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○3章 家族のかたち
-2 『親』
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それからフロントにつくまでの間、クウは俺に対して睨むような目つきばかりを向けていた。
男同士なのだから気にしなくてもいいじゃないかとは思うが、どうもクウはそう思わないらしい。不用意なタッチをしてしまったのは俺が一方的に悪いのだが。
フロントを訪れた俺たち四人は、しかし不用意に飛び出していくわけにも行かずに物陰から顔だけを出して覗き込んだ。
受付のカウンターに女将さんが立っている。
その対面に、書類にペンを走らせている女性と、傍らに立つ性の姿があった。
どちらも白髪と目ジワの多い初老の風貌で、おそらく熟年夫婦なのだろう。
女性の方は柄の入った落ち着いた色調の、男性の方は茶色の無地袖の羽織を重ねた重々しい着物姿だった。二人ともまるで時代を間違えたかのように古風な格好だが、それが自然に思えるほどに堂々とした佇まいをしている。
「まだ終わらんのか」
後ろで待っていた男性の方が声に苛立ちを混ぜて言う。
鋭い目つきを向ける男性に、ペンの手を止めて振り向いた女性が優しく微笑んで言葉を返す。
「まあまあ。もう少しまってください。すぐ終わりますから」
「申し訳ありませんお客様」
「いえいえ。お気になさらずに。予約も無しに来たのだもの」
女将さんが頭を下げるが、女性は朗らかな表情のまま柔らかく首を横に振った。
どうやら来客時の契約用紙にサインと個人情報などを記入しているだけらしい。それほど書くことも多くないはずだが、男性の方は随分とせっかちなようだ。
「はようせい。まったく」
「はいはい。わかってますよ」
苛立つ男性に対して、女性はまるで赤子をいなすように余裕綽々と言葉を返していた。
亭主関白な夫に貞淑な妻といったところか。
着物の格好も相まって昔ながらの夫婦像を思わせる。
「初めて見るお客さんだー」
遠くから様子を見ていたサチが目を輝かせて言った。
ナユキも、気になるのかサチの後ろから目だけを出すように覗いている。
これから接客するかもしれないのだからやはり気になるのだろうか。しかしクウだけは一人、顔面蒼白した様子でたじろいでいた。
「どうしたんだ、クウ」
俺が尋ねてみても、クウは表情を動かすことすらなく固まっている。頭を抱え、どこか中空を見やるように虚ろだ。
どうにも様子がおかしいは一目瞭然だった。
気を戻させようと肩を揺さぶってみる。
それでも視線を泳がせて呆けたままだ。
やがてクウは魂を一緒に吐き出すかのように腑抜けた声で呟いた。
「あれは……ボクの親なんだ」
「ええっ?!」
突然の告白に俺も、サチやナユキまでもが目を丸くして驚きの声を上げてしまっていた。
男同士なのだから気にしなくてもいいじゃないかとは思うが、どうもクウはそう思わないらしい。不用意なタッチをしてしまったのは俺が一方的に悪いのだが。
フロントを訪れた俺たち四人は、しかし不用意に飛び出していくわけにも行かずに物陰から顔だけを出して覗き込んだ。
受付のカウンターに女将さんが立っている。
その対面に、書類にペンを走らせている女性と、傍らに立つ性の姿があった。
どちらも白髪と目ジワの多い初老の風貌で、おそらく熟年夫婦なのだろう。
女性の方は柄の入った落ち着いた色調の、男性の方は茶色の無地袖の羽織を重ねた重々しい着物姿だった。二人ともまるで時代を間違えたかのように古風な格好だが、それが自然に思えるほどに堂々とした佇まいをしている。
「まだ終わらんのか」
後ろで待っていた男性の方が声に苛立ちを混ぜて言う。
鋭い目つきを向ける男性に、ペンの手を止めて振り向いた女性が優しく微笑んで言葉を返す。
「まあまあ。もう少しまってください。すぐ終わりますから」
「申し訳ありませんお客様」
「いえいえ。お気になさらずに。予約も無しに来たのだもの」
女将さんが頭を下げるが、女性は朗らかな表情のまま柔らかく首を横に振った。
どうやら来客時の契約用紙にサインと個人情報などを記入しているだけらしい。それほど書くことも多くないはずだが、男性の方は随分とせっかちなようだ。
「はようせい。まったく」
「はいはい。わかってますよ」
苛立つ男性に対して、女性はまるで赤子をいなすように余裕綽々と言葉を返していた。
亭主関白な夫に貞淑な妻といったところか。
着物の格好も相まって昔ながらの夫婦像を思わせる。
「初めて見るお客さんだー」
遠くから様子を見ていたサチが目を輝かせて言った。
ナユキも、気になるのかサチの後ろから目だけを出すように覗いている。
これから接客するかもしれないのだからやはり気になるのだろうか。しかしクウだけは一人、顔面蒼白した様子でたじろいでいた。
「どうしたんだ、クウ」
俺が尋ねてみても、クウは表情を動かすことすらなく固まっている。頭を抱え、どこか中空を見やるように虚ろだ。
どうにも様子がおかしいは一目瞭然だった。
気を戻させようと肩を揺さぶってみる。
それでも視線を泳がせて呆けたままだ。
やがてクウは魂を一緒に吐き出すかのように腑抜けた声で呟いた。
「あれは……ボクの親なんだ」
「ええっ?!」
突然の告白に俺も、サチやナユキまでもが目を丸くして驚きの声を上げてしまっていた。
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