聖典の勇者 〜安宿に泊まったらバァさんついて来たってよ〜

ウメキチ

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シャーレの力だってよ

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   とりあえずなんとか一人目の仲間に出会えた。
この先どうやって仲間を増やしていこうか…
   まーなんとかなるか。
   マナブは先の事を考えるより今を楽しもうタイプである。
   それよりなんか聖典が光っているようだが…
 
 
 
『ドーーーン! ズバァーン!』
 
またかよ…
 
   突然宴会場の両開きの扉が勢いよく開き両方の扉が壁に激突し大きな音でマナブ達にこの先の展開を予想させた。
「族長!! 大変でございます! リザードマンの大群が森の奥よりこちらに向かって進行している模様です! 」
 
「なにっ!! 」
 
   ほらー来たよこの展開…
   大群ってさっきよりヤバいじゃねーか。
先程は少数だったから良かったけど大群って無理だろ…
あっさり勝ったから嫌な予感はしていたけどな…
 
「安心して下さい、父上!
此方には勇者様がおられます! それに私も勇者様のパーティーにはいった戦士! この村は必ず私達が守ります! 」
   おいおい……シャーレがやる気満々だよ、多分正義感が先行して後先考えないタイプ、もしくは大きな力を得て気が大きくなるタイプだな…こういうタイプは注意が必要だな、ゲームとかアニメだと間違えなく問題を起こすタイプだ…
 
『おおー!!! 勇者様! 勇者様! 勇者様 勇者様!! おおーー!!』
 
   再び巻き起こる亜人族の勇者コールにマナブは苦笑いで弱弱しく手を上げていた。
またこの展開かよ…
 
    亜人族の偵察隊によるとリザードマンの大群は約100体で進行、後1時間ほどでこちらに来るとの事だ。
    しかし流石亜人族、俺には聞こえない程遠くにいるリザードマンの足音だけで大体の距離もわかってしまうとは。
    おっと感心している場合ではないな、どのように撃退するか考えなくては…
 
    前より大規模な水が必要だな… 考えろ俺、大規模な水… ビルなどの消火活動では、消防車・ヘリコプターからの放水などか…
ヘリは無しだな、大体運転出来ねーしな。
    消防車が現実的か… いや待てよ、ホース1本で100体を撃破なんて出来るのか?
    そうか 火を消せばいいんだよな、何も水だけが火を消す方法ではない。
    しかし… 今の俺に出来るのか?  マナブはマルスの言葉を思い出していた… 
 
『ただし力が大き過ぎるものは反動も大きい為今のお前には何が起こるかわからんから気をつけることじゃな…』
 
 こっわ… でも死にはしないよな… こっわ…
やってやらーーーーー!!
「よし! みんな! 作戦を聞いてくれ」
   マナブは決心し亜人族にリザードマンの迎撃作戦を伝える。
「勇者様その丸っこい透明の物はなんですか!? 」
「これはな、こうやって使うんだよ、おりゃー! 」
   
   マナブは勢いよく球体の物を投げた。
    丸い物体は地面にぶつかると『パーン』と音をたてて中から水が飛び散った。
「おおーーー!! 」
   亜人族は驚きと感動を混ぜ合わせたような輝かせた瞳で驚きの声を上げた。
「これは俺のいた世界では水風船と言ってな、中に水を貯めこむ… 魔法だ」
   おもちゃだ! と言う所を直前でかっこつけて魔法と言ってしまった。
   ちらっとマルスを見てみた……完全に白い眼をしてやがる。
 
 
 
 
「さーみんな配置についてくれ! 俺の指示で一斉にその水風船を投げるんだ」
   マナブは大量の水風船を聖典の力により作成し、全員にその風船を渡した。
   だが流石に水風船ではリザードマンは撃破できない。
後は俺次第だな。
 
「勇者様リザードマンがすぐそこまで来ております! 」
   やばい、心臓の鼓動が急激に早くなる。 ハァハァ…
   俺が失敗すればみんなが食われてしまう。 ハァハァ…
   俺にみんなの命がかかってるなんて。 ハァハァ…
   急激な鼓動と冷や汗により少しくらくらとしてきた。 ハァハァ…
 
