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○3章 温泉へ行こう
-8 『いざお風呂』
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「それにしてもいっぱい持ってきたな」
まずは旅館の内風呂へと行くことになり、タオルなどの用意をする俺たち。
町を出たときから、いや、そのずっと前から思ってたが、ミュンの背負っているバックパックは常にまんぱんに膨れている状態だ。それは今回も変わらずで、その中からミュンはタオルやら洗面具といった風呂用具を取り出していた。
一つ取り出してもまだ袋はパンパンで、無限に物が出てきそうな勢いだ。
「いくら旅行だからってそんなに荷物いるのか?」
「いざという時のために、常に携帯していないと不安なんです。大事な、おじいちゃんの残した忠言がいっぱいですから。それと、いろいろと役に立つ道具も持ってきましたよ」
「へえ、例えば?」
ミュンが鞄の中を漁り、一つずつ出していく。
「これがなくちゃ安心できない、みなさんの歯ブラシやマイスプーン」
「ほう」
「怪我した時のみんなの安らぎ、救急セット」
「なるほど」
「暇な時間をぶっ潰せ、最近巷で流行っている遊戯盤」
「気になる」
「恋しい気持ちにちょこっと一口、昨日作った焼き菓子の残り」
「あれは美味かった」
いちいち商品の売り文句みたいに口上をつける意味はあるのか甚だ疑問だが、まあいい。
「それと……ポチちゃん」
「わんっ」
「おい待て」
バックパックからさらっと小動物を取り出してきたミュンに、俺は目を疑った。
いや、何故ケルベロスのポチが鞄の中から出てくるのか。
長い留守になるからとデリカさんに預けたはずだ。それなのに何故ここに。
「だって、あのお家に独りぼっちだと寂しいじゃないですか」
満面の笑顔で言ういたいけな少女に、俺は微塵も怒鳴る気にもなれなかった。
可愛さを盾にするとは、ずるい。
でも可愛いから許すとするぞ、この野郎。
「けど、ペット持込オッケーかもわからないんだから、バレないようにしろよ」
「わかりました。よかったね、ポチちゃん。一緒に温泉に入ろうね?」
「なにそれ羨ましい」
思わず率直な言葉が漏れてしまった。
どっちの意味でも羨ましい。
だがポチを連れて行ってバレないだろうか。
仲居さんは「今日のお客様は他にいません」と聞いていたので可能性は低そうだが、やはり心配になる。
「気をつけますから! 湯船にはつけませんから!」
つぶらな瞳で上目遣いに懇願してくるミュンに「駄目だ」と言える畜生に、俺はなりたい。けれどやはりというか、無理だった。良心の呵責が邪魔をして、つい頷いてしまった。
くそう、ポチめ。
俺だって、いや、男子なら一度は女湯に入ってみたいと思ったことだろう。それをいとも容易く達成しやがって。
「それじゃあ行きましょうか、ポチちゃん」
「わん」
ミュンに抱かれながら口呼吸するポチの口許が、にたり、と挑発するように釣り上がって見えたのは、俺が羨みすぎているせいだろうか。
ふと、後ろからマルコムが肩をたたいてくる。
「案ずるでない、同志よ」
「は?」
訳もわからずそう言われ、俺はただただ首をかしげていた。
◇
旅館の内風呂とはいえ、いざ入ってみるとなかなか良さそうな風呂だった。
泳げそうなほどに広く大きな室内風呂もそうだが、なんと言っても目を引いたのは露天風呂だ。峡谷に茂る山々の緑と、下を流れる川のせせらぎを感じられる、非常に風情に満ちた造りとなっていた。
泉質はやや薄い茶褐色に濁った湯で、おそらく含鉄泉と呼ばれるものだろう。字のごとく成分として鉄が含まれており、空気に触れて参加することでこの色になるという。飲むと貧血などに効果があると言われているが、俺は飲んだことはない。
「いま、この敷居の向こうに美少女たちが。はあ、飲みたい」
深刻そうなマルコムの溜め息が聞こえ、俺は呆れた顔を浮かべながら、渓谷を一望できる露天風呂へと体を浸した。
熱すぎず、ほどよく、じんわりと足先から体が温まってくる。
この風呂に入った瞬間の、血管を血が通っている感覚がたまらない。
「やっぱ温泉は最高だな!」
「ああ、すぐそこに一糸纏わぬ少女達がいると思うとゾクゾクする」
「そういう意味じゃねえよ」
竹の敷居を挟んだ向こう側が女湯だ。
ちょうヴェーナたちも入ってきたらしく、湯を切る音や談笑が漏れ聞こえ始めていた。
「あ、こらっ、ポチちゃん。こっそりなんですから、騒いだら駄目ですよ」
ミュンの声が聞こえる。
どうやらポチも一緒らしい。一匹だけいい思いしやがって。
――羨ましい!
