あおいとりん~男女貞操観念逆転世界~

ある

文字の大きさ
42 / 74
第一部

42話 告白

しおりを挟む
 ケンカが一段落したところで。
 私はキョウとサキに、共犯者(?)の2人に相談もせずりんに『みどり=あおい』と認めてしまったことを謝った。
 2人はあっさり許してくれた。

「ま。
別に私は加藤くんとそんなに接点ないし。
全然いいよ」

 とサキは言い、

「僕はもともとりんにちょっと嫌われていそうだから別に今更良いよ」

 とキョウは言った。
 私はキョウに反論した。

「別にりんはキョウくんのこと嫌いじゃないと思うけど……」

「いや。
僕、ああ言う真面目な子には嫌われやすいんだよ」

 とキョウが真面目な顔で言うと、

「わかる」
 
 とサキが納得顔でうなづいた。

「私も鈴木くんはちょっとね……。
ちょっと何か軽いと言うか……。
真剣さが足りないと言うか」

 さも自分が『真面目な子』と言うようなサキの口ぶりである。
 確かにサキは優等生だが……。

「田中さんそんなこと言ってイイのかなあ……」

 とキョウはジト目でサキを見ながらつぶやいた。

 するとサキは慌てた様子で、

「ま。でも。
鈴木くんはまあ。
そこが良いんだろうね。
軽めなところが……。
そこがまあ。
ヒトの気持ちを軽くしてくれると言うか。
『これでいいのだ』みたいな。
そう言うところが癒やされる人もいるのかもね」

 とフォロー。
 サキはキョウに何か弱味を握られている模様。

 私はもう一度反論した。

「大丈夫だよ、キョウくん。
りんは私みたいな適当な性格のやつを友達にしたんだから。
キョウくんのこと嫌いじゃないと思うよ」

「いや。
僕とあおいちゃんとじゃ全然性格違うし」

「そうよ。
全然違うよ」

 とサキ。

「同じ適当な性格でも。
あおいくんは『大らか』。
鈴木くんは『軽い』」

 キョウが再びサキにジト目を向けると、サキは焦りつつ愛想笑いし、

「みんなちがって、みんないい」

 名言をこんな形で使うな。


※※※

 しばらく3人で話した後。
 私はキョウの励ましと、サキの、

『何か上手い言い訳をしつつ、ちゃんと謝りなさい』
 
 と言う助言に感謝して2人と別れた。

 その後駅に着くと、自分が乗る電車が次に来るプラットフォームの階段を降りていった。 

 もう少し電車が来るまで時間があるからか。
 もともと利用客の少ない方向へ行く電車のプラットフォームだからか。
 まだ人影があまりない。

 ふとベンチに座る人を見ると……

「りん……」

 と私は声に出さすに唇を動かした。

 どうしてまだ駅にいるんだろう?
 と私は呆然とした。

 キョウとサキと結構長いこと話をしていたのに。
 りんの降りる駅は快速が止まらないとは言え、2、3本くらいもっと早く乗れる電車があったのではないか。

 何でいるんだろう?
 寄り道でもしていたのかな?
 用事でもあった?
 私と一緒に帰るときは――一緒の電車に乗る予定で――そんなこと言っていなかったけど。

 私は胸の動悸が速くなるのを感じながら、ある可能性に行き着いた。
 りんは私のことを待っていた?
 私が駅に来るのを待っていた?
 私と話がしたくて……。
 
 もしそうなら?
 どんな話だろう?

 りんは私に何を言いたいのだろう……。

 覚悟ができていない。
 今、これからりんと話す覚悟ができていない。
 明日まではりんと会わないと思っていたから。
 少なくとも明日まではこの問題から現実逃避できると思っていたから。

 私は卑怯だと思ったけれど、りんに背を向けた。
 りんには悪いけど、彼に気付かれないようこの場を去ろう。
 しかし。
 背を向けて少し歩き始めてから、また思う。

 もしここで私がりんに見つからないよう立ち去ったら。
 りんはずっと私をこのまま待っているんだろうか?
 私が来るまで。
 季節は秋だ。
 まだそこまで寒くは無いとは言え、だんだんと冷えてくる。

 私は再び向きを変えたが、りんのいるベンチへはなかなか足が進まず。
 立ち尽くしてしまった。
 
 不意にりんが顔を上げた。
 さすがのエスパーりん。
 自分への視線に気付いたのかもしれない。
 私と目が合うと、りんは慌てた様子で立ち上がった。
 私に駆け寄ってくる。

