流れてる、アップテンポの元気がでるやつ。
 
 タイトルは…  覚えてない。
 
 皆は、ノリノリでリズムとってる。
 
 次のは、少しテンポをおとした曲で今度は、聞き入ってるようだ。
 
 ツヨシは、想像以上に上手で、俺は、くぎ付けになった。
 
 他のメンバーも、完成度が高く、練習の成果がでていると思った。
 
 しかも、皆…  カッコよく見える。
 
 俺も、あのなかに、いたかったとちょっとだけ後悔した…
 
 
 ラストは、誰もが知ってる曲だったので、会場全体が大合唱になった。
 
 こんなに、盛り上がるなんて、期待以上にすばらしい。
 
 
 楽器なんて、嫌だと思ってた自分が恥ずかしい。
 
 とたんに、感動に震えていることにも気づき、ひそかに…
 
 
 俺も、ギターをやってみようと、決心していた。
 
 
『だから言っただろ!』
 
 そんな言葉が聞こえて…
 
 悩む前に、やったら、よかったんだよな~。
 
 本当に、そうだと思った。
 
 今まで、出来ないことが、当たり前だったのに、こっちに来て、出来ることが増えて、調子にのってたかも。
 
 
「ツヨシ!  カッコよかったぞ。」
 
「おう、サンキューな」
 
 ツヨシのやりきった、満足げな顔を見ていると…
 
 不思議とやる気が出て来て…
 
 帰りに、ギターを見に行こうと思った。
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