そらいろ

並川たすく

文字の大きさ
6 / 6

そらいろ

しおりを挟む
 試験の結果が出て僕はタツにジュースをおごり、タツは夏休み中の数学の補講をなんとか免れ、僕は新聞部の特集のテーマを決められないまま終業式の日を迎えた。

「今日は午前の終業式だけだったってのにこんな時間になるとはなあ。もう夕方じゃないか」
「仕方ないだろう。僕が数学を教えてやって先生に交渉したおかげで夏休みに学校に行かなくてよくなったんだから」

 西の空が赤くなってきている。今日は天気がよかった。きっと夕焼けが綺麗だろう。僕は雨の降った日のことを思い出した。

「そういえば、お前のオレンジ色の傘に入った猫はどうなったかな」
「傘に入った猫? ああ、あのときの」
「この辺に丸まってあくびしてさ」


「こんなところに花なんか咲いてたか?」
 タツが指差したところには、一輪の花がアスファルトの上で枯れていた。
「さあ、最近は日照りだったからなあ」

 枯れた花弁の隅がわずかに青みを帯びている。青い花だったのだろうか。




「なあタツ、新聞部の特集に馬鹿げた小説が載ったらどう思う」
「小説? 部長さんは最後に爪痕でも残したいのか?」
「最後のわがまま」
「後輩が泣くだろうなあ」


 やがてバスが来てタツが乗り込んだ。そのバスが出るのと同時に、僕もバス停に背を向けた。この風景もしばらく見納めだ。
 思ったより長くバスを待っていたらしい。茜色が濃くなってきた。

 あの日の空も、ちょうどこんな色をしていた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

本物の夫は愛人に夢中なので、影武者とだけ愛し合います

こじまき
恋愛
幼い頃から許嫁だった王太子ヴァレリアンと結婚した公爵令嬢ディアーヌ。しかしヴァレリアンは身分の低い男爵令嬢に夢中で、初夜をすっぽかしてしまう。代わりに寝室にいたのは、彼そっくりの影武者…生まれたときに存在を消された双子の弟ルイだった。 ※「小説家になろう」にも投稿しています

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

妹の仇 兄の復讐

MisakiNonagase
青春
神奈川県の海に近い住宅街。夏の終わりが、夕焼けに溶けていく季節だった。 僕、寺内勇人は高校三年生。妹の茜は高校一年生。父と母との四人暮らし。ごく普通の家庭で、僕と茜は、ブラコンやシスコンと騒がれるほどではないが、それなりに仲の良い兄妹だった。茜は少し内気で、真面目な顔をしているが、家族の前ではよく笑う。特に、幼馴染で僕の交際相手でもある佑香が来ると、姉のように慕って明るくなる。 その平穏が、ほんの些細な噂によって、静かに、しかし深く切り裂かれようとは、その時はまだ知らなかった。

降っても晴れても

凛子
恋愛
もう、限界なんです……

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

処理中です...