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1.無理矢理犯す編 -3
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「お兄さんさ、今話せる?」
「は、――はい。何でしょうか。」
後ろからやってきた南は返事を待つこともなく先に歩き出した。
「俺の部屋行こ。この女子部屋、いつも収録後盛り上がって出てこねえから。」
大和が着いていくと、妹が入った部屋の三つ隣の部屋に通された。当たり前のように個室で、マネージャーらしき人物が荷物の整理をしていたが部屋から追い出す。
「あれ。座ったら?」
「いえ。話というのは。」
南に続いて大和も部屋に入ったが、そのまま扉の前で立つ。マネージャーの真似事は学生時代もやっていた。もちろん世話したのは妹だ。子役の時は気付かなかったこの世界の常識をその時垣間見た。相手が大物である程どこに地雷があるかわからないので、警戒するに越したことはない。
「お兄さんの妹さ、結構良かったんだよね。馬鹿過ぎず天然ぶれてツラも良い。同性にもオッサン世代にも好かれる。……で、今、レギュラー枠いっこ空いてんの。」
「…はい………。」
ドクンと鼓動が波打った。
仕事はある。細々と仕事はあるが、アルバイト程度の出演料に設定している。だからこそその辺の新人と比べて昔のキャリアがある分選ばれている。このまま地道に続けることができれば段々と報酬も仕事の質も上がっていくだろう。
だがゴールデン帯の番組に続けて出るとしたらわけが違ってくる。箔がつくのはもちろん、一気に知名度も上がる。横の繋がりもできるかも知れない。それだけで何段飛ばしにもなる――と、一瞬で考えて大和は身震いした。
「一応俺MCだから、多少のキャスティング権もあるんだよね。」
「…………。」
そんな甘い話ではなかった。話しぶりと雰囲気から察する。
大和は話しながら着替える南から目を逸らして気を落ち着ける。――枕か。今の妹にはそれ以外に差し出せるものはない。
「妹がプロデューサーに抱かれるか、お兄さんが俺に抱かれるか。」
「――――……は…………?」
『断る』一択だ。仕事が取れる面白さを感じ始めていたところだった。妹の能力に不足はない。まだ演技が少し堅いか、子役とは演じ方も変わってくるからか。それは場数を踏むしかないと思っている。
かつての人脈というアドバンテージは使いまくっているが、それとこれとはわけが違う。身体を使って仕事を取るくらいなら辞めさせる。
「――あ、そっち、今日の女子高生まだいる? あーうん、代わって。」
大和が言葉を発せない内に、南がどこかへ電話を掛けた。スピーカーホンにされ、相手先の背後はがやがやと騒がしい。
『もしもし、南さん?』
「おつかれ。ごめんね、今お兄さん俺が借りててさ。」
『あ、だからおにいちゃんいなかったんですね!』
「うん、歳近いから意気投合しちゃってさ。まだ待てる?」
『全然大丈夫です! 』
意気投合だと。もうこちらは話を切り上げてすぐにでも帰りたいというのに。意図が全くわからず大和はその姿を眺めることしかできない。
「あ、そうだ。今日めちゃくちゃ良かったからこれから伸びるよって話しながらお兄さんと賭けしててさ。」
『えっ、ありがとうございます!』
「うん。例えば――――例えば、枕営業を持ち掛けられたら君は受けるのかって。」
『――え?』
次の瞬間、大和の身体は靴を脱ぎ捨てて部屋に上がり、そのスマートフォンを取り上げようとした。しかし難なく躱されて床――畳に背中から打ち付けられた。
「ぐ……、やめ」
声を出そうとしたが、口を手の平で塞がれる。容赦なく上から押さえ付けられて外れない。
「そうだな。……例えばだよ。例えば大人と寝れば、この番組のレギュラーが穫れる、とかなら」
『やります!』
食い気味という表現が合う。戸惑った声を出したのに次の瞬間に即答した。
どういうことかまだ想像できないのか、"例えば"を真に受けてフィクションとして捉えているのか。――それほど必死なのか。
「なるほどね。じゃ、もうちょっとお兄さん待ってて。」
『え、』
そこで通話は切られた。真上から大和を覗き込む顔は口角を上げている。
「だってさ。賭けは俺の勝ちか。」
「もう失礼します。」
「良いの? プロデューサーから直で妹に話し持ちかけたら…………着いてくかもしれないのに?」
起き上がって靴を履こうとするも、その手が止まる。
仕事を再開して。妹が今回の活動は心底楽しんでいるのを知っていた。台本をもらえば深夜まで読み込み練習していると聞いているし、SNSの更新も頻繁にチェック依頼が飛んでくる。
楽しそうで、愚直だ。後でどんな結果になろうとも、今の妹は餌をちらつかせれば着いていくだろう。
「俺が、行けば……」
「俺が推薦しとくよ。スタッフの反応も上々だったし。」
子役時代も、学生マネージャー時代も、こんな話は聞いていた。誘われたこともあった。男である大和に声が掛かるのだから女の妹は尚更だ。だから母親に代わり仕事について行っていた。妙な人間が接触する隙は与えなかった。
「リークしてやる。」
「そうなったら切り捨てるだけだけど。」
「この音声、反故されたら出す。」
「さすが。」
録音していた。部屋に入る直前に大和が起動していたボイスレコーダーアプリはまだ立ち上がったままだ。
「いつですか。」
「そうだな。……明日晩は?」
「…………。」
「明日ホテルでチェックインして待っててよ。都合良いとこ探して送るから。」