 私はドキドキしながら、ぎこちない笑みを浮かべた。

「りん……」

『もしかしておれを待っていてくれたのか?
ごめん……』

 と、言おうとして。

 その前にりんが口を開いた。

「あおい、ごめん」

 と言うと頭を下げる。
 私が戸惑い焦っているとりんは顔を上げ、

「おれ……ほんと何でだろ。
何であおいに手を繫がれただけで、あんなにビックリしちゃったんだろ……」

 と眉を八の字にして。
 それから首をかしげ笑顔で、

「いつも、あおいにくっついてセクハラして怒られているのはおれの方なのに。
あおいの方からされると怒っちゃうなんて。
ほんと……おれイヤなやつだよな」

 違うよ、りん……。
 りんはイヤなやつじゃない。
 ただ、とても勘が良くて……

「ほんとどうかしてた」

 だから私の自分への恋愛感情に気付いた……。

「ほんとごめん」

 でも慎重で自分に自信が無いから、自分の勘を疑って。
 勘違いだと思って。

 あおいに悪いことをしたと思って。
 謝ってくれる。

「りん」

 と私は言った。

「りんは全然悪くない」

 本当に全然悪くないから。
 
「突然、りんの手を握ったりしたおれが悪いんだ……」

 りんは目を細め、

「あおいは本当に優しいね」

 とどこか寂しげな笑みを向けた。

「だからおれ、あおいに甘えてしまうんだよな……」

 と言うと私にさらに近づき……。
 抱き締めてくれた。

 その瞬間。
 いつものように一瞬で身体が熱くなり、幸福感が広がった……が。
 私はりんの肩に手の平を置き、りんの身体を押し返した。
 きっと最後の、りんの胸の感触。
 だけど、十分味わう間もなく、離れ……。

 いや。
 今までがきっと異常だったんだ。
 私は女子なのに、男子のふりをしてりんをだまし。
 りんが自分から来てくれることを良いことに、彼と触れ合うことを自分に許してきた。

 それがそもそも間違っていた。

 りんは私を『女』と知らず、『女』として好きでもないのに。
 そして私は『女』として『男』のりんが好きなのに。
 彼に触れるなんて間違っていた。

 私は、私の抵抗に傷ついた顔をするりんを見た。

「りん。
ごめんね」

 と私は言った。
 りんは沈んだ調子で、

「あおい。
やっぱり怒ってる……よな」

「違う」

 と私は言うと、決心して、

「おれはりんが好きなんだよ」

 その瞬間りんは目を丸くし、それから笑った。

「おれも好きだよ。あおいのこと」

 と茶化すようにりんは言ったが、どこか動揺しているのが伝わってきた。
 りんには私の本心が伝わっている。
 もともと疑っていたからこそ、十分に。

「そう言うんじゃない」

 と私は真剣な顔を崩さずに、

「おれはりんが好き。
恋愛感情で」

 明らかにうろたえ始め、身じろぎするりん。

「あおい……」

「だから……。
今までごめん」

 と私は頭を下げた。

「今まで、りんから触ってきてくれることを良いことに……。
そのままにしていて……。
おれには、りんとは違って、その……友達同士以上の意味があったのに。
りんが触れてくれること内心喜んで……」

 私は勇気を振り絞って、りんを見た。
 りんは切なげな顔で私を見ていて……。

「本当にごめん。
りん……」

「あおい……」

「こんなこと言って。
それに今まで卑怯で。
こんなおれと、りんが友達のままでいてくれるかわからないけど……」

 とそこまで言うとぐっときて黙ってしまった。

 りんもしばらく沈黙した後、

「あおいは悪くない」

 と言ってくれた。

「おれが勝手に――あおいの意思関係なく――あおいのこと触っていただけだし……。
あおいは全然悪くないよ」

 と言うと、りんは私の腕に手を伸ばし触れようと……

 私は身体を後ろに引いた。

「りん。
りんはわかっていないよ」

 と私は傷ついた顔をするりんに言った。

「ちょっとした触れ合いでも。
おれにはすごく嬉しくて……。
りんとは意味合いが全然違う。
だからもう……」

 と私はしかたなく笑いながら、

「だから。
りんの意図とは違う意味になっちゃうから。
おれに触らないで……」

「あおい……」

「さっきは手、握っちゃってごめん……。
気持ち悪かったよね?」

 と私は言うと頭を下げた。

「気持ち悪いなんて、思っていない」

 とりんは言った。

「あおい……。
おれは……」

 ここで電車が来ると言う放送が流れ、間もなく到着した。

 りんと私は電車に乗り込み、隣同士座ったが。
 何も話さなかった。

 りんの降りる駅に着くとりんは私にぎこちなく微笑んで、

「じゃあ、また明日」
 
 と言った。
 私も曖昧に微笑み返す……。

「バイバイ」

 私は彼の背中を見送りつつ『これから』を思った。

 りんは本当に優しい。
 けど、これからもりんは本当に友達のままでいてくれるのだろうか?

 もしりんが友達でいてくれたとしても。
 私はりんと友達のままでいていいのだろうか?

 私はまだ彼が好きだから。
 きっとこれからも……。

 私はうつむくと、こらえていた涙を流し始めた。





〈第一部、終〉
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編6が完結しました!(2025.11.25)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

女子ばっかりの中で孤軍奮闘のユウトくん

菊宮える
恋愛
高校生ユウトが始めたバイト、そこは女子ばかりの一見ハーレム?な店だったが、その中身は男子の思い描くモノとはぜ~んぜん違っていた?? その違いは読んで頂ければ、だんだん判ってきちゃうかもですよ~(*^-^*)

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

処理中です...