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第三部
67話 お花畑?
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昨日は
『言えない』
『絶対に言えない』
『言える気がしない』
などと思ったが。
今、新しい朝を迎えて、
『今日こそ言うぞ!』
と私は決意を新たにした。
『今日こそりんに、私は「実は女」だと言うぞ!』
傷は浅いウチに言わねば。
自分のことではなく、りんのことを第一に考えるんだ。
と言う決意を胸に私は学校への道を歩き出した。
電車でりんと合流後、りんに座席を譲る。
一緒に通い始めてから初めてりんは譲られてくれた。
私の座っていた席に座り
「座席あったかい」
と笑うりんに――語尾にハートマークが付いているのを感じる――、
「てへ」
と私は照れ返した――当然語尾ハートマーク――。
なんだこいつら(バカップルだよ!)。
その後しばらくして、りんは舟をこぎ始める。
寝た!
可愛い。
あんまり寝るイメージなかったけど……やっぱり寝るんだ、とほのぼのする。
もしかすると寝不足なのかもしれない。りんは真面目だから夜遅くまで勉強をしているのかもしれない。
でも。
この距離で――近くで――りんを見ることができるのも今日が最後かもしれない。
と思うと胸が痛んだ。
※※※
終点に着き乗客が電車を降りていく中、りんはまだ寝ていた。
肩をつかみ揺り起こす。
「りん」
りんは目を覚まして寝ぼけた表情でニコッと私を見ると、手を差し出してきた。
……。
!?
何これ。と一瞬思ったが。
ああ、手を引っ張って座席から立たせてくれってことね! と了解し、私はりんの手を掴み、引いた。
手を引いたけど、当然私の力をほとんど借りることなく――私の力ではりんを立たせることはできない――、りんはほぼ自分一人の力で座席から立ち上がる。
そして、手を離さないまま、歩き始めた。
あれ……?
「りん」
「ん?」
「手を繫いだままなのは……人目もあるかなぁ。
と思うんだけど……」
と言うと、りんは
「大丈夫」
と笑った。
「男同士が手を繫いでいても、誰も気にしないよ」
いや、語尾にハートマークを付けられて言われても困るのには変わりない。
それに、男同士でも手を繫ぐのはあんまりないんじゃなかったの? 腕を組むのはあるのかもしれないけど……。
私はドキドキした。
手を繫ぐのはとても嬉しい。
嬉しいけど……。
りん、もしかして今、頭の中お花畑なんじゃないか?
と思った。
舞い上がっていて正常な判断ができていないのでは?
いや。わかる。
私も『ボーイズラブ?』とさえ気付かなければ、今も絶賛お花畑中だったもん。
だからわかるんだけど……。
「ハヤトやケイがおれたちが手を繫いでいるのを見ても、疑わないかな?」
と聞いてみたら、りんは
「大丈夫!」
と自信満々と言う調子で言った。
「高校になってからはあんまりしなくなったけど。
中学のときは普通に友達と手を繫いで歩いていたよ」
そうなんだ……。
じゃあ大丈夫、なのかな……。
いや、でも実際私たちは中学生ではなく『高校生』なのだから、大丈夫じゃないのか?
など色々考えたが、振り払うこともできなかった。
やっぱり嬉しいから。
私って『男の尻に敷かれるタイプ』。
ほんとそう。と改めて自覚した。
※※※
手を繫ぎつつ学校への道を歩きながら考える。
サキもキョウも『りんは手が早そう』と言っていたが。
これは本当にそうかもしれない。
付き合って3日目で手を繫ぐ。早いよね? と思う。
お花畑中とは言え……。
どうしよう。
このままじゃ、もし『実は女』と私が言えなくてもそのうち関係が進展することで女だとバレるかもしれない。
それは最悪のパターンなのではないか……。
りんにきっと心の傷を残してしまう!
つまり、早急に絶対に『実は女』と言わなければならないのだ!
それにしても、りんって、こんなに積極的なんだっけ。と不思議になる。
どちらかと言うと、大人しい子だと思っていたのに。
それに、手を繫ぐのも普通女の方から手を繫ぎに行くものじゃないのかな?
りんみたいな男らしい子が自分から手を繋ぎに来るなんて……。
!?
まさか、りん……。
私は自分の閃いた考えに戦慄する。
りんは『女役』になろうとしているのでは!?