「これで覗き穴をあけられないものか」
マルコムがどこかから釘を取り出してくる。まさか穴を開けて覗くつもりか。
「おいこら、やめろ」
「あ、なにをする」
確かに見たい気はするが、と俺も後ろ髪を引かれながら、マルコムから釘を奪い取った。
途端、バリン、と何かが砕けた音が遠くから聞こえる。かと思った瞬間、遥か上空から湯船にクレスレブが突き刺さった。
「釘もアウトか」
どうやら尖っていれば工具すら彼女の嫉妬の対象に入ってしまうらしい。
さっきの音、ガラスが割れた音じゃありませんように。もう弁償はこりごりだ。
湯船に突き刺さったクレスレブは、白銀の刀身を湯に浸し、なぜかほんのり上気したように赤くなっているように見えた。
『私が一緒にいるじゃない。私との混浴で我慢しなさい』と、俺の脳内の擬人化したクレスレブが顔を赤らめてヤンデレ気味に言ってくる。
ああ、なんだこのイメージ。
いよいよ俺の中で呪いの魔剣が美少女化していく……。
意識せずとも勝手に頭の中に浮かんでくるのだから性質が悪い。これも一つの呪いなのだろうか、それとも俺が、自己防衛的に無意識に認識してしまっているだけなのか。
「キミは金属にしか愛欲を向けられない金属フェチなのか?」
「俺はそんな斜め上の性癖持ちじゃねえ!」
それなら納得だ、と言わんばかりにマルコムに頷かれ、俺は咄嗟に言い返した。
その間も、女湯の方からはワイワイと談笑が続いている。
「あたしもスク姉みたいな体になりたいわ」
「わ、わたしもです」
「あまり良いことないわよぉ。肩も凝って大変なだけだしぃ」
「そういうのを言ってみたいの!」
「わ、わたしもです!」
「あらあらぁ。まあ、二人ともまだまだこれからよぉ」
三人きりのときは本当の姉妹のように仲がいい。
ミュンはまだ確かにこれから成鳥の余地があるだろう。
だがヴェーナ、お前は無理だ。
今朝の絶壁具合を見た感じ、おそらく未来はないだろう。
ご愁傷様です。
きゃっきゃうふふと、楽しそうな声は続く。
マルコムではないが、確かにこの音を聞いていると変な妄想が膨らんできそうになる。俺だって健全な男なのだ。仕方がない。
その煩悩を振り払うように、俺は渓谷の広々とした展望へと視線を移した。
「絶景ってのはいいもんだよな。なあマルコム――って何やってんだよ、おい!」
一瞬目を離した隙に、マルコムが女湯との垣根の竹壁をよじ登ろうとしていた。
「ばっか。やめろ」
「ええい、止めるでない。この向こうには楽園が広がっているのだぞ!」
「俺たちが行けば地獄だぞ」
「なぜそう言い切れる。彼女たちは私が来るのを待っているのかもしれんのだぞ」
「んなわけあるか」
むしろなぜそんな自信を持てるんだ。
柵に手をかけるマルコムを引き剥がそうとするが、存分しぶとく粘ってくる。
「ええい、離せ友よ。私は勇者だ。勇者とは勇む心を途切れさせぬ者のこと。ならば私は持とう! 勇気を! 女湯を覗く勇気を! 物怖じして進めぬというのなら、我が王道を刮目しているが良い!」
最低だ、こいつ。
本当にこんな奴が勇者でいいのだろうか、この世界は。
「あっそう。じゃあ勝手にしろ」
呆れ半ばに俺は手を離し、湯に戻る。
枷をなくして解き放たれたマルコムは、壁を這うように駆け上がり、ついに天辺までたどり着いた。期待を膨らませた満面の笑みを浮かべながら、柵の向こうに広がる桃源郷を見ようと顔を突き出す。
瞬間、
「――ふぼっ」
帯電した火球がマルコムの顔を貫いた。おそらくヴェーナとスクーデリアの攻撃魔法だろう。あれだけ騒いでいたのだから気付かれていてもおかしくない。
『ダメージ108 スキル発動。残りHP1』
また女神の加護で命拾いしている。
女神様もいい加減見捨てろよ、こんな勇者。
「……み、見える……天国が、見える……ぞ……」
「それ、たぶんマジモンの天国だから。そのまま行って、どうぞ」
黒焦げになって落ちてきたマルコムに、俺はゴミを見るような冷たい視線を向けておいた。
まずは旅館の内風呂へと行くことになり、タオルなどの用意をする俺たち。
