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1.無理矢理犯す編 -4
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妹には何も言っていない。無邪気に「南さんと仲良くなったんだね! おにいちゃんと南さん同い年だもんね。」と笑う。高校生にしては言動が幼いが、妹は馬鹿ではない。愛嬌が良いが、多少の打算も含まれているのだろう。
翌日ショートメールで外資系ホテルの名前と時間が送られてきた。
仕事を終え、腹は減っても食欲が湧かなかったのでゼリー飲料だけを飲み、立ち飲み屋で酒を一杯引っ掛けた。
金曜の夜でそれなりに人がいるフロントでチェックインをする。部屋に入り、部屋番号だけを返信して床に座り込んだ。
「あれ、酒呑んでる?」
「…………。」
「接待失格だな。」
「…………。」
未だに肝は座っていなかった。妹の身代わりという認識だが、そこまでするほどなのか。ただ妹は変に楽観的で意志を通すところがある。妹を差し出すのは言語道断だ。何が引っ掛かって選ばれてしまったのか。
ここへきて散り散りに思考が湧くも、全てが矛盾している。
扉を開けて、南を迎え入れてその顔を見た瞬間にぶわっと嫌悪感が湧いた。
昨日の撮影の影響か。放送されてもいないのに数本出演の打診があった。妹からは事務所スタッフから褒められたのか喜びのメッセージが届いている。
ここで断れば妹は自分で脱ぐ。そういう事態を避けるために昔は行動していた。ここまで来て汚したくはない。ここで南を退けたとして、現状維持なら良い。しかし業界的にそうはいかないかも知れない。
「泣いてんじゃん。泣くほど嫌なのに妹のために…………泣けるねえ」
目尻に涙が滲んだ程度だ。キャップを被りマスクをしているのにスタイルの良さからか。オーラは隠せていない。唯一見えている目は弧を描いていた。そして南は鞄を下ろして上着を脱いだ。
仕事を獲る為ならば鞄を受け取り、上着もハンガーに掛けるべきだろう。だがどうしても身体が動かなかった。
「まあ、昨日の今日だし、準備はできてないか。すっぽかされなかっただけマシか。」
「……せめて言質をくれ。」
「げんち……? ああ。確かに。」
瞬時に意味を理解し納得した南はポケットからスマートフォンを取り出し、電話を掛けた。
「お疲れ様です、南ですけど今良いですか? レギュラー枠、まだ空いてましたよね。……え? ああ、ウチの後輩はもう十分でしょ。いや、昨日の女子高生いたじゃないですか。……ええ? いや、高校生とか恋愛対象じゃないですよ。そのマネージャーのお兄さんが元子役でさ、昔ちょっと仲良かったんですよね。昨日懐かしの再会果たして今一緒に呑んでるんですけど、妹ウチの番組で出させてやるよって見栄張っちゃって。ねえ、評判良いならレギュラーにあの子どうかなって。」
よくもそんなスルスルと嘘が出る。南はそのまま話しながら風呂場へ行き、湯を溜め始めた。
「まじっすか。ぜひぜひ。あーこれで俺、でかい顔できますよ。いやいやほんとありがとうございます。じゃあ来週。こんな時間にすみません、お疲れさまです。」
こちらを振り向いた顔は世間に晒している爽やかな笑顔とは正反対のものだった。
「今すぐは無理だけど来月再来月からならって。近い内正式なオファーがくるんじゃないか……――残念だったな。言い訳がなくなって。」
立っていられずに寄りかかっていた壁から引き離される。襟元を掴まれたまま連れてこられたのは洗面所だった。
翌日ショートメールで外資系ホテルの名前と時間が送られてきた。
仕事を終え、腹は減っても食欲が湧かなかったのでゼリー飲料だけを飲み、立ち飲み屋で酒を一杯引っ掛けた。
金曜の夜でそれなりに人がいるフロントでチェックインをする。部屋に入り、部屋番号だけを返信して床に座り込んだ。
「あれ、酒呑んでる?」
「…………。」
「接待失格だな。」
「…………。」
未だに肝は座っていなかった。妹の身代わりという認識だが、そこまでするほどなのか。ただ妹は変に楽観的で意志を通すところがある。妹を差し出すのは言語道断だ。何が引っ掛かって選ばれてしまったのか。
ここへきて散り散りに思考が湧くも、全てが矛盾している。
扉を開けて、南を迎え入れてその顔を見た瞬間にぶわっと嫌悪感が湧いた。
昨日の撮影の影響か。放送されてもいないのに数本出演の打診があった。妹からは事務所スタッフから褒められたのか喜びのメッセージが届いている。
ここで断れば妹は自分で脱ぐ。そういう事態を避けるために昔は行動していた。ここまで来て汚したくはない。ここで南を退けたとして、現状維持なら良い。しかし業界的にそうはいかないかも知れない。
「泣いてんじゃん。泣くほど嫌なのに妹のために…………泣けるねえ」
目尻に涙が滲んだ程度だ。キャップを被りマスクをしているのにスタイルの良さからか。オーラは隠せていない。唯一見えている目は弧を描いていた。そして南は鞄を下ろして上着を脱いだ。
仕事を獲る為ならば鞄を受け取り、上着もハンガーに掛けるべきだろう。だがどうしても身体が動かなかった。
「まあ、昨日の今日だし、準備はできてないか。すっぽかされなかっただけマシか。」
「……せめて言質をくれ。」
「げんち……? ああ。確かに。」
瞬時に意味を理解し納得した南はポケットからスマートフォンを取り出し、電話を掛けた。
「お疲れ様です、南ですけど今良いですか? レギュラー枠、まだ空いてましたよね。……え? ああ、ウチの後輩はもう十分でしょ。いや、昨日の女子高生いたじゃないですか。……ええ? いや、高校生とか恋愛対象じゃないですよ。そのマネージャーのお兄さんが元子役でさ、昔ちょっと仲良かったんですよね。昨日懐かしの再会果たして今一緒に呑んでるんですけど、妹ウチの番組で出させてやるよって見栄張っちゃって。ねえ、評判良いならレギュラーにあの子どうかなって。」
よくもそんなスルスルと嘘が出る。南はそのまま話しながら風呂場へ行き、湯を溜め始めた。
「まじっすか。ぜひぜひ。あーこれで俺、でかい顔できますよ。いやいやほんとありがとうございます。じゃあ来週。こんな時間にすみません、お疲れさまです。」
こちらを振り向いた顔は世間に晒している爽やかな笑顔とは正反対のものだった。
「今すぐは無理だけど来月再来月からならって。近い内正式なオファーがくるんじゃないか……――残念だったな。言い訳がなくなって。」
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