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5.二年後。無理矢理耳攻め焦らし編 -3
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翌日。
「うちが盗撮されてた。」
翌日、大和は収録を終えてメッセージの意図を問いただす妹を人気が少ない廊下へ連れ出した。
「えっ!!? ……えっ、あ、ぬいぐるみ!?」
「声が大きい。」
「え、あれっておにいちゃんの元カノのとかそういうのかと思ってた。もっと早く捨てれば良かった……」
昨夜大和が見た限り、部屋の中で無くなっているものはなく、あったとしてもそれはなくても困らない程度のものだ。大和の家に妹が度々訪れるのは彼女を知る者なら大体が知っている。二人の仲の良さ……というよりは妹のブラコンぶりは度々共演者にネタにされている。芸能記者なら大和の家の住所も把握しているだろう。
「……だから、うちには来ないように。」
「えっおにいちゃんは? ていうか知らない内に家に入られてたってことだよね?」
「見た限りは何も盗られてなかった。この後警察行ってしばらく実家行くから……、回収したいもんとかあるか?」
「それは大丈夫。……あ、下着は持って帰ろうかな……」
「それはこれ、持って来たから。」
妹が苦笑しながら大和のビジネス鞄から取り出された黒いポリ袋を受け取る。このような時に自覚する。自分は妹でしかないのだと。
「…………あー、一応、見てないからな。置いてた袋ごと入れたし、触ってもないから。盗られてないか?」
「えっ、あっ、あぁうん、大丈夫!」
そして目を背けて頬を掻く姿を見て、妹は数秒前に抱いたデリカシーがないという思考を否定する。
「おにいちゃん。実家じゃなくて私の部屋に――」
その言葉は続かなかった。
「じゃあうち住めば?」
妹の背後にまで来ていた南が口を挟んだ為だった。妹は突然の声に驚いたが、大和は何も言わなかった。気付いていたが、他の人間はいなかったので放置して話を続けていた。
「いらねえよ。」
「良いじゃん。うちのが会社からも大分近いんだし。実家からって、毎朝通勤電車乗って出勤すんのか?」
大和は朝の通勤電車が嫌いだった。実家を出た理由は色々とあるが、その一つが会社までの距離だった。現住居から歩いて30分は掛かるが、それでも満員の電車に乗るよりはマシだと今の比較的安いマンションに住み続けている。
この話を確かに一度南に話していた。
「……おにいちゃん、うちは? 荷物も取りに帰れるし、仕事のことも相談したいし私の家来て。……こんなことがあって、一人で帰るの怖いよ。」
南はため息を吐きたい気分だった。
この妹は相変わらずだ。狙われているのは事実だろうが、今回巻き込まれたのは大和の方だ。このようにこっそりと痕跡も残さずに侵入されるとは思っていなかったのだろうが、大和の家はボロ屋とまでは言わなくてもそれなりに築年数が経っている。モニターホンはあれどオートロックがなければシリンダーも凝ったものではない。だからこそ妹がやってきたら万が一を恐れてすぐに帰宅していた。
そして大和はまた、妹を優先するのだろう――
「わかった。そっちの家も何か仕掛けられてないか調査して鍵も交換するから、それまでは実家に帰れ。荷物は今から一緒に取りに行くから。」
「え。」
「俺は、…………次の家を見付けるまで、南の部屋を間借りさせてもらう。」
「え、」
「ん?」
二人の視線を受けていながら、大和は平然と鞄のチャックを閉める。
「今日帰り何時?」
「あとニ本、打ち合わせだけ。」
「じゃあ、あとで連絡するから。」
「わ、わかった。」
不服そうな妹を連れて大和が歩いていく。その後ろ姿を眺めつつ柄にもなく南は目を丸くしていた。予想が外れたからか。希望通りになったからか。
「はっ………………、勝った。」
呟いて、こうしてはおれぬと南も楽屋へ引き返す。
