あおいとりん~男女貞操観念逆転世界~

ある

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第一部

36話 『みどり』は実在する

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「私たち、皆で私んちに集まって宿題していたんだけど。
たまたま休憩中テレビを付けたら、鈴木くんが映っていたんだよね」

 と女子の一人が状況を説明してくれた、

「これ鈴木くんじゃない~って皆で注目して。
鈴木くん女の子と一緒だ。
な~んだ、ホントに鈴木くん、女子が好きだったんだ……と始めはガッカリしたんだけど」

「なんでガッカリするのさ……」

 とキョウがつぶやくのが聞こえた。

「でも『どんな連れてんだ?』とじっくり鈴木くんの隣の女の子を見たら……。
『これ佐藤くんじゃない?』ってなって。
『佐藤くんが女装しているんじゃないか!』ってなったんだよね!」

「ね!
ビックリしたよね~」

「いやぁ。
佐藤×鈴木のBL展開無くなった……、と思ってからの~、
どんでん返し!
ミスリードうまい!」

 と女子は私を見ながら親指を立て『イイね!』した。

 そんなつもりねぇよ、と私は思った。

「で。
明日、問い詰めなきゃ~と思って。
テレビに映る2人の写真を撮った」 

 とスマホを――駅構内を歩くキョウと私の写真を――私の前に再び突きつけてくる。

 ぐぬぬ。
 女子ってホントむかつく(私も女子だが)。

 どうしよう……。 
 いや、もうヤケクソでいくしかない、

「おれとみどり、すごい似てるんだよね!」

 と私は少し大きめの声で言った、

「似ているからこそ、おれはみどりが嫌いなんだよね!
だから、みどりの話、友達にはしたことなかったけど。
でもほんとにみどりって姉ちゃんいるから!」

「そうだよ!
みどりちゃんは実在する!」

 と言う声が加勢してくれた。
 キョウとは違う声――女の子の声。

「実はね、私も昨日、一緒にちょっと遊んだんだよね。
みどりちゃんと鈴木くんと!」

 とサキが力強く言った。
 さ、サキ様……!? 
 救世主!?

「たまたま出先で鈴木くんに会ってさぁ。
声かけたら、
『この子、あおいちゃんのお姉ちゃんの「みどり」ちゃん』
って紹介されて。
その後少し喋ったら、みどりちゃんと私、女子同士、意気投合しちゃって……。
しばらく一緒に3人で遊んだんだよね」

 サキは場を見渡した、

「だから、みどりちゃんとあおいくんは別人物、って私にはハッキリわかるよ!」

「疑わしいなあ~」
 
 と女子の一人がサキを見た、

「サキって、佐藤くんのこと……でしょ?
だから、彼のことかばってるんじゃない?」
 
 サキは少し赤くなりうつむいたが(いや。サキって案外皆にバレバレなんだ……と私は気の毒に思った)、顔を上げると握っていたスマホを掲げた、

「じゃあ!
ほら!
コレ見てよ!」

 とサキはスマホを、女子の1人に見せた。

「え、何?」 

 と言いながらその子はサキのスマホをのぞき込む。

「ほら、ココ見て……」

 とサキがスマホ画面を操作している。
 手の動きを見ると、どうやら画面をズームしているようだ、

「あおいくんには、こんなのないでしょ!」

 とサキは力強く言った。

 女子はスマホから顔を上げると私の顔の下あたりをジッと見て、うなづいた、

「たしかに……」
 
 サキは『ドヤ』と言う顔で私をチラリと見る。

 どうやら私を救ってくれたようだが……どうやって?

 女子が次々とサキのスマホ画面をのぞき込み、私を見比べるように見……
 ガッカリした調子で、集まりの輪から抜けて去って行った。

 女子がいなくなった後、私はサキに聞いた、

「皆に何見せたの?」

「別にぃ……」

 と言ってスマホをポケットに入れようとするサキの手を、キョウが握った、

「僕にも見せてよ~」

「ちょっと!
触らないでよ!」

 とサキが怒ると、キョウは手を離し小さく万歳のポーズをしながら、

「触らないから。
見せてよ」

「イヤ……」

 と言うサキを遮るように、

「『みどり』ちゃんの写真?」

 と遠慮がちな声が聞こえてきた。
 その方を見るとりんだった。

 りんは私のすぐ後ろまで来ていて、サキを見つめていた、

「おれも見たいな。
みどりちゃんってどんなか」

 サキはひるんでいる。

「おれも見たい」

「おれも~」

 とケイとハヤトも来て、呑気な声を出す。

 サキはぷ~と頬を膨らませてから、スマホ画面を私たちに見せた、

「男子には見せたくなかったんだけど……」

 とぼやきつつ。

 男子には見せたくない!?

