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8. 新入生=春嵐もしくは大迷惑
新入生=春嵐もしくは大迷惑 ④
しおりを挟む放課後になって、晴日たちのクラスに十玖と美空は呼び出された。
ただ来いと言われただけで、詳細は何も知らされてない。
晴日たちのクラスに来て、美空が驚きの声を上げた。
「佳くん!? 何。ここに入学したんだ?」
「美空さん! お久しぶりです!!」
それまで晴日や竜助と談笑していたのが、美空の登場でより明るい顔をして走り寄って来る。十玖は肘で美空を突っつき、目で誰なのか訊ねていた。
「冨樫佳くん。涼ちゃんの弟」
「涼さんの…」
「トークさんですね。佳です。よろしく」
佳が人懐っこい笑顔を浮かべ、握手を求める。十玖は若干人見知り気味に、その手を握り返した。
ワイルド系の男くさい涼に比べ、細身で優しい面立ちをした少年。
ニコニコと張り付いた笑顔。放そうとした十玖の手を一層強く握った佳の目が、強い光を帯びて見えた気がした。
十玖は息を飲んで佳を見据える。
「佳くん。まだやってる?」
美空が写真を撮るジェスチャーをすると、佳は十玖の手を放して向き直った。
「もちろん。写真部に入ります。美空さんは? もちろん写真部ですよね?」
「当然。あたしに他の何があるのよ」
「ですよねぇ」
「ですよぉ」
二人は見合ってケラケラ笑う。
十玖は、何か重いものを飲み込んだような、表現しがたい気持ちになった。
「そう言えば涼ちゃんの赤ちゃん、大きくなったでしょ?」
奥さんの真奈実が退院してから、みんなでお祝いに行った。それから何回か涼から写メが届いていたが、最近のはまだだ。
「写真ありますよ。見ますか?」
「見る見る。見せてぇ」
佳のスマホを覗き込んで、美空は楽しそうにしてる。十玖は写真を覗く振りして、さり気なく美空を後ろから抱きしめた。美空は十玖を見上げる。
「真秀ちゃん大きくなって、また可愛くなったよね」
「うん。そうだね」
チラリと佳を見る。特に変わった様子はない。
(気のせいだった…?)
何かを嫌だと感じて、思わず牽制に美空を抱きしめたのだが。
「どれどれ。俺たちにも見せてよ」
晴日たちが加わり、美空を中心にして一塊になった。
わいわいと真秀の写真を見ながら、晴日が十玖に「気付いたか?」と耳打ちした。訝し気に晴日を見ると、彼は肩を竦めて佳へと視線を促す。
「…やっぱり?」
「やっぱり」
引きつった顔で晴日を見ると、眉を持ち上げ「どうする?」と言わんばかりに首を傾いだ。
晴日の“美空に近づく悪い虫撃退センサー”の性能は抜群にいい。
気のせいじゃなかった。
美空を抱く手に力が入る。彼女に頬を寄せ、佳を上目遣いで見た。
佳の眇めた眼差し。目が合って、男の目だと確信した。十玖に向けられているのは嫉妬。
これ見よがしに十玖は美空に耳打ちする。彼女は真っ赤になって「ばか」と十玖を小突いた。
「何イチャついてんだよ。バカップル」
竜助は十玖の頬を引っ張った。
「痛いですよぉ」
「とーぜん。人目も憚らずイチャイチャと」
「今更じゃないですか。ねえ美空?」
美空は真っ赤になったまま何も答えない。晴日は十玖の袖を引っ張った。
「おまえ何言ったわけ?」
「内緒です。知りたかったら、美空に訊いてみて下さい」
「美空が素直に教えるかよぉ」
「じゃあ諦めて下さい。美空と二人の秘密なんで」
言いながら美空の頭頂にキスする。
「うっわ。ムカつくー。俺もハグしたくなってきた」
しかし萌はここにいない。
一年生の入部はまだなのだが、萌は陸上部に春休みから参加していた。それだけ期待されているのだろう。一つくらいは取り柄があるものだ。
晴日は不気味な笑顔を浮かべる。察知した竜助が後退り、隣にいた佳を前に押しやった。
「え…リュウさん!?」
「悪い」
晴日に差し出された佳はまんまと抱き着かれ、喚き声をあげる。その間に竜助が「逃げるぞ」と荷物を持って、二人に手招きした。
「リュウさん、ちょっと待って!」
呼び止めるも虚しく、三人はさっさと教室を出て行ってしまった。
「ちょっハルさん。離れて下さいよ~お」
しばらく晴日に抱き着かれたまま、佳は身動き取れなかった。
半分諦めた頃、晴日が背中をポンポンした。
「ハルさん?」
「佳。美空はダメだよ」
にこっと笑って佳から離れた。肩に手を置いて、もの言いたげな佳を制す。
「おまえに美空は無理」
「無理ってどおゆう意味ですか!?」
「まんまの意味」
さっきの笑みはない。近寄りがたい空気が晴日に纏わりついて、佳は息を飲んだ。
じゃあな、そう言って晴日は教室を出て行った。
納得できないが、晴日にケンカを売る度量もない。佳はその場に佇んだ。
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