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第三部
64話 どうして浮かない顔なんだろう?
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胸がいっぱいになりながら学校までの道を歩いていたが。
そう言えば話しておかなければいけないことがあると思い出し、切り出した。
「なあ、あおい」
と声をかけると、あおいは何故かビクッと身体を揺すって。
それから、おれを見上げ「何?」と言ったが。
何だか、ぎこちない笑顔だ。引きつっているような。
その表情を少し不思議に思ったけど、あまり気にせず、
「ケイとハヤトに言う?
おれたちのこと……」
と聞くと
「えっ」
とあおいは驚いてから、
「ああ……。
そうだよね……」
としばらく考え込むように黙った後、
「言わない方がいいよね」
とポツリと言った。
おれは何だか傷つく。
そりゃ、おれも今日突然言う心の準備はできていないけど。
「何で。
言いたくないの?」
とおれが少しむくれて言うと、あおいは目をパチパチして曖昧な笑みを浮かべた。
困っている顔だ。
「だって……。
ほら。
ビックリするだろ?」
「そりゃ、ビックリするだろうけど……」
ビックリされるとは思うけど、案外アッサリ受け入れてくれるんじゃないかな。
二人ともあおいのこと可愛いと思っているだろうし、おれとあおいがカップルになってもそんなに意外では……。
と、ここでおれは思い出した。
あおいは男だった!
いや、当然なんだけど。
何か昨日から『あおい=女の子』とナチュラルに思い込んでいた。
自分が怖い――これが『お花畑脳』?
そうだ。
あおいが戸惑うのは当然だ。
おれたちが付き合っているとケイ、ハヤトに言うときは、当然
『あおいの心は女の子で。だからおれ、あおいのことが好きになったんだと思う』
とか理由を説明した方が良いと思うし。
(いや、ボーイズラブだと思われるのが嫌だと言うわけではなく、正確な事情を話したいから)
つまりあおいとおれが付き合っていることを言うためには、あおいに
『「実は(心が)女」カミングアウト』
をしてもらわねばならないのだ。ケイとハヤトに対して。
それって、あおいにとってかなり重大な決断なのではないか?
だってあおいは男子として生活しているんだから。
『実は心は女だ』と明かすなら、反感を持つ男子もいるかも知れない。
それはあおいにとってとても怖いことなのではないか。
まあ、ケイとハヤトは反感を持たないとは思うけど。
アッサリ『やっぱりな』となるんじゃないか、あいつら。
しかし。
当事者がこれから起き得ることの最悪を考えて暗くなってしまい行動を躊躇してしまうのは仕方ないことだ。わかる。
おれはまたあおいの気持ちを考えずに一人よがりなことを言ってしまった。
それにおれだって、言われてみれば
『「実は(心が)女」カミングアウト』
をあおいにしてもらっていない。
キョウやサキから無理矢理聞き出してしまったんだ。
それって暴露と言うやつなんだろうか?
あおいの意思に関係なくヒトから教えて貰ったんだから……。
ああ、おれってダメな奴だな、やっぱり……。
キョウやサキにも申し訳ないことをした。あのときは夢中だったとは言え。
「ごめん、あおい」
とおれは謝った。罪悪感を解消するためでもある。ごめん。
「そうだよな。ビックリするから……。
しばらくはやめておこうか……」
と笑って言うと、あおいもちょっとだけ微笑んだ。
まだ心配そうなあおいを見てさらに付け加え、
「何なら2人に打ち明けるのは高校卒業後とかでも良いし」
と言うと、あおいは目を丸くしてから、ニコ~と頬を緩めた。
これは心からの笑顔に見えたので、
「何だか、嬉しそうだな」
とつぶやくと、あおいは言った。
「だって。
りん、高校卒業後もおれと付き合ってくれるつもりなんだ……」
と、始めはニコニコしていたのに。
このセリフを言う間にもだんだんあおいの顔が曇っていくのに気付いた。
「当然だろ?
