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第三章 アンドロメダ編
第二十九話 寝よう
しおりを挟む俺はアンドロメダの過去を見て賢者ケトスを殺すと決めた。
いや、殺さないといけないんだ…。
「アンドロメダ、俺が強くなるにはどうしたら良い?」
あれから少し休憩した後、隣に座るアンドロメダに聞く。
「んー、とりあえず私と融合したので何が変わったか教えるよ。自分の強さ知るのは大切でしょ?」
「わかった。」
そういえば体の外観に気がとられすぎて能力が変わっている事に気がついてなかった。
確かに以前よりも力がかなり増してる気がする。
「じゃあ話すよ。まずは一番変わったのは魔力量だね。君は異世界人?だったから魔力量がかなりって言うかほぼなかったけど私の魔力も少しずつ流れるようになってるからすっごい増えてるよ。多分一日に天級の魔術を撃ち続けても魔力切れしないんじゃないかな?」
「す、すげえ…!」
今まで俺は少なすぎる魔力を''魔力生成''でカバーしていたため、なんとか中級までは使えていた。
しかし、それが限界だ。上級まで行くと速攻で魔力切れになった。
それなのに天級を撃ち続けられるって…。
魔術は初級→中級→上級→天級→神級という順に強くなっていく。
実際は上級までが今の魔術の限界で天級、神級を使える魔術師など手で数えられるぐらい少ないと聞かされてた。
それを俺が…我ながら恐ろしいな。
「それと戦闘中、私もサポートできるようになったからかなり負担が減ると思う。''魔力生成''も私が使うから気にしなくていいよ。これで魔力の問題は解決だね!ほぼ無限なんだし。」
「……むげん!」
''無限''という言葉に心が少し子供になってしまう。
だって無限なんだぜ?憧れるじゃん。
しかしこれを聞けば俺は最強のチート野郎だと思うかもしれない。
でも俺じゃあ賢者には勝てない。
分かるんだ。いくら魔力が多くても意味がない。
アイツを殺せるほどの技量がなければいけないんだ。
「あとは…私と力を合わせても全然変わらないのは身体能力だね…。何も変わってないと思うから気をつけて。」
「おう…。」
そこが一番のネックだな…。
俺とアンドロメダ、両方ともインドア派なので全く運動ができない。
いや、俺とアンドロメダを同視するのは失礼か。
「それと、その腕だけど…どうする?回復魔術じゃ治らなさそうだけど…。」
アンドロメダが腕に目を向けた。
「大丈夫。そこは任せてくれ。考えがあるんだ。」
賢者にやられた腕。
断面は闇魔術で千切られたため、真っ黒になっている。
回復魔術じゃ治せないならどうするって?
大丈夫、ちゃんと考えがある。
待っててくれ。
「ほんとに?じゃあそうなとこだね。今は一回休んで修行は明日からにしよう。ね?」
「いいけど…遅くなりすぎないか?」
あんまりのんびりはしてられない。
早く出なければ…。
「そこは安心してよ。ここは本の中だから現実と時間軸が違うんだ。ここでの一年は向こうでの一ヶ月ぐらいなんだよ。」
「おお…まるで…」
「精神と○の部屋、でしょ?」
セリフをとられた。
だけどまあ…この子の楽しそうな顔が見れれば十分だな。
「分かった。じゃあ今は寝るよ…。って君も寝た方が良いんじゃないか?」
目の前で大きなあくびをして目を擦ってるアンドロメダに言う。
「あれえ…おかしいな。今まで眠ったことなんてないのに…。」
首をこくりこくりとしているアンドロメダの手を取る。
「一緒に寝よう。」
「う…ん…。」
眠そうな彼女にかわり、俺は頭の中で強く念じる。
「寝室…寝室…寝室…!」
すると目の前でカーテンの仕切りがついたベッドが一つ現れた。
「これ…俺が昔使ってたベッドじゃん。」
アンドロメダと俺が融合してるならこんな事も可能だと踏んだがやはりいけたようだ。
引きこもり時代、愛用していた懐かしのベッドに飛び込み、寝転がる。
「おやすみ。」
「んん…おや…すみ。」
アンドロメダはベッドに乗るや否やすぐさま眠りについた。
すうすうと安定した寝息を立て、俺の左腕を抱きしめて。
「この子は…少しでも安心できるようになってほしいな…。」
寝顔は年相応に幼く、かわいい。
あんな壮絶な顔を送っていたなんて考えつかないだろう。
俺がいる時は…安心して…笑って…ほし…い…な…
段々と瞼が下がり、俺も眠りに落ちた。
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