町を出たときから、いや、そのずっと前から思ってたが、ミュンの背負っているバックパックは常にまんぱんに膨れている状態だ。それは今回も変わらずで、その中からミュンはタオルやら洗面具といった風呂用具を取り出していた。
一つ取り出してもまだ袋はパンパンで、無限に物が出てきそうな勢いだ。
「いくら旅行だからってそんなに荷物いるのか?」
「いざという時のために、常に携帯していないと不安なんです。大事な、おじいちゃんの残した忠言がいっぱいですから。それと、いろいろと役に立つ道具も持ってきましたよ」
「へえ、例えば?」
ミュンが鞄の中を漁り、一つずつ出していく。
「これがなくちゃ安心できない、みなさんの歯ブラシやマイスプーン」
「ほう」
「怪我した時のみんなの安らぎ、救急セット」
「なるほど」
「暇な時間をぶっ潰せ、最近巷で流行っている遊戯盤」
「気になる」
「恋しい気持ちにちょこっと一口、昨日作った焼き菓子の残り」
「あれは美味かった」
いちいち商品の売り文句みたいに口上をつける意味はあるのか甚だ疑問だが、まあいい。
「それと……ポチちゃん」
「わんっ」
「おい待て」
バックパックからさらっと小動物を取り出してきたミュンに、俺は目を疑った。
いや、何故ケルベロスのポチが鞄の中から出てくるのか。
長い留守になるからとデリカさんに預けたはずだ。それなのに何故ここに。
「だって、あのお家に独りぼっちだと寂しいじゃないですか」
満面の笑顔で言ういたいけな少女に、俺は微塵も怒鳴る気にもなれなかった。
可愛さを盾にするとは、ずるい。
でも可愛いから許すとするぞ、この野郎。
「けど、ペット持込オッケーかもわからないんだから、バレないようにしろよ」
「わかりました。よかったね、ポチちゃん。一緒に温泉に入ろうね?」
「なにそれ羨ましい」
思わず率直な言葉が漏れてしまった。
どっちの意味でも羨ましい。
だがポチを連れて行ってバレないだろうか。
仲居さんは「今日のお客様は他にいません」と聞いていたので可能性は低そうだが、やはり心配になる。
「気をつけますから! 湯船にはつけませんから!」
つぶらな瞳で上目遣いに懇願してくるミュンに「駄目だ」と言える畜生に、俺はなりたい。けれどやはりというか、無理だった。良心の呵責が邪魔をして、つい頷いてしまった。
くそう、ポチめ。
俺だって、いや、男子なら一度は女湯に入ってみたいと思ったことだろう。それをいとも容易く達成しやがって。
「それじゃあ行きましょうか、ポチちゃん」
「わん」
ミュンに抱かれながら口呼吸するポチの口許が、にたり、と挑発するように釣り上がって見えたのは、俺が羨みすぎているせいだろうか。
ふと、後ろからマルコムが肩をたたいてくる。
「案ずるでない、同志よ」
「は?」
訳もわからずそう言われ、俺はただただ首をかしげていた。
◇
旅館の内風呂とはいえ、いざ入ってみるとなかなか良さそうな風呂だった。
泳げそうなほどに広く大きな室内風呂もそうだが、なんと言っても目を引いたのは露天風呂だ。峡谷に茂る山々の緑と、下を流れる川のせせらぎを感じられる、非常に風情に満ちた造りとなっていた。
泉質はやや薄い茶褐色に濁った湯で、おそらく含鉄泉と呼ばれるものだろう。字のごとく成分として鉄が含まれており、空気に触れて参加することでこの色になるという。飲むと貧血などに効果があると言われているが、俺は飲んだことはない。
「いま、この敷居の向こうに美少女たちが。はあ、飲みたい」
深刻そうなマルコムの溜め息が聞こえ、俺は呆れた顔を浮かべながら、渓谷を一望できる露天風呂へと体を浸した。
熱すぎず、ほどよく、じんわりと足先から体が温まってくる。
この風呂に入った瞬間の、血管を血が通っている感覚がたまらない。
「やっぱ温泉は最高だな!」
「ああ、すぐそこに一糸纏わぬ少女達がいると思うとゾクゾクする」
「そういう意味じゃねえよ」
竹の敷居を挟んだ向こう側が女湯だ。
ちょうヴェーナたちも入ってきたらしく、湯を切る音や談笑が漏れ聞こえ始めていた。
「あ、こらっ、ポチちゃん。こっそりなんですから、騒いだら駄目ですよ」
ミュンの声が聞こえる。
どうやらポチも一緒らしい。一匹だけいい思いしやがって。
――羨ましい!