付き合ったときから別れを想像する奴なんていないだろ?」
と言ってから、わざとからかうように、
「それともあおいは。
おれとはそんなに続かない、と思ってる?」
あおいにジト目を向けたけど、あおいはノッてこない。
それどころか沈んだ表情で、
「うん……。
おれはりんのことずっと好きだったから、これからもずっと好きだと思うけど」
「えっ。じゃあ、あおい。
もしかしておれの方が早く心変わりすると思っているわけ?」
とわざと怒った風に言ってみる。
でもホントにちょっと怒っている。
おれ、そんな軽い男に見えるかな?
「だって。りん。
前は、サキみたいな女の子好きって言っていたし……。
てことは、おれ全然りんのタイプじゃないってことだし……」
あおいのこのセリフにビックリして、少し自分の言動を振り返ってみる。
『サキみたいな子が好み』、確かに言っていたけど。
サキが好きと言うより、何て言うか、自虐ネタみたいな感じで言っていたと言うか。
『あんな美少女と付き合えたら良いよなあ。でもあり得ないし』
みたいな自虐ネタであって、実際にサキと付き合いたいとか思ったことはなかったんじゃないかな(付き合いたいと思ったところで付き合えるとも思えないが)。
いや、付き合えるとは思わないから、始めから『もし付き合えたら』なんて考えもしなかったんだろうか?
とにかくサキと付き合いたいと現実のこととして想像したことがないのは確かだ、と思ったので
「確かに田中さんは可愛いけど。
実際に付き合いたいと思ったことはないなあ。
いや、そもそも付き合えるわけないけどね」
と言うと、
「そ、そうなの……」
あおいはおれを目を見開いて、心配そうな顔で見た。
何で不安そうなんだろう?
変なこと言っていないと思うけど。疑っているんだろうか。
「おれ、ずっとりんはサキみたいな正統派美少女が好きだと思っていたけど。
じゃあ、りんは実際はどんな子と付き合いたかったの?」
「あおいみたいな」
「おれみたいな……?」
あおいは目を見開いてじっとおれを見つめてくる。
おれはその視線に少しひるみながらも、
「いつも側にいてくれて……優しくて……気が合って……可愛い子」
「えへ……」
とあおいは嬉しそうな顔で照れたが、すぐにまた顔が曇った。
弱々しく微笑み、
「ありがとう、りん……」
と言うあおいの様子に、おれは首をかしげるしかなかった。
※※※
もっとこの話題を掘り下げる方が良いのかもしれないが、他に話し合っておかなければならないことを思い出す。
「キョウと田中さんにはおれたちが付き合い始めたこと、言わないと……」
「えっ」
と意外そうな顔をするあおいに
「実はキョウと田中さんには『これからあおいに告白する』と言ったんだ」
とおれは昨日スマホを撮りに行った教室で、キョウとサキに『告白宣言』したことをかいつまんで話した。
もちろん『あおいの心は女の子』と二人に教えて貰ったと言う辺りは省いた。その辺はあおいから直接打ち明けてもらってから『知っていた』と話そうと思ったのだ。
おれの話を聞いて、
「そうだったんだ」
とあおいは目を丸くした。
「もしかしてあおいの方から、おれたちが付き合うこと、二人にもう言った?」
「言ってない……。昨日は何も連絡できなかった。
舞い上がっていて……それどころじゃなかったし」
と言うあおいに同意する。
「おれも。
何か、舞い上がった状態でキョウに連絡するの悪いなあって思って……。
しなかった」
「そっか」
「放課後、話そうか?」
「うん」
その後『放課後』の打ち合わせをしつつ歩き、もう少しで学校に着くと言うところであおいは、俺の腕から手を離した。
「急におれたちがベタベタし出したら、皆ビックリするかも知れないし」
とあおいは微笑んだ。
「そうだな。
あおいって、あんまりベタベタしないし。普段」
それもきっとあおいの心が女の子だからなんだろう、なんて考えが浮かんだ。
きっと合っているのだろう。
いざ教室に入ると言うときは少し緊張した。
と言うか今までもずっと緊張していたけど、あおいといることで少し和らいでいたのだ。
キョウにどんな顔をして接すればいいんだろう。と言う緊張をどうしても感じてしまう。
いや、キョウは優しいから……。
普段通り振る舞おう。
と思って教室に入ってすぐ自分の席付近を見たが。
おれの後ろの席にキョウはまだいなかった。
そう言えば話しておかなければいけないことがあると思い出し、切り出した。
「なあ、あおい」
と声をかけると、あおいは何故かビクッと身体を揺すって。
それから、おれを見上げ「何?」と言ったが。
何だか、ぎこちない笑顔だ。引きつっているような。
その表情を少し不思議に思ったけど、あまり気にせず、
「ケイとハヤトに言う?
