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5.二年後。無理矢理耳攻め焦らし編 -4
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その後、二人の生活は同棲というよりもルームシェアのようだった。
「あ、メシいる?」
「いる。……ただいま。」
「おかえり。」
調味料と飲料しか入ってなかった冷蔵庫には食材が詰められ、食卓には色も大きさも異なる食器が並ぶ。揃いの食器を大和は買う気がないし、南も買いに行く暇がないから一人暮らし同士ペアのものは何もない。
南は基本、現場で食べるか外食か何か購入して帰宅していたが、まっすぐ帰るようになった。平日大和は簡単なものを自炊するからだ。快く……とまではいかないが、今では大和はついでにと多目に食事を作り、遅くなるならラップを被せて置いておくようになった。
空いている部屋に荷物を置き、リビングのソファで寝る。寝落ちした大和の手から離れたスマートフォンには、賃貸情報サイトが映し出されていた。
「はあ。生殺しかよ……。」
言われずともそれを望んだのは南だ。格好つけて気にしない風に条件を受け入れたが、実際、判断は間違っていなかったと思うことが多い。しかしそれでも早まったかと思うことはある。
大和もなんだかんだと忙しい。本業ではそれなりに顧客を持ち、歴も長くなって後輩の面倒も見て、それが終われば妹の面倒を見る。妹とは会わなくとも時間が合えば電話し、愚痴を聞く、又は相談を受け、場合により共演者や関係者への手土産等を見繕う。
長年住んだ部屋は解約し、退去日まで少しずつ荷物は捨てるなり南の部屋に持ってくるなりし整理している。妹には、収入に比例して少しグレードを上げた部屋を既に契約している。だが自分のことは後回しにしてしまい、大和の次の部屋は中々決まらなかった。
「一ヶ月か…………。」
湯船に浸かりながら、大和は呟いた。
この家を間借りし始めて一ヶ月が経った。暮らしは驚く程快適だ。職場まで近くなったし、台所も浴室も、以前の部屋と比べるまでもなく広々している。宅配ボックスよろしくコンシェルジュが宅配物は受け取ってくれるし、考え事があればロビーのソファやラウンジでぼんやり座っていられる。部屋は探しているが、現状に満足してしまい中々問い合わせをするまでには至っていない。
「帰ってる?…… 風呂か。」
南が帰ってきたようだ。週末で夕食は外で済ませた旨は既に連絡済みだ。洗面所で手を洗い、遠ざかっていく。
せめてと食材費は負担しているが、いい加減家賃としてある程度支払った方が良いのかも知れない――と大和が考えていたところで突如浴室の扉が開いた。
「は」
「俺も今日身体ベタベタでさあ、入るわ。」
「……ああ、悪いな。出るわ。」
「あっ、ちょ、ほらこれ。今日もらったんだよね、めっちゃ良いっていう入浴剤。せっかくだしもうちょっと入ったら?」
「……ちょっとだけな。」
入ってきた全裸の南が片手に持っていたボール型の入浴剤を湯船に入れる。最近巷で疲れが取れると話題のそれは大和も知っていた。
南はシャワーで身体を流し、乱雑にシャンプーをしてトリートメントをつけたかと思えばすぐに洗い流す。それほど泡立っていないボディーソープを簡単に手で塗りつけてそれも流すと立ち上がった。湯船から出ようとした大和の肩を押し留めて、湯に浸かる。大和も本当は出たかったが、入浴剤の効果か一週間の疲れが溶け出ていくような感覚を味わってしまい、仕方なく背を向けて留まった。
「いつまで仕事すんの?」
「あ……?」
「会社員。」
「あ――……。妹が独立して、両立が難しくなったら。」
「なんだそれ。大丈夫かよ。」
妹の独立にはもちろん大和も組み込まれている。個人事務所の運営については今合間を見て妹や南、知り合いの業界人等のツテで情報を集めているところだ。今はスケジュール管理や連絡窓口程度の業務で済んでいるが、独立するとなればそうはいかないだろう。
