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5.二年後。無理矢理耳攻め焦らし編 -2
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その後、二人が会う頻度は変わらなかった。相変わらず数週間、数ヶ月毎の週末に南の部屋で会い、時折食事へ出掛ける。
大和は未だにサラリーマンをしている。
妹は周囲の手を殆ど借りずに十分食べていける程の仕事を受けるようになった。復帰後最初の大きな仕事が南の番組だったので、世間ではバラエティタレントとしてのイメージが強い。しかし水面下では合間を縫って演技指導を受けて、主要役のオーディションも受けだして着実に女優としても返り咲こうとする準備を整えている。
『おにいちゃん? どこにいるの?』
妹から電話が掛かってきたのは金曜の夜、南の部屋にいた時だった。
「いえ……、いや、お前こそどこにいる?」
『おにいちゃんちだよ! 帰ってくる?』
「はあ……。今から帰るよ。」
妹は大学卒業と同時に契約期間を更新するマネジメント契約を事務所と結んでいる。そしてそのタイミングで独立を考えている。事務所は復帰時、所属先という名義を貸したくらいで何もしなかったからか、すんなり了承された。ただ子役時代の恩恵があって今の活躍があると本人も考えているようで、現在は独立後の提携等、様々な摺り合わせを行っている。
そんな妹も、兄に対してだけは相変わらずだった。
「でけー声。」
「帰るわ。」
「えー。過保護すぎじゃね。」
「ウチはお前ら芸能人が住むようなセキュリティとかないんだよ。万が一があればやばいだろ。」
そしてそのままスーツを着て鞄を持って出て行く後ろ姿を見送り
「それを過保護っつうんだよ。」
と南は呟いた。
既に大和と妹は週刊誌に撮られたことがあった。その記事が出ると同時に大和の後ろ姿を晒して兄妹でのツーショット写真を妹のSNSに載せ、釈明している。そして南が「あのウワサのお兄ちゃん、俺んちにもよく来るんだけど、俺とも熱愛になる?」とコメントして話題になったのは記憶に新しい。
結局妹は大和のマンション付近で手頃かつ防犯に気を配っている物件に引っ越した。大和が現場へ迎えに行った際は送っていくし、何もなくても妹は相変わらず大和の部屋を訪ねる。大和の顔を知らなければ、カップルと勘違いされて撮られても無理がないとは周囲の者全員が思っていた。
「――――なんだこれ。」
少し前から部屋に見慣れないぬいぐるみがあるのは知っていた。大方妹が置いていったのか。それでなくてもこの一人暮らし用のワンルームには徐々に妹のものが増えていっていた。日用品と少しの衣服で留まっているが、こんな部屋に異性など連れ込めない。もう結婚などはできないのだろうと大和は感じていた。元々、他人と付き合うこと自体に興味を失くしているためそれ以前の問題だったが。
そしてふとぬいぐるみを取った。手のひらサイズのぬいぐるみだ。その目に違和感を感じて覗き込む。
「――なあ、俺の部屋にぬいぐるみ置いてったか? 熊の。……俺のじゃない。わかった、ああ。合間に悪かった。頑張れよ。」
妹に電話を掛けるとすぐに繋がった。通話を切ってからすぐにハサミでその胴体を切り開く。
「………………マジかよ…………。」
出てきた中身を見て大和は項垂れた。目に模されていたのはカメラのレンズだった。暫く蹲った後、それを黒いポリ袋に入れて貴重品などを確認し、妹には「家には絶対に来るな」とメッセージを入れた。
大和は未だにサラリーマンをしている。
妹は周囲の手を殆ど借りずに十分食べていける程の仕事を受けるようになった。復帰後最初の大きな仕事が南の番組だったので、世間ではバラエティタレントとしてのイメージが強い。しかし水面下では合間を縫って演技指導を受けて、主要役のオーディションも受けだして着実に女優としても返り咲こうとする準備を整えている。
『おにいちゃん? どこにいるの?』
妹から電話が掛かってきたのは金曜の夜、南の部屋にいた時だった。
「いえ……、いや、お前こそどこにいる?」
『おにいちゃんちだよ! 帰ってくる?』
「はあ……。今から帰るよ。」
妹は大学卒業と同時に契約期間を更新するマネジメント契約を事務所と結んでいる。そしてそのタイミングで独立を考えている。事務所は復帰時、所属先という名義を貸したくらいで何もしなかったからか、すんなり了承された。ただ子役時代の恩恵があって今の活躍があると本人も考えているようで、現在は独立後の提携等、様々な摺り合わせを行っている。
そんな妹も、兄に対してだけは相変わらずだった。
「でけー声。」
「帰るわ。」
「えー。過保護すぎじゃね。」
「ウチはお前ら芸能人が住むようなセキュリティとかないんだよ。万が一があればやばいだろ。」
そしてそのままスーツを着て鞄を持って出て行く後ろ姿を見送り
「それを過保護っつうんだよ。」
と南は呟いた。
既に大和と妹は週刊誌に撮られたことがあった。その記事が出ると同時に大和の後ろ姿を晒して兄妹でのツーショット写真を妹のSNSに載せ、釈明している。そして南が「あのウワサのお兄ちゃん、俺んちにもよく来るんだけど、俺とも熱愛になる?」とコメントして話題になったのは記憶に新しい。
結局妹は大和のマンション付近で手頃かつ防犯に気を配っている物件に引っ越した。大和が現場へ迎えに行った際は送っていくし、何もなくても妹は相変わらず大和の部屋を訪ねる。大和の顔を知らなければ、カップルと勘違いされて撮られても無理がないとは周囲の者全員が思っていた。
「――――なんだこれ。」
少し前から部屋に見慣れないぬいぐるみがあるのは知っていた。大方妹が置いていったのか。それでなくてもこの一人暮らし用のワンルームには徐々に妹のものが増えていっていた。日用品と少しの衣服で留まっているが、こんな部屋に異性など連れ込めない。もう結婚などはできないのだろうと大和は感じていた。元々、他人と付き合うこと自体に興味を失くしているためそれ以前の問題だったが。
そしてふとぬいぐるみを取った。手のひらサイズのぬいぐるみだ。その目に違和感を感じて覗き込む。
「――なあ、俺の部屋にぬいぐるみ置いてったか? 熊の。……俺のじゃない。わかった、ああ。合間に悪かった。頑張れよ。」
妹に電話を掛けるとすぐに繋がった。通話を切ってからすぐにハサミでその胴体を切り開く。
「………………マジかよ…………。」
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