「勇者様きました!! 」
 
「おらぁぁぁ!! やってやらぁーーーーー!! 」
マナブは自分を奮い立たすように大声をあげて聖典に願った。
「いでよ!! おりゃーーーー!! 」
 
『ヴワォオオォオオオ―――――!!!!』
   爆音とともにとてつもなく大きな台風がリザードマンの大群の数メートル先より発生した。
   リザードマンは突然の台風の出現に驚き風に巻き込まれぬように足を踏ん張っている。
 
「よしみんな台風に水風船を投げこむんだ! 」
   一斉に投げられた水風船はまるでクリスマスツリーの電飾かの様に美しく太陽の光に反射され輝きながら台風の廻りを不規則に回転していた。
「最後だ! マルちゃん風魔法を台風にぶち込んでくれ!! 」
「老人を酷使しよってからにこのミジンコ… 仕方ないの」
「バァ―ストウインド!! 」
   マルスが放った上位風魔法により停滞していた台風が押し出されリザードマンの大群に突っ込んで行く。
 
「うおぉ―――やめてくれー」
「撤退だー さがれーーー!!」
   リザードマンは悲痛な叫びとともに撤退しようとするが時すでに遅く、マナブの召喚した台風に激突され、大きな風だけでも消えそうなその尻尾の灯は亜人族により投げ込まれた水風船の横殴りのような攻撃に遭い完全に消え去っていく。
 
「よっしゃーーー!! 俺たちの勝利だっ!!」


『ドォーーーン!!!  』

 吹き飛んだはずのリザードマンのいた位置から衝撃音と共に砂煙が巻き起こっている。
「うおぉおぉぉぉーーーー!! 貴様らぁぁ!! 許さん、許さんぞ!
我が同朋をよくもぉおお! 」
   くそリーダーぽいやつが生き残っている…。
 
「くそっ もう一度だ!! みんな… 」
   突然マナブは頭から地面に倒れこんだ。
「キャァァァーーー勇者様ぁ――――!!!」
 
 
ドクンッ…  ドクンッ… あれ、心臓が… えっ
やばいこれが反動か…
力が出ない… まだ敵が残っているのに…
ゴメンみんな…。
   薄れゆく視界の先に聖典のページが開いて光っているのがみえた。
『信頼の強化』シャーレ:固有スキル疾風迅雷 と書かれている
 
「しんらいの…きょうか… しっぷうじんらい…? 」
 マナブは薄れゆく意識の中、聖典の追加項目を読み上げ意識を失った。

   マナブが意識を失う寸前シャーレの体が金色に光り輝き出していた。

「うわぁぁぁーーーーー!!!! 」
光と共にシャーレの身体が鼓動をあげ徐々にその姿が変化を遂げてゆく、光が完全に最高潮に達し徐々にひかりが収まっていく。
   完全にその姿が確認出来る状態に達したがそこにいたのはシャーレとは異なっていた、巨大なトラのようなモンスターが出現していた。
   全長10mは超しそうなその勇ましい立ち姿、恐ろしいほど鋭く地面に食い込んだ爪、その場にいた者は声も出せず驚きに呆然と立ち尽くしていた。

「シャーレなのか…?」
   族長が変貌した娘の姿に戸惑いながらも弱弱しくこえをかけた。
 
「はい! お父様」
族長はその普段通りの娘の声に安心して胸をなでおろした。
「おぉ……驚いたぞ、処でこれはどうなっているんだ? 」
 
「私にも分かりませんが、ただ…なにか勇者様の温かい気持ちが全身に伝わって力がみなぎっているのがわかります……  それより下がってくだいお父様! 」

   突然シャーレが呼気を強めある一点を睨みつけていた、族長はシャーレの視線を追ってその異様な者に恐怖し震えてしまっているようだ、それは先程までいた姿とは明らかに異なる怒りに狂ったリザードマンの長であろう者が全身に黒いオーラをまとってこちらに歩みを向けていた。

   その者の腕には文字にも印にも見える物が赤く光っていた。
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