だから、女らしく積極的に関係を深めようとしているのでは……。
ど、どうしよう、もしそうだったら……と私は焦る。
だって、私……
ないもの……(何が?)。
※※※
学校に着き教室へ入りそれぞれの席へ別れるとすぐポンと肩を叩かれた。
振り返るとサキがいて。
親指で教室の扉の方へ指を振ってくる。
教室から出ろ、と言うことだ。
呼び出しも慣れたものだな。
結局またいつもの階段まで来ると、キョウもいた。
ほんと何なのだろうこの二人は、と思った。
仲良いの……?
3人きりになるとサキは早速、
「どうだった?」
と聞いてくる。
キョウも
「言えた?」
と聞いてくる。
『実は女』とりんに言えたか、聞いているのだ。
多分『女と言ったとしたなら情報共有して置いて、りんとの態度を変える必要がある』から、朝呼び出しをしてまで聞こうとするのだろう。
「言えなかった」
と私は正直に答えた。
「そう……」
と二人は訳知り顔で頷きつつ、
「しかたない」
「しかたない」
慰めてくれる。優しい。
「どうしよう……」
と私は、自分で答えがもう出ている――『言うしかない』と答えが出ている――のに聞いてみた。
「ま。いいんじゃないの……。
別に言わなくても」
とサキは言った。
「だって言って万が一加藤くんが怒りまくったら。
あおいくん学校に居られなくなるかもしれないんだから。
言わないのも仕方ないよ」
「僕もそう思う」
とキョウも言う。
「仕方ないよ」
「でも、それならね。
そもそも付き合っちゃダメだよね」
と私はまともなことを言った。
私は元々まともなんだよ!
「う~ん。
まあ。そうだよね……」
とサキは言った。
「確かに……ね」
とキョウも言った。
私はまともな考えを持つ人間だ。
だから全て自業自得とわかっている。
でも、本当のこととは言え同意されると落ち込む。
「りん、ほんとにすごく積極的なんだよね……」
と私は肩を落とした。
「りんって、多分『女役』志望なんだよ……」
とつぶやくと、サキとキョウはきょとんとした顔で私を見てくる。
「『女役』志望って何?」
とサキは言った。
サキはBLに興味なさそうだから知らないんだと思い、説明した。
「ほら。
男同士でカップルになると。
どうしても一方が『女役』で一方が『男役』になるでしょ? 多分(フィクションのBLではそうなんだよ)。
それで、りんは『女役』の方がきっとしたいんだよ。
何て言うか、攻め役、の方……?
だから色々積極的なんだと思う。
りんは今から『女役』を買って出ているんだよ……」
何言ってんだ私。と我ながら思った後。
サキを見ると、まだ『?』と言う顔をしている。
キョウに視線を移しても『?』と言う顔をしている。
「加藤くんはどう見ても、男らしいでしょ?」
とサキは不審げな表情を浮かべつつ聞いた。
「どうして加藤くんが『女役』になりたいと思うのか、よくわからない。
どう見てもあおいくんが女役、と言うか実際女でしょ?」
「でもりんは私のこと男だと思っているでしょ?」
と私は自分を指差した。
「そしてりんは私に男役を望んでいる、んだと思うの」
二人はしばらく後『ああ~』と言う顔をした。
「そうか。
あおいくんは加藤くんがボーイズラブだと思っているから……」
とサキが納得顔で言う。
「あおいちゃん。
りんが『女役』になりたがっていると悩む必要はないよ」
とキョウは言った。
「りんはボーイズラブではないからさ」
「どうしてわかるの?」
と私は驚いてキョウを見た。
「どうして、って……」
とキョウは言うと、サキの方へ視線を移した。
サキは首をかしげて、
「ええと……。
ほら、悩んでいたの知っていたからだよね」
とサキはキョウを指差した。
「そう」
とキョウは頷く。
「りん、あおいちゃんのこと好きな自分は『ゲイなんじゃないか』って悩んでいたからさ……」
「えっ。
そうなの?」
と私は驚いて聞いた。
その後キョウから、りんが『あおいのこと最近気になっているんだけど、おれゲイなのかなあ』と同じくあおいのことが好きと思われるキョウに相談していた、などと聞いた。
そんなことがあったのか……。と思った。
その頃の私はそんなことも知らず、失恋のショックを受け、りんとの関係に気まずさを感じながらも普通に生きていただけだったのだ。
この話でりんがボーイズラブではない? と思った。
少なくとも女も好き、と。
だから、女の私としては喜ぶ所なのかもしれないけど、ますます落ち込んだ。
ますますりんに酷いことしているじゃないか、と思った。
※※※
「そうだ!」
とサキが言った。
「押してダメなら、引いてみろ!