おれたちのこと……」
と聞くと
「えっ」
とあおいは驚いてから、
「ああ……。
そうだよね……」
としばらく考え込むように黙った後、
「言わない方がいいよね」
とポツリと言った。
おれは何だか傷つく。
そりゃ、おれも今日突然言う心の準備はできていないけど。
「何で。
言いたくないの?」
とおれが少しむくれて言うと、あおいは目をパチパチして曖昧な笑みを浮かべた。
困っている顔だ。
「だって……。
ほら。
ビックリするだろ?」
「そりゃ、ビックリするだろうけど……」
ビックリされるとは思うけど、案外アッサリ受け入れてくれるんじゃないかな。
二人ともあおいのこと可愛いと思っているだろうし、おれとあおいがカップルになってもそんなに意外では……。
と、ここでおれは思い出した。
あおいは男だった!
いや、当然なんだけど。
何か昨日から『あおい=女の子』とナチュラルに思い込んでいた。
自分が怖い――これが『お花畑脳』?
そうだ。
あおいが戸惑うのは当然だ。
おれたちが付き合っているとケイ、ハヤトに言うときは、当然
『あおいの心は女の子で。だからおれ、あおいのことが好きになったんだと思う』
とか理由を説明した方が良いと思うし。
(いや、ボーイズラブだと思われるのが嫌だと言うわけではなく、正確な事情を話したいから)
つまりあおいとおれが付き合っていることを言うためには、あおいに
『「実は(心が)女」カミングアウト』
をしてもらわねばならないのだ。ケイとハヤトに対して。
それって、あおいにとってかなり重大な決断なのではないか?
だってあおいは男子として生活しているんだから。
『実は心は女だ』と明かすなら、反感を持つ男子もいるかも知れない。
それはあおいにとってとても怖いことなのではないか。
まあ、ケイとハヤトは反感を持たないとは思うけど。
アッサリ『やっぱりな』となるんじゃないか、あいつら。
しかし。
当事者がこれから起き得ることの最悪を考えて暗くなってしまい行動を躊躇してしまうのは仕方ないことだ。わかる。
おれはまたあおいの気持ちを考えずに一人よがりなことを言ってしまった。
それにおれだって、言われてみれば
『「実は(心が)女」カミングアウト』
をあおいにしてもらっていない。
キョウやサキから無理矢理聞き出してしまったんだ。
それって暴露と言うやつなんだろうか?
あおいの意思に関係なくヒトから教えて貰ったんだから……。
ああ、おれってダメな奴だな、やっぱり……。
キョウやサキにも申し訳ないことをした。あのときは夢中だったとは言え。
「ごめん、あおい」
とおれは謝った。罪悪感を解消するためでもある。ごめん。
「そうだよな。ビックリするから……。
しばらくはやめておこうか……」
と笑って言うと、あおいもちょっとだけ微笑んだ。
まだ心配そうなあおいを見てさらに付け加え、
「何なら2人に打ち明けるのは高校卒業後とかでも良いし」
と言うと、あおいは目を丸くしてから、ニコ~と頬を緩めた。
これは心からの笑顔に見えたので、
「何だか、嬉しそうだな」
とつぶやくと、あおいは言った。
「だって。
りん、高校卒業後もおれと付き合ってくれるつもりなんだ……」
と、始めはニコニコしていたのに。
このセリフを言う間にもだんだんあおいの顔が曇っていくのに気付いた。
「当然だろ?