「これで覗き穴をあけられないものか」
マルコムがどこかから釘を取り出してくる。まさか穴を開けて覗くつもりか。
「おいこら、やめろ」
「あ、なにをする」
確かに見たい気はするが、と俺も後ろ髪を引かれながら、マルコムから釘を奪い取った。
途端、バリン、と何かが砕けた音が遠くから聞こえる。かと思った瞬間、遥か上空から湯船にクレスレブが突き刺さった。
「釘もアウトか」
どうやら尖っていれば工具すら彼女の嫉妬の対象に入ってしまうらしい。
さっきの音、ガラスが割れた音じゃありませんように。もう弁償はこりごりだ。
湯船に突き刺さったクレスレブは、白銀の刀身を湯に浸し、なぜかほんのり上気したように赤くなっているように見えた。
『私が一緒にいるじゃない。私との混浴で我慢しなさい』と、俺の脳内の擬人化したクレスレブが顔を赤らめてヤンデレ気味に言ってくる。
ああ、なんだこのイメージ。
いよいよ俺の中で呪いの魔剣が美少女化していく……。
意識せずとも勝手に頭の中に浮かんでくるのだから性質が悪い。これも一つの呪いなのだろうか、それとも俺が、自己防衛的に無意識に認識してしまっているだけなのか。
「キミは金属にしか愛欲を向けられない金属フェチなのか?」
「俺はそんな斜め上の性癖持ちじゃねえ!」
それなら納得だ、と言わんばかりにマルコムに頷かれ、俺は咄嗟に言い返した。
その間も、女湯の方からはワイワイと談笑が続いている。
「あたしもスク姉みたいな体になりたいわ」
「わ、わたしもです」
「あまり良いことないわよぉ。肩も凝って大変なだけだしぃ」
「そういうのを言ってみたいの!」
「わ、わたしもです!」
「あらあらぁ。まあ、二人ともまだまだこれからよぉ」
三人きりのときは本当の姉妹のように仲がいい。
ミュンはまだ確かにこれから成鳥の余地があるだろう。
だがヴェーナ、お前は無理だ。
今朝の絶壁具合を見た感じ、おそらく未来はないだろう。
ご愁傷様です。
きゃっきゃうふふと、楽しそうな声は続く。
マルコムではないが、確かにこの音を聞いていると変な妄想が膨らんできそうになる。俺だって健全な男なのだ。仕方がない。
その煩悩を振り払うように、俺は渓谷の広々とした展望へと視線を移した。
「絶景ってのはいいもんだよな。なあマルコム――って何やってんだよ、おい!」
一瞬目を離した隙に、マルコムが女湯との垣根の竹壁をよじ登ろうとしていた。
「ばっか。やめろ」
「ええい、止めるでない。この向こうには楽園が広がっているのだぞ!」
「俺たちが行けば地獄だぞ」
「なぜそう言い切れる。彼女たちは私が来るのを待っているのかもしれんのだぞ」
「んなわけあるか」
むしろなぜそんな自信を持てるんだ。
柵に手をかけるマルコムを引き剥がそうとするが、存分しぶとく粘ってくる。
「ええい、離せ友よ。私は勇者だ。勇者とは勇む心を途切れさせぬ者のこと。ならば私は持とう! 勇気を! 女湯を覗く勇気を! 物怖じして進めぬというのなら、我が王道を刮目しているが良い!」
最低だ、こいつ。
本当にこんな奴が勇者でいいのだろうか、この世界は。
「あっそう。じゃあ勝手にしろ」
呆れ半ばに俺は手を離し、湯に戻る。
枷をなくして解き放たれたマルコムは、壁を這うように駆け上がり、ついに天辺までたどり着いた。期待を膨らませた満面の笑みを浮かべながら、柵の向こうに広がる桃源郷を見ようと顔を突き出す。
瞬間、
「――ふぼっ」
帯電した火球がマルコムの顔を貫いた。おそらくヴェーナとスクーデリアの攻撃魔法だろう。あれだけ騒いでいたのだから気付かれていてもおかしくない。
『ダメージ108 スキル発動。残りHP1』
また女神の加護で命拾いしている。
女神様もいい加減見捨てろよ、こんな勇者。
「……み、見える……天国が、見える……ぞ……」
「それ、たぶんマジモンの天国だから。そのまま行って、どうぞ」
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