逆転の発想よ!」
「えっ」
と聞き返すと、サキは目を輝かせて言った。
「加藤くんはゲイじゃないんだから。
女の身体であおいくんのことを夢中にさせてしまえば……」
と言ってからハッとすると、サキは手の平を私に向けた。
「ごめん。忘れて」
「今、ものすごく墓穴発言したよね?」
とキョウがサキをジト目で見た。
サキが手で顔を覆う――「失言した」
「えっ。何?
ちょっとわからなかった……」
と言うと
「「わからなくていいよ」」
と二人はニコニコした。
私は不満げに二人をにらんだ後、サキの先程の言葉を振り返ってみた。
『逆転の発想』
『加藤くんはゲイじゃないんだから、女の身体であおいくんのことを夢中に……』
意味わかった!
わかったけど……
「ははは……」
と私は苦笑いした。
「無理だよ、サキ。
女じゃあるまいし、りんは身体で夢中になんかならないよ」
「そんなことないよ!」
とサキは力強く言った。
「あおいくんには、立派なものがあるじゃない!」
立派なもの……。
「胸よ!」
「胸……」
と私はつぶやいた。
「胸を加藤くんに押し付けるのよ!
当ててんのよ戦法よ!」
何言ってんだコイツ。
「さりげなく胸を加藤くんに当てて。
『えっ何コレ、胸……?』
『あおい女だったのか……』
『おれのこと騙していたんだ、ひどい……』
『でも、おっぱい』
『おっぱい気持ちいいから許した』
と思わせるのよ!」
コイツりんを侮辱しているんじゃないか。
「りんはそんな子じゃない……」
と言うとサキは首を横に振った。
「あおいくんはわかっていない。
私はお兄ちゃんがいるからわかるけど、男ってね……」
と言うとサキは口をつぐんで、肩をすくめた。
途中でやめるな!
「だから田中さん、さっきから墓穴掘っているよね……」
とキョウがポツリと言うのをサキは無視して、
「予行練習してみる……?」
と自分の腕を私に差し出してきた。
「予行練習に。
私と腕を組んで、さりげなく胸を当ててみる……?
腕とか、背中に……?」
「目先の快楽のために、自ら暗黒面へと堕ちる……」
とキョウがつぶやき、サキは「うるさい」と言った。
『言えない』
『絶対に言えない』
『言える気がしない』
などと思ったが。
今、新しい朝を迎えて、
『今日こそ言うぞ!』
と私は決意を新たにした。
『今日こそりんに、私は「実は女」だと言うぞ!』
傷は浅いウチに言わねば。
自分のことではなく、りんのことを第一に考えるんだ。
と言う決意を胸に私は学校への道を歩き出した。
電車でりんと合流後、りんに座席を譲る。
一緒に通い始めてから初めてりんは譲られてくれた。
私の座っていた席に座り
「座席あったかい」
と笑うりんに――語尾にハートマークが付いているのを感じる――、
「てへ」
と私は照れ返した――当然語尾ハートマーク――。
なんだこいつら(バカップルだよ!)。
その後しばらくして、りんは舟をこぎ始める。
寝た!
可愛い。
あんまり寝るイメージなかったけど……やっぱり寝るんだ、とほのぼのする。
もしかすると寝不足なのかもしれない。りんは真面目だから夜遅くまで勉強をしているのかもしれない。
でも。
この距離で――近くで――りんを見ることができるのも今日が最後かもしれない。
と思うと胸が痛んだ。
※※※
終点に着き乗客が電車を降りていく中、りんはまだ寝ていた。
肩をつかみ揺り起こす。
「りん」
りんは目を覚まして寝ぼけた表情でニコッと私を見ると、手を差し出してきた。
……。
!?
何これ。と一瞬思ったが。
ああ、手を引っ張って座席から立たせてくれってことね! と了解し、私はりんの手を掴み、引いた。
手を引いたけど、当然私の力をほとんど借りることなく――私の力ではりんを立たせることはできない――、りんはほぼ自分一人の力で座席から立ち上がる。
そして、手を離さないまま、歩き始めた。
あれ……?
「りん」
「ん?」
「手を繫いだままなのは……人目もあるかなぁ。
と思うんだけど……」
と言うと、りんは
「大丈夫」
と笑った。
「男同士が手を繫いでいても、誰も気にしないよ」
いや、語尾にハートマークを付けられて言われても困るのには変わりない。
それに、男同士でも手を繫ぐのはあんまりないんじゃなかったの? 腕を組むのはあるのかもしれないけど……。
私はドキドキした。
手を繫ぐのはとても嬉しい。
嬉しいけど……。
りん、もしかして今、頭の中お花畑なんじゃないか?