するりと背後から手がのびてきてスーツの内ポケットから名刺入れを取り出し一枚抜き、また戻す。怒りとやるせなさで後ろは見れなかった。
「は、――はい。何でしょうか。」
後ろからやってきた南は返事を待つこともなく先に歩き出した。
「俺の部屋行こ。この女子部屋、いつも収録後盛り上がって出てこねえから。」
大和が着いていくと、妹が入った部屋の三つ隣の部屋に通された。当たり前のように個室で、マネージャーらしき人物が荷物の整理をしていたが部屋から追い出す。
「あれ。座ったら?」
「いえ。話というのは。」
南に続いて大和も部屋に入ったが、そのまま扉の前で立つ。マネージャーの真似事は学生時代もやっていた。もちろん世話したのは妹だ。子役の時は気付かなかったこの世界の常識をその時垣間見た。相手が大物である程どこに地雷があるかわからないので、警戒するに越したことはない。
「お兄さんの妹さ、結構良かったんだよね。馬鹿過ぎず天然ぶれてツラも良い。同性にもオッサン世代にも好かれる。……で、今、レギュラー枠いっこ空いてんの。」
「…はい………。」
ドクンと鼓動が波打った。
仕事はある。細々と仕事はあるが、アルバイト程度の出演料に設定している。だからこそその辺の新人と比べて昔のキャリアがある分選ばれている。このまま地道に続けることができれば段々と報酬も仕事の質も上がっていくだろう。
だがゴールデン帯の番組に続けて出るとしたらわけが違ってくる。箔がつくのはもちろん、一気に知名度も上がる。横の繋がりもできるかも知れない。それだけで何段飛ばしにもなる――と、一瞬で考えて大和は身震いした。
「一応俺MCだから、多少のキャスティング権もあるんだよね。」
「…………。」
そんな甘い話ではなかった。話しぶりと雰囲気から察する。
大和は話しながら着替える南から目を逸らして気を落ち着ける。――枕か。今の妹にはそれ以外に差し出せるものはない。
「妹がプロデューサーに抱かれるか、お兄さんが俺に抱かれるか。」
「――――……は…………?」
『断る』一択だ。仕事が取れる面白さを感じ始めていたところだった。妹の能力に不足はない。まだ演技が少し堅いか、子役とは演じ方も変わってくるからか。それは場数を踏むしかないと思っている。
かつての人脈というアドバンテージは使いまくっているが、それとこれとはわけが違う。身体を使って仕事を取るくらいなら辞めさせる。
「――あ、そっち、今日の女子高生まだいる? あーうん、代わって。」
大和が言葉を発せない内に、南がどこかへ電話を掛けた。スピーカーホンにされ、相手先の背後はがやがやと騒がしい。
『もしもし、南さん?』
「おつかれ。ごめんね、今お兄さん俺が借りててさ。」
『あ、だからおにいちゃんいなかったんですね!』
「うん、歳近いから意気投合しちゃってさ。まだ待てる?」
『全然大丈夫です! 』
意気投合だと。もうこちらは話を切り上げてすぐにでも帰りたいというのに。意図が全くわからず大和はその姿を眺めることしかできない。
「あ、そうだ。今日めちゃくちゃ良かったからこれから伸びるよって話しながらお兄さんと賭けしててさ。」
『えっ、ありがとうございます!』
「うん。例えば――――例えば、枕営業を持ち掛けられたら君は受けるのかって。」
『――え?』
次の瞬間、大和の身体は靴を脱ぎ捨てて部屋に上がり、そのスマートフォンを取り上げようとした。しかし難なく躱されて床――畳に背中から打ち付けられた。
「ぐ……、やめ」
声を出そうとしたが、口を手の平で塞がれる。容赦なく上から押さえ付けられて外れない。
「そうだな。……例えばだよ。例えば大人と寝れば、この番組のレギュラーが穫れる、とかなら」
『やります!』
食い気味という表現が合う。戸惑った声を出したのに次の瞬間に即答した。
どういうことかまだ想像できないのか、"例えば"を真に受けてフィクションとして捉えているのか。――それほど必死なのか。
「なるほどね。じゃ、もうちょっとお兄さん待ってて。」
『え、』
そこで通話は切られた。真上から大和を覗き込む顔は口角を上げている。
「だってさ。賭けは俺の勝ちか。」
「もう失礼します。」
「良いの? プロデューサーから直で妹に話し持ちかけたら…………着いてくかもしれないのに?」
起き上がって靴を履こうとするも、その手が止まる。
仕事を再開して。妹が今回の活動は心底楽しんでいるのを知っていた。台本をもらえば深夜まで読み込み練習していると聞いているし、SNSの更新も頻繁にチェック依頼が飛んでくる。
楽しそうで、愚直だ。後でどんな結果になろうとも、今の妹は餌をちらつかせれば着いていくだろう。
「俺が、行けば……」
「俺が推薦しとくよ。スタッフの反応も上々だったし。」
子役時代も、学生マネージャー時代も、こんな話は聞いていた。誘われたこともあった。男である大和に声が掛かるのだから女の妹は尚更だ。だから母親に代わり仕事について行っていた。妙な人間が接触する隙は与えなかった。
「リークしてやる。」
「そうなったら切り捨てるだけだけど。」
「この音声、反故されたら出す。」
「さすが。」
録音していた。部屋に入る直前に大和が起動していたボイスレコーダーアプリはまだ立ち上がったままだ。
「いつですか。」
「そうだな。……明日晩は?」
「…………。」
「明日ホテルでチェックインして待っててよ。都合良いとこ探して送るから。」
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