 サキの差し出したスマホの画面には、『みどり』の写真が写っていた。

 『みどり』が、電車のシートに背を預けて寝ている写真のようだが……。

 写真を覗き込みつつ、

「谷間……」

 とキョウがつぶやいた。

「お~」

 とハヤト。

「なるほどね~」

 とケイ。
 
 3人の反応に、遠目でそれを見ていた私もサキのスマホをのぞき込む。

 そこには、遠目で見たとおり『みどり』が電車の中で寝ているのだが。

 じっくり見ると、胸元が開いたカットソーから、胸の谷間をちらつかせながら寝顔をさらしていることがわかる。

 なんだよ、この写真!?

(と言うか、あのカットソー、こんなに胸開くの?)

「そー言えば田中さん。
『みどり』ちゃんの寝顔可愛い~とか言って写真撮っていたけど。
やけにアングル高い位置から撮るなぁと思ったら……。
こんなの撮ってたんだ」

 とキョウがニヤニヤとサキを見た。
 サキは怒る、

「別に谷間を撮ったわけじゃないもん!
寝顔を撮ったんだからね!」

 どちらにしろ盗撮だよ!? (だよね?)

「確かにあおいには、あんな胸の谷間、あるわけないよなあ」

 とハヤトが私の右胸をペタペタ触ってきた。

「かなり大きいと見た。
あの谷間は……」

 とケイも私の左胸を触ってきた。

 ホント男子ってすぐ胸を触る……。

「でも、あおいも意外と胸板は厚いんだよなあ」

 とハヤトが不思議そうに私の右胸をナデナデした。

「『みどり』ちゃんも細そうなのに胸大きいじゃん?
佐藤家の遺伝子なんじゃね?」

 とケイも私の左胸と背中を両手で挟んだ。

 キョウが、私の胸を触る2人の手を取り、私の胸から離してくれた、

「もうその辺で……」
 
 と言いつつ。
 サキを見ると、サキはキョウに向かって小さく親指を立てている――『GJグッジョブ』。

 キョウもそんなサキに小さく親指を立て返しながら、ニコニコ話しかける、

「ね、田中さん。
その『みどり』ちゃんの写真、僕に送ってくれる?」

 サキは露骨にイヤな顔をした、

「何で?」

 キョウは

「えっ……」

 とひるんだ後、笑顔を取り戻し、

「だって……。
みどりちゃんの寝顔、可愛いし」

 サキはやれやれ、のジェスチャーをした、

「だから男子に見せたくないと言ったの」

「どう言う意味?」 

「えっちぃ目で見るからさ……」
 
 とサキは言うと、ジトーッとキョウを見た、

「男子になんかこの写真、送らないよ~。
この写真を見ながら何するつもりなのよ?」

「はあ?
何もしないよ!
たまに見て癒やされるだけだろ!」

「男子なんて信用できないし」

「はあ?
女子がそれ言うか?」

 サキとキョウが仲良くなって何よりだ……と私は現実逃避した。

 サキは結局『この写真は私だけの物だ』と宣言して、この場を去って行った。

「残念だったな、キョウ」

 とケイがキョウに話しかけた、

「おれもさぁ、キョウが写真ゲットしたら送ってもらおうと思ったんだけどなー」

「おれも」

 とハヤトが笑顔で言った、
 
「現実の――身近の――女の子の胸の谷間とか萌えるよな?」

 !?

 谷間が萌える……? 

 脂肪と脂肪の間が萌える……?

「たぶん、送ってもらえたとしても2人には送らない」

 とキョウが目をジトーッとさせながら2人を見た、

「『みどり』ちゃんの写真を見て何するつもりだよ?」

 ケイとハヤトは抗議した、

「何って!
見るだけだろー!?」

「癒やされるだけじゃん」

 キョウは渋い顔をした、

「男なんて信用できない」

 さっきのサキと同じ結論にたどり着いていることに、キョウは気付いているのだろうか?
 と私は他人事のように3人を眺めた。
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