と思った。
舞い上がっていて正常な判断ができていないのでは?
いや。わかる。
私も『ボーイズラブ?』とさえ気付かなければ、今も絶賛お花畑中だったもん。
だからわかるんだけど……。
「ハヤトやケイがおれたちが手を繫いでいるのを見ても、疑わないかな?」
と聞いてみたら、りんは
「大丈夫!」
と自信満々と言う調子で言った。
「高校になってからはあんまりしなくなったけど。
中学のときは普通に友達と手を繫いで歩いていたよ」
そうなんだ……。
じゃあ大丈夫、なのかな……。
いや、でも実際私たちは中学生ではなく『高校生』なのだから、大丈夫じゃないのか?
など色々考えたが、振り払うこともできなかった。
やっぱり嬉しいから。
私って『男の尻に敷かれるタイプ』。
ほんとそう。と改めて自覚した。
※※※
手を繫ぎつつ学校への道を歩きながら考える。
サキもキョウも『りんは手が早そう』と言っていたが。
これは本当にそうかもしれない。
付き合って3日目で手を繫ぐ。早いよね? と思う。
お花畑中とは言え……。
どうしよう。
このままじゃ、もし『実は女』と私が言えなくてもそのうち関係が進展することで女だとバレるかもしれない。
それは最悪のパターンなのではないか……。
りんにきっと心の傷を残してしまう!
つまり、早急に絶対に『実は女』と言わなければならないのだ!
それにしても、りんって、こんなに積極的なんだっけ。と不思議になる。
どちらかと言うと、大人しい子だと思っていたのに。
それに、手を繫ぐのも普通女の方から手を繫ぎに行くものじゃないのかな?
りんみたいな男らしい子が自分から手を繋ぎに来るなんて……。
!?
まさか、りん……。
私は自分の閃いた考えに戦慄する。
りんは『女役』になろうとしているのでは!?
だから、女らしく積極的に関係を深めようとしているのでは……。
ど、どうしよう、もしそうだったら……と私は焦る。
だって、私……
ないもの……(何が?)。
※※※
学校に着き教室へ入りそれぞれの席へ別れるとすぐポンと肩を叩かれた。
振り返るとサキがいて。
親指で教室の扉の方へ指を振ってくる。
教室から出ろ、と言うことだ。
呼び出しも慣れたものだな。
結局またいつもの階段まで来ると、キョウもいた。
ほんと何なのだろうこの二人は、と思った。
仲良いの……?
3人きりになるとサキは早速、
「どうだった?」
と聞いてくる。
キョウも
「言えた?」
と聞いてくる。
『実は女』とりんに言えたか、聞いているのだ。
多分『女と言ったとしたなら情報共有して置いて、りんとの態度を変える必要がある』から、朝呼び出しをしてまで聞こうとするのだろう。
「言えなかった」
と私は正直に答えた。
「そう……」
と二人は訳知り顔で頷きつつ、
「しかたない」
「しかたない」
慰めてくれる。優しい。
「どうしよう……」
と私は、自分で答えがもう出ている――『言うしかない』と答えが出ている――のに聞いてみた。
「ま。いいんじゃないの……。
別に言わなくても」
とサキは言った。
「だって言って万が一加藤くんが怒りまくったら。
あおいくん学校に居られなくなるかもしれないんだから。
言わないのも仕方ないよ」
「僕もそう思う」
とキョウも言う。
「仕方ないよ」
「でも、それならね。
そもそも付き合っちゃダメだよね」
と私はまともなことを言った。
私は元々まともなんだよ!
「う~ん。
まあ。そうだよね……」
とサキは言った。
「確かに……ね」
とキョウも言った。
私はまともな考えを持つ人間だ。
だから全て自業自得とわかっている。
でも、本当のこととは言え同意されると落ち込む。
「りん、ほんとにすごく積極的なんだよね……」
と私は肩を落とした。
「りんって、多分『女役』志望なんだよ……」
とつぶやくと、サキとキョウはきょとんとした顔で私を見てくる。
「『女役』志望って何?」
とサキは言った。
サキはBLに興味なさそうだから知らないんだと思い、説明した。
「ほら。
男同士でカップルになると。
どうしても一方が『女役』で一方が『男役』になるでしょ? 多分(フィクションのBLではそうなんだよ)。
それで、りんは『女役』の方がきっとしたいんだよ。
何て言うか、攻め役、の方……?
