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第三章 アンドロメダ編

第三十一話 成果とプレリュード

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 あれから俺の修行は始まった。
 見事に考えは成功して、腕は元通り。

 しかし、今までのようにはいかない体になったのでまた一から魔術について知る必要があったけどな。

 まずは一日中魔術、それも天級のものをずっと休まずに撃ち続けられるようになること。
 魔力が多くても出来ないんじゃ意味がない。
 自然に魔力の流れを感じ取れるようになり、流れるようなスピードで撃てるようにする。

 それがまず一つ目。

 二つ目はアンドロメダと行う実践形式の戦闘訓練。
 能力が数段階進化しているらしく、''神の書物アンドロメダ''時にもサポートが可能になったのでこれに慣れるようにするものだが…。
 
 これがすげえんだ…。

—————

 「天級!!土+闇!ブラックウォール!」

 地面に手を置き魔術を発動。
 天球になって大きく変わったのは単体でも地形が変えられるほどの力があること。

 敵、修行用に俺の戦闘データから造り上げたイタイタスのダミーを巨大な壁で覆い尽くす。

 コイツにしたのは心置きなくやれるってのもあるけど、何より恐ろしく強いからだ。

 ドームのような土魔術の壁をやすやすとぶち抜いて出てくるイタイタス。
 しかしその壁には仕掛けが仕込んであるんだぜ。

 「……!!」

 空中でイタイタスダミーの動きが止まる。
 そう、この壁には闇魔術が込められているんだ。
 これは前回、賢者にやられたものを利用させてもらった。

 闇魔術の猛毒を食らい、落下していくイタイタスに止めを刺す。

 「よし!''アンドロメダモード''だ!」

 俺は声をあげる。

 『了解!』

 途端、俺の髪色は一気に銀色に染まっていく。呼応するように両の瞳が紫紺に光る。

 ドゴオオオオ!!!

 水色のオーラ、勇者の力を纏った魔術を一撃ぶち込んでイタイタスダミーを撃破した。

 「…よし!」

 するとアンドロメダが本から人へと戻る。

 「うん!順調だね!まさかこんな戦法を思いつくとは…やるなあ…!」

 「アンドロメダが本の状態でと魔法を使えるなら…って思ったんだ。」

 俺の新技''アンドロメダモード''は本を媒介としてアンドロメダの魔力を極限まで俺に流し込むことで一時的に完全融合するもの。

 二つの魂が混ざり合い、莫大なエネルギー量へと成る。

 アンドロメダの''全知全能''も俺へと流れてくるから膨大な魔法の数々、相手の情報、戦法など全てが手に取るように思考できる。

 もちろん俺とアンドロメダの人格交代も可能だ。

 ここまで聞けば最強だと思うだろう?
 しかし俺には一番の弱点があった。

 「だけど''神の書物アンドロメダ''を手から離すと終わりだからね。そこだけは絶対に気をつけてよ。」

 「ああ…うん。」

 そう、俺は本を手放したら終わる。

 ''アンドロメダモード''もあくまで本からアンドロメダのエネルギーを貰い受けているだけ。
 媒介である本が無くなれば即座に解除だ。

 ノーマル状態でいくら魔力が増えても俺は本が無ければ依然変わらず魔法を使う事は出来ない。

 ''死に物狂いで本にしがみつく''それが俺の戦いにおいての鉄則だ。

 「''本の虫ブックワーム''…か。」

 「ん?」

 あの時賢者に言われた言葉をふと思い出した。
 今思えば的を得てるな…。
 でもそれならそれで良い。
 俺が虫ならアンドロメダに近づく他の虫は全て追い払う。 
 悪いが定員一匹までだここは。