付き合ったときから別れを想像する奴なんていないだろ?」
と言ってから、わざとからかうように、
「それともあおいは。
おれとはそんなに続かない、と思ってる?」
あおいにジト目を向けたけど、あおいはノッてこない。
それどころか沈んだ表情で、
「うん……。
おれはりんのことずっと好きだったから、これからもずっと好きだと思うけど」
「えっ。じゃあ、あおい。
もしかしておれの方が早く心変わりすると思っているわけ?」
とわざと怒った風に言ってみる。
でもホントにちょっと怒っている。
おれ、そんな軽い男に見えるかな?
「だって。りん。
前は、サキみたいな女の子好きって言っていたし……。
てことは、おれ全然りんのタイプじゃないってことだし……」
あおいのこのセリフにビックリして、少し自分の言動を振り返ってみる。
『サキみたいな子が好み』、確かに言っていたけど。
サキが好きと言うより、何て言うか、自虐ネタみたいな感じで言っていたと言うか。
『あんな美少女と付き合えたら良いよなあ。でもあり得ないし』
みたいな自虐ネタであって、実際にサキと付き合いたいとか思ったことはなかったんじゃないかな(付き合いたいと思ったところで付き合えるとも思えないが)。
いや、付き合えるとは思わないから、始めから『もし付き合えたら』なんて考えもしなかったんだろうか?
とにかくサキと付き合いたいと現実のこととして想像したことがないのは確かだ、と思ったので
「確かに田中さんは可愛いけど。
実際に付き合いたいと思ったことはないなあ。
いや、そもそも付き合えるわけないけどね」
と言うと、
「そ、そうなの……」
あおいはおれを目を見開いて、心配そうな顔で見た。
何で不安そうなんだろう?
変なこと言っていないと思うけど。疑っているんだろうか。
「おれ、ずっとりんはサキみたいな正統派美少女が好きだと思っていたけど。
じゃあ、りんは実際はどんな子と付き合いたかったの?」
「あおいみたいな」
「おれみたいな……?」
あおいは目を見開いてじっとおれを見つめてくる。
おれはその視線に少しひるみながらも、
「いつも側にいてくれて……優しくて……気が合って……可愛い子」
「えへ……」
とあおいは嬉しそうな顔で照れたが、すぐにまた顔が曇った。
弱々しく微笑み、
「ありがとう、りん……」
と言うあおいの様子に、おれは首をかしげるしかなかった。
※※※
もっとこの話題を掘り下げる方が良いのかもしれないが、他に話し合っておかなければならないことを思い出す。
「キョウと田中さんにはおれたちが付き合い始めたこと、言わないと……」
「えっ」
と意外そうな顔をするあおいに
「実はキョウと田中さんには『これからあおいに告白する』と言ったんだ」
とおれは昨日スマホを撮りに行った教室で、キョウとサキに『告白宣言』したことをかいつまんで話した。
もちろん『あおいの心は女の子』と二人に教えて貰ったと言う辺りは省いた。その辺はあおいから直接打ち明けてもらってから『知っていた』と話そうと思ったのだ。
おれの話を聞いて、
「そうだったんだ」
とあおいは目を丸くした。
「もしかしてあおいの方から、おれたちが付き合うこと、二人にもう言った?」
「言ってない……。昨日は何も連絡できなかった。
舞い上がっていて……それどころじゃなかったし」
と言うあおいに同意する。
「おれも。
何か、舞い上がった状態でキョウに連絡するの悪いなあって思って……。
しなかった」
「そっか」
「放課後、話そうか?」
「うん」
その後『放課後』の打ち合わせをしつつ歩き、もう少しで学校に着くと言うところであおいは、俺の腕から手を離した。
「急におれたちがベタベタし出したら、皆ビックリするかも知れないし」
とあおいは微笑んだ。
「そうだな。
あおいって、あんまりベタベタしないし。普段」
それもきっとあおいの心が女の子だからなんだろう、なんて考えが浮かんだ。
きっと合っているのだろう。
いざ教室に入ると言うときは少し緊張した。
と言うか今までもずっと緊張していたけど、あおいといることで少し和らいでいたのだ。
キョウにどんな顔をして接すればいいんだろう。と言う緊張をどうしても感じてしまう。
いや、キョウは優しいから……。
普段通り振る舞おう。
と思って教室に入ってすぐ自分の席付近を見たが。
おれの後ろの席にキョウはまだいなかった。
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