ステータス999でカンスト最強転移したけどHP10と最低ダメージ保障1の世界でスローライフが送れません!

矢立まほろ

文字の大きさ
10 / 49
○2章 クエストへ行こう

2-1 『旅人のきまぐれ亭』

しおりを挟む
 石畳の大通りが、町を分断するように大きく東西へ伸びていた。

 整然と立ち並ぶ煉瓦造りの建物。所々の煙突からは白い煙が立ち上がり、青白い空へと続いている。

 その空にはもちろん飛行機なんて飛んでいないし、大通りを行き交うのも自動車ではなく馬車だ。

 少し古い西洋風な町並み。
 まさしくファンタジー世界といった風景が、俺の目の前に広がっていた。

 ゲームをやってた子供の頃に一度は憧れた『剣と魔法の世界』に足を踏み入れたのだと、その光景が俺の童心をくすぐって昂ぶらせる。

 しがないサラリーマンだった俺が、若くして事故にあい、どういう理由か気が付けばこんな世界に飛ばされていた。
 しかも最強のステータスまで与えられて。

 これは神の天命か。
 頑張った社畜へのプレゼントか。

 最強ステータスで、最高のセカンドライフ。
 目指せ、異世界で夢のような極上のスローライフ!

 俺は絶対に、この第二の人生を楽しく、楽に謳歌してやる!

 ――と思ってはいるのだが。

 俺の目の前には、様々な問題が立ちはだかっていた。

 その一つが――。

「うおっ、あぶねえ! 町の中でいきなり殴りかかってくるんじゃねえ!」
「虫がいたのよ」
「じゃあその手に持ってる角材はなんだ。釘がついてるぞ」
「これは……櫛よ。髪を梳かすのに女の子の必需品でしょ」

 せっかくのスローライフを送るつもりが、ヴェーナという自称魔王見習いの少女に命を狙われることに。

 おかげで気の休まる時がない。
 のんびり、何もせずに生きたいだけという俺の願いはどうにも叶いそうにない。

 しかし、もっと大きな問題が俺にはあった。

「エイタさん、見えてきましたよ。あそこです」

 俺とヴェーナの前を歩いていた、大きなバックパックを背負った幼い少女――ミュンが、大通りの先に見えた大きな建物を指差す。

「アレか」
「はい、アレです」

 目の前にたどり着き、その建物を見上げる。
 とんがり帽子のような屋根が特徴的な、二階建ての石造り。

 入り口には赤色の豪奢な両開きの門が備え付けられていて、それを囲む両方の柱には竜の首を象ったようなオブジェがある。太陽に背を向けて影を落としたそれは、松明の火にゆらゆらとあてられ、妙な威圧感を醸し出している。

 まるでゲームのラスボスが住まう居城のような迫力。

 その荘厳さに思わず息を呑む。
 今からここに入るのか、と緊張で汗が流れた。

 だが、問題を抱えてしまった俺には引き返すという選択肢すらない。

 覚悟を決めて、行くしかない。

 ミュンに先導されて、その建物へと足を踏み入れる。

「どうぞ、エイタさん。ここが、冒険者のためのクエスト斡旋ギルド――『旅人のきまぐれ亭』です!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処理中です...