 「いや、なんでもないよ。」

 「そっか。あ、それと体の方はどう?慣れてきた?」

 アンドロメダが俺の体を見る。

 「かなり慣れてきたよ。魔力操作が前よりもめちゃくちゃスムーズになったし。」

 「もうここに来て一年、だもんね…。その…ごめんなさい。元はと言えば私たち家族のせいで君にここまでさせてしまうことになって…。」

 アンドロメダが俯いて言う。
 今にも泣きそうな顔だ。

 「君のせいじゃないだろ?俺もあの賢者は絶対許せねえ。だからやる事は俺たち一緒だ。それに今の俺…かっこいいだろ?」

 その場でくるりんと一回転してみせる。
 そしたらやっとアンドロメダは顔を上げた。小さく笑っている。

 「…うん!かっこいいけど今の君はどんどん可愛くなってる気がするするよ。」

 「なッ!?」

 予想外の言葉。
 確かに最近、アンドロメダの魔力が流れているせいか、女の子寄りの体になってきた。マズイ……。

 「んふふ。でも君は本当にこの一年で強くなったよ。」

 「どれくらい?」

 「んーー…。あのイタイタスはヨユーで倒せるし…どうだろう。ロックスとも互角にはやれるんじゃないかな?」

 「おお…!」

 あのイタイタスをヨユーで倒せるようになったのは事実だ。
 アイツにはアルゴーやオシリスたちが世話になったからなあ…
 心置きなくダミーをぶっつぶせた。

 「でもね。」

 アンドロメダが強い口調で言った。

 「ん?」

 「ケトスはもちろんだけどもう一人。
''大魔王アストラ''には注意して。むしろ会ったら逃げた方が良いよ。」

 「アストラ…。」

 昔、ケトスも言っていた最古の魔族の一人。

 「アストラはね…。私の全知全能の力をもってしても能力がわからないんだ。それってはっきり言って異常なんだよ。だから戦おうなんて思っちゃだめ。情報なしで戦う事ほど危ない事ないよ…。」

 「分かった…!」

 首を縦に振るとアンドロメダも頷く。

 「うん。それで良…………え?」

 突然、彼女が目を開く。

 「ん?どうしたんだ?」

 「ケトスが…ケトスを筆頭とした魔族が…!人間に戦争を仕掛けるって…!!」

 アンドロメダの言葉に俺は体が凍りついた。……戦争?

 「な、なんでそんな事…!!??」

 「ケ、ケトスが人間全員にこう伝えたらしいの…。『''本の虫ブックワーム''。私たちとゲームをしようじゃないか。ルールは簡単だ。我々が守るステラーを奪う事が出来ればお前の勝ち。人間が全て滅ぶかお前が死ぬかしたら私たちの勝ちだ。''神の書物アンドロメダ''は返してもらうぞ。お前がどこにいるかは分かっている。しかし早く来ねば…人間は滅んでおるかもしれんな?それともちろん''三王''を参加するぞ。さあゲーム開始だ。』って!!」

 「クソッ……!!!!」

 なにがゲームだ…!ふざけやがって…!
 こんなの一方的な戦争じゃないかよ!

 「マナ、早く戻ってみんなに伝えた方が良いよ。これは戦争だって。どうする?私は準備出来てるけど…!」

 「ああ…すぐ行く!」

 アンドロメダが手をかざす。

 すると空間に穴が開いた。

 「なるべくロゴスの近くに出れるようにしたよ!ベラクレスさんに伝えてあげて!!」

 「分かった!」

 光の穴の方へと走り、中へと飛び込む。

 本棚は消えていき、今まで見えていた空間がベリベリと剥がれていく。

 一緒に走っていたアンドロメダが叫ぶ。

 「私もできる限りサポートするよ!でも…死なないでね…!!」

 俺は頷く。

 その声を最後に周りは完全に剥がれ落ち、新たな視界が広がっていく…。

—————

 「ここは…森か!?」

 見えたのは緑で覆われたたくさんの木々。

 どうやら俺は戻ってきたらしい。

 「…!オシリスたちと初めて会ったとこか…!!」

 ここはオシリスたちとの出会いの場。
 しかし森全体がざわめいている。

 「魔力が…乱れてる…!急がないとやばい…!」

 地を蹴り空へと飛び上がる。
 今の俺なら空を飛ぶ事など容易だ。

 「クソ…!間に合ってくれ…!!」

 ケトスの思惑通りになんかさせない…聖女様を救うんだ…!!!

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