その後二人が南の部屋で再び会ったのは数時間後の深夜だった。
「うちが盗撮されてた。」
翌日、大和は収録を終えてメッセージの意図を問いただす妹を人気が少ない廊下へ連れ出した。
「えっ!!? ……えっ、あ、ぬいぐるみ!?」
「声が大きい。」
「え、あれっておにいちゃんの元カノのとかそういうのかと思ってた。もっと早く捨てれば良かった……」
昨夜大和が見た限り、部屋の中で無くなっているものはなく、あったとしてもそれはなくても困らない程度のものだ。大和の家に妹が度々訪れるのは彼女を知る者なら大体が知っている。二人の仲の良さ……というよりは妹のブラコンぶりは度々共演者にネタにされている。芸能記者なら大和の家の住所も把握しているだろう。
「……だから、うちには来ないように。」
「えっおにいちゃんは? ていうか知らない内に家に入られてたってことだよね?」
「見た限りは何も盗られてなかった。この後警察行ってしばらく実家行くから……、回収したいもんとかあるか?」
「それは大丈夫。……あ、下着は持って帰ろうかな……」
「それはこれ、持って来たから。」
妹が苦笑しながら大和のビジネス鞄から取り出された黒いポリ袋を受け取る。このような時に自覚する。自分は妹でしかないのだと。
「…………あー、一応、見てないからな。置いてた袋ごと入れたし、触ってもないから。盗られてないか?」
「えっ、あっ、あぁうん、大丈夫!」
そして目を背けて頬を掻く姿を見て、妹は数秒前に抱いたデリカシーがないという思考を否定する。
「おにいちゃん。実家じゃなくて私の部屋に――」
その言葉は続かなかった。
「じゃあうち住めば?」
妹の背後にまで来ていた南が口を挟んだ為だった。妹は突然の声に驚いたが、大和は何も言わなかった。気付いていたが、他の人間はいなかったので放置して話を続けていた。
「いらねえよ。」
「良いじゃん。うちのが会社からも大分近いんだし。実家からって、毎朝通勤電車乗って出勤すんのか?」
大和は朝の通勤電車が嫌いだった。実家を出た理由は色々とあるが、その一つが会社までの距離だった。現住居から歩いて30分は掛かるが、それでも満員の電車に乗るよりはマシだと今の比較的安いマンションに住み続けている。
この話を確かに一度南に話していた。
「……おにいちゃん、うちは? 荷物も取りに帰れるし、仕事のことも相談したいし私の家来て。……こんなことがあって、一人で帰るの怖いよ。」
南はため息を吐きたい気分だった。
この妹は相変わらずだ。狙われているのは事実だろうが、今回巻き込まれたのは大和の方だ。このようにこっそりと痕跡も残さずに侵入されるとは思っていなかったのだろうが、大和の家はボロ屋とまでは言わなくてもそれなりに築年数が経っている。モニターホンはあれどオートロックがなければシリンダーも凝ったものではない。だからこそ妹がやってきたら万が一を恐れてすぐに帰宅していた。
そして大和はまた、妹を優先するのだろう――
「わかった。そっちの家も何か仕掛けられてないか調査して鍵も交換するから、それまでは実家に帰れ。荷物は今から一緒に取りに行くから。」
「え。」
「俺は、…………次の家を見付けるまで、南の部屋を間借りさせてもらう。」
「え、」
「ん?」
二人の視線を受けていながら、大和は平然と鞄のチャックを閉める。
「今日帰り何時?」
「あとニ本、打ち合わせだけ。」
「じゃあ、あとで連絡するから。」
「わ、わかった。」
不服そうな妹を連れて大和が歩いていく。その後ろ姿を眺めつつ柄にもなく南は目を丸くしていた。予想が外れたからか。希望通りになったからか。
「はっ………………、勝った。」
呟いて、こうしてはおれぬと南も楽屋へ引き返す。
その後二人が南の部屋で再び会ったのは数時間後の深夜だった。
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