ただ、マネージャーという副業を始めたことで本業にもメリハリが出て良い傾向が生まれていた。先のことだからこそ、辞めるイメージはまだついていなかった。
「あ、メシいる?」
「いる。……ただいま。」
「おかえり。」
調味料と飲料しか入ってなかった冷蔵庫には食材が詰められ、食卓には色も大きさも異なる食器が並ぶ。揃いの食器を大和は買う気がないし、南も買いに行く暇がないから一人暮らし同士ペアのものは何もない。
南は基本、現場で食べるか外食か何か購入して帰宅していたが、まっすぐ帰るようになった。平日大和は簡単なものを自炊するからだ。快く……とまではいかないが、今では大和はついでにと多目に食事を作り、遅くなるならラップを被せて置いておくようになった。
空いている部屋に荷物を置き、リビングのソファで寝る。寝落ちした大和の手から離れたスマートフォンには、賃貸情報サイトが映し出されていた。
「はあ。生殺しかよ……。」
言われずともそれを望んだのは南だ。格好つけて気にしない風に条件を受け入れたが、実際、判断は間違っていなかったと思うことが多い。しかしそれでも早まったかと思うことはある。
大和もなんだかんだと忙しい。本業ではそれなりに顧客を持ち、歴も長くなって後輩の面倒も見て、それが終われば妹の面倒を見る。妹とは会わなくとも時間が合えば電話し、愚痴を聞く、又は相談を受け、場合により共演者や関係者への手土産等を見繕う。
長年住んだ部屋は解約し、退去日まで少しずつ荷物は捨てるなり南の部屋に持ってくるなりし整理している。妹には、収入に比例して少しグレードを上げた部屋を既に契約している。だが自分のことは後回しにしてしまい、大和の次の部屋は中々決まらなかった。
「一ヶ月か…………。」
湯船に浸かりながら、大和は呟いた。
この家を間借りし始めて一ヶ月が経った。暮らしは驚く程快適だ。職場まで近くなったし、台所も浴室も、以前の部屋と比べるまでもなく広々している。宅配ボックスよろしくコンシェルジュが宅配物は受け取ってくれるし、考え事があればロビーのソファやラウンジでぼんやり座っていられる。部屋は探しているが、現状に満足してしまい中々問い合わせをするまでには至っていない。
「帰ってる?…… 風呂か。」
南が帰ってきたようだ。週末で夕食は外で済ませた旨は既に連絡済みだ。洗面所で手を洗い、遠ざかっていく。
せめてと食材費は負担しているが、いい加減家賃としてある程度支払った方が良いのかも知れない――と大和が考えていたところで突如浴室の扉が開いた。
「は」
「俺も今日身体ベタベタでさあ、入るわ。」
「……ああ、悪いな。出るわ。」
「あっ、ちょ、ほらこれ。今日もらったんだよね、めっちゃ良いっていう入浴剤。せっかくだしもうちょっと入ったら?」
「……ちょっとだけな。」
入ってきた全裸の南が片手に持っていたボール型の入浴剤を湯船に入れる。最近巷で疲れが取れると話題のそれは大和も知っていた。
南はシャワーで身体を流し、乱雑にシャンプーをしてトリートメントをつけたかと思えばすぐに洗い流す。それほど泡立っていないボディーソープを簡単に手で塗りつけてそれも流すと立ち上がった。湯船から出ようとした大和の肩を押し留めて、湯に浸かる。大和も本当は出たかったが、入浴剤の効果か一週間の疲れが溶け出ていくような感覚を味わってしまい、仕方なく背を向けて留まった。
「いつまで仕事すんの?」
「あ……?」
「会社員。」
「あ――……。妹が独立して、両立が難しくなったら。」
「なんだそれ。大丈夫かよ。」
妹の独立にはもちろん大和も組み込まれている。個人事務所の運営については今合間を見て妹や南、知り合いの業界人等のツテで情報を集めているところだ。今はスケジュール管理や連絡窓口程度の業務で済んでいるが、独立するとなればそうはいかないだろう。
ただ、マネージャーという副業を始めたことで本業にもメリハリが出て良い傾向が生まれていた。先のことだからこそ、辞めるイメージはまだついていなかった。
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