だから色々積極的なんだと思う。
りんは今から『女役』を買って出ているんだよ……」
何言ってんだ私。と我ながら思った後。
サキを見ると、まだ『?』と言う顔をしている。
キョウに視線を移しても『?』と言う顔をしている。
「加藤くんはどう見ても、男らしいでしょ?」
とサキは不審げな表情を浮かべつつ聞いた。
「どうして加藤くんが『女役』になりたいと思うのか、よくわからない。
どう見てもあおいくんが女役、と言うか実際女でしょ?」
「でもりんは私のこと男だと思っているでしょ?」
と私は自分を指差した。
「そしてりんは私に男役を望んでいる、んだと思うの」
二人はしばらく後『ああ~』と言う顔をした。
「そうか。
あおいくんは加藤くんがボーイズラブだと思っているから……」
とサキが納得顔で言う。
「あおいちゃん。
りんが『女役』になりたがっていると悩む必要はないよ」
とキョウは言った。
「りんはボーイズラブではないからさ」
「どうしてわかるの?」
と私は驚いてキョウを見た。
「どうして、って……」
とキョウは言うと、サキの方へ視線を移した。
サキは首をかしげて、
「ええと……。
ほら、悩んでいたの知っていたからだよね」
とサキはキョウを指差した。
「そう」
とキョウは頷く。
「りん、あおいちゃんのこと好きな自分は『ゲイなんじゃないか』って悩んでいたからさ……」
「えっ。
そうなの?」
と私は驚いて聞いた。
その後キョウから、りんが『あおいのこと最近気になっているんだけど、おれゲイなのかなあ』と同じくあおいのことが好きと思われるキョウに相談していた、などと聞いた。
そんなことがあったのか……。と思った。
その頃の私はそんなことも知らず、失恋のショックを受け、りんとの関係に気まずさを感じながらも普通に生きていただけだったのだ。
この話でりんがボーイズラブではない? と思った。
少なくとも女も好き、と。
だから、女の私としては喜ぶ所なのかもしれないけど、ますます落ち込んだ。
ますますりんに酷いことしているじゃないか、と思った。
※※※
「そうだ!」
とサキが言った。
「押してダメなら、引いてみろ!
逆転の発想よ!」
「えっ」
と聞き返すと、サキは目を輝かせて言った。
「加藤くんはゲイじゃないんだから。
女の身体であおいくんのことを夢中にさせてしまえば……」
と言ってからハッとすると、サキは手の平を私に向けた。
「ごめん。忘れて」
「今、ものすごく墓穴発言したよね?」
とキョウがサキをジト目で見た。
サキが手で顔を覆う――「失言した」
「えっ。何?
ちょっとわからなかった……」
と言うと
「「わからなくていいよ」」
と二人はニコニコした。
私は不満げに二人をにらんだ後、サキの先程の言葉を振り返ってみた。
『逆転の発想』
『加藤くんはゲイじゃないんだから、女の身体であおいくんのことを夢中に……』
意味わかった!
わかったけど……
「ははは……」
と私は苦笑いした。
「無理だよ、サキ。
女じゃあるまいし、りんは身体で夢中になんかならないよ」
「そんなことないよ!」
とサキは力強く言った。
「あおいくんには、立派なものがあるじゃない!」
立派なもの……。
「胸よ!」
「胸……」
と私はつぶやいた。
「胸を加藤くんに押し付けるのよ!
当ててんのよ戦法よ!」
何言ってんだコイツ。
「さりげなく胸を加藤くんに当てて。
『えっ何コレ、胸……?』
『あおい女だったのか……』
『おれのこと騙していたんだ、ひどい……』
『でも、おっぱい』
『おっぱい気持ちいいから許した』
と思わせるのよ!」
コイツりんを侮辱しているんじゃないか。
「りんはそんな子じゃない……」
と言うとサキは首を横に振った。
「あおいくんはわかっていない。
私はお兄ちゃんがいるからわかるけど、男ってね……」
と言うとサキは口をつぐんで、肩をすくめた。
途中でやめるな!
「だから田中さん、さっきから墓穴掘っているよね……」
とキョウがポツリと言うのをサキは無視して、
「予行練習してみる……?」
と自分の腕を私に差し出してきた。
「予行練習に。
私と腕を組んで、さりげなく胸を当ててみる……?
腕とか、背中に……?」
「目先の快楽のために、自ら暗黒面へと堕ちる……」
とキョウがつぶやき、サキは「うるさい」と言った。
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