あおいとりん~男女貞操観念逆転世界~

ある

文字の大きさ
38 / 74
第一部

38話 エスパーりん

しおりを挟む
 授業が終わると、りんと私は帰路に着いた。

 キョウは一緒じゃない。
 キョウが転校してきたのは先週の火曜で今は翌週の月曜だから、転校初日から一週間ほど経つわけだが。
 彼とは一緒に帰ったり帰らなかったり、まちまちだ。
 都合が合わないと言うか、キョウはあまり規則的な行動をとらないのだ。
 その場その場で適当な相手と一緒に帰っている印象……。
 サキと一緒に帰っているところを見たこともある。
 仲良いの?
  
 どうやら今日もキョウはサキと一緒に帰るようで、2人が一緒に歩いて行く方から、『トレード』とか言う言葉が漏れ聞こえてきた。

「僕には田中さんにはない『入手ルート』があるんだ」

 とキョウは『ぐぬぬ』顔のサキに得意げに話していた。
 一体何の話をしているのだろう? 

 と言うわけで。
 りんと私は2人で駅までの道を歩き始めた。
 色んな話をする。
 授業の話。
 テレビの話。
 漫画の話。
 ゲームの話。

 楽しく話していても、一瞬沈黙が降りるときがある。
 そんなとき。
 私が他の話題を探しているとき。
 りんがふと言った。

「なあ、あおい……」

「ん?」

 と私は上機嫌でりんを見上げたが。
 りんは真っ直ぐ正面を見たまま、

「みどりちゃんって。
あおいだよな?」

 とだけ言った。
 
「……」

 私は唐突なりんの言葉の意味がわからず、一瞬思考をストップさせた後。 
 理解した途端サァーッと血液が引いていくのを感じた。

「えっ……」

 と変な笑いを口元に浮かべながら、私がつぶやくと。
 りんは私をチラリと見、私が動揺しているのを見ると目を見開き、身体を強ばらせた。

 どうやら私の動揺を感じ取り、りん自身も『もらい動揺』(?)した様子。
 ほんと良い子……。
 って、そんなこと思っている場合じゃない!

「えっと……」

 と私が言うと、

「いや……」

 とりんも言う。
 二人とも口ごもる。
 
 しばらく沈黙が続いた後、

「別に……。
責めてるわけじゃない……」

 とりんは小さく言った。

「えっと……」

 と私が言葉を探しているうちに、りんは続きを言う。

「女子は『クラスメートに隠すことない』って言ったけど。
それは、良いと思う。
隠したいと思うの、理解できるよ」

 とここで言葉を切ってから、りんは私をジッと見つめる。

「でもさ?
おれたちには――ケイとハヤトとおれには――隠すことないんじゃないか?」

 私はりんの真っ直ぐな視線を見つめ返した。
 りんの真面目さが伝わってきて、

『やっぱり良い子。
やっぱり好きだ』

 とか。
 そんなことを考えている場合じゃないのに考えてしまった。
 一種の現実逃避だったのだろうか?

「おれたち、受け入れるのに。
あおいが『男の』でも、キョウと付き合っていても全然今まで通り接するのに」

 どうやらりんは

『「みどり」はあおいの女装』

 と思っているようだ。

 キョウと付き合っていると思われていることは一先ずは置いておいて。

 私が女だと言うことはりんにバレてない様子。
 じゃあ……

「写真は……」

 と私はつぶやいてしまった。
 きっと空気が読めない発言だったのだろう。
 りんは顔をしかめた。

「あの『胸の谷間』の写真?
あんなので騙されたりなんかしないよ」

 とりんは怒ったように言った。
 いや。りん以外はあの写真で納得してくれたと思うのだが……。

「あんなの合成写真だろ?
田中さんがあおいのために、慌ててあおいの写真に胸の谷間を作ったんだろ?」

 とりんはどこかぷりぷりしながら言う。
 
「大体あれ不自然な写真だったし。
華奢なタイプであれだけの巨乳と言うのは、フィクションでしかあり得ないよ」

 そうでもないけどね……。

 探偵りんの推理は続く。

「『みどり』って名前もね?
その場でキョウが慌てて考えた感じ。
あおい、初対面で名前を聞いたとき、
『「みどり」と書いて「あおい」と読むんだ』
と教えてくれたよな?
それ、あおいが自己紹介するときの昔からの常套句パターンなんだろ?
キョウもあおいの自己紹介のことを覚えていて、咄嗟に
『あおいちゃんじゃなくて、「みどり」ちゃん』
とあおいの『姉』の名前を思いついたんじゃないか?」

 合ってないけど、微妙に合っている。怖い。
 でもりんが初めて会ったときに私と交わした会話を覚えていることは嬉しかった……こんなときなのに。

「それに。あおいの弟は『タケル』くんって名前だろ?
あおいの親が子どもに『色の名前』を付けているのなら、タケルくんだって色の名前じゃなきゃおかしい」

 それはちょっと厳しい根拠だが。
 結論は合っているのだ――『あおいに、みどりと言う「姉」はいない』

 推理披露を終えたりんは淡々とした口調に戻すと、

「あおいを『みどり』と言うキョウはもちろん。
合成写真を作ってあおいをかばう田中さんも。
あおいが『男の』ってことを知っているんだよな?
2人とも最近あおいと仲良くなったり、久々に再会したり。
そんな感じなのに。
おれたちは知り合って――友達になって――半年も経つのに……」

 その後の言葉をじっと待ったが、紡ぎ出されることはなかった。

 私はりんを見上げたが、りんは唇をかみしめて全然違う方向を見ていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編6が完結しました!(2025.11.25)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

女子ばっかりの中で孤軍奮闘のユウトくん

菊宮える
恋愛
高校生ユウトが始めたバイト、そこは女子ばかりの一見ハーレム?な店だったが、その中身は男子の思い描くモノとはぜ~んぜん違っていた?? その違いは読んで頂ければ、だんだん判ってきちゃうかもですよ~(*^-^